平和と緊張と
サイアリアに無事着いたわけだが、異能を確かめる機械が壊れているらしくそれの修理は2日ほどかかると言われてしまった。
ーーーーーーなんてこった。俺は一文無し……仲いい人なんていないし、ラーヤとソックは寮暮らし。ヒティアは一人暮らしだそうだが、泊めてくれなんて言えない。
「何ブツブツ言ってるの?」
視界にヒティアが大きく映る。ヒティアは素直過ぎて、きっと泊めてくれって言えば泊めてくれそうだが……無理だ。明日絶対ラーヤとソックは冷やかしてくる。それにヒティアは中々人気があるようで、村の人や兵に声をかけられては手を振ったり話したり……きっとファンがいて、泊まったなんてバレたらそいつに殺される。
きっと死なないだろうけどーーーーーーーーーーーー。
「じゃあ俺らはそろそろ日も暮れてきたし寮に戻るわ。また、明日な〜。」
ーーーーーーーーーーーー困った。ホントに困った。なんでだ。なんでこうなった。どうしてだ。あぁ、明日どうしよう。
「どーしたのー?泊まるとこないって言うから家に入れたのに。」
そう。俺はラーヤ達と別れた後、しつこく寝床を聞かれ泊まるところがないことをヒティアに言ってしまった。無理矢理連れてこられたーーーーーー。
「どうしたの?あ、家狭かった?ごめんね、部屋はリビングと寝室しか無いの。」
「いや、全然!!俺はリビングで寝るから!!それより、ヒティアは料理もできるんだな……。」
焦りながら話を変えたが、実際ヒティアの作る料理は美味しい。
「あ、そう?ありがと。じゃあリビングにお布団敷いとくから、お風呂入ってきていいよー」
遠慮なくお風呂にさせてもらったが、ここで問題が起こる。ーーーーーー着替えがない。さっき脱いだ服はお風呂の前に置いといたが、さっきガタゴトと前から聞こえていたのはヒティアが洗濯でもしているんだろう。今日は少し肌寒い。乾くわけがない……。ヒティアのを借りるしか……。
「あ、服だけど洗濯してるから今日はここに置いとく服着てね!!」
やっぱりそうなるか。風呂から出た俺は一瞬で風呂に戻る。なんだあれは。俺の目には可愛いクマの刺繍が入った薄ピンクのTシャツとズボンに男物のパンツが…………。男物のパンツがなぜ……。それも見る限りまだ使用されていない物。扉を開ける音が無かったし、買いに行った理由ではなさそうだ。
「ごめんね、アタシ一人暮らしだし……。あ、でもでもパンツは少し前に雨でずぶ濡れになった男の人にお風呂を貸してあげた時に、2枚入りの買っちゃって1枚余ってたんだ。ラッキーだね。」
なるほど。
「じゃ、そろそろ寝よっか?」
女の子とひとつ屋根の下……なんてシチュエーションなんだ。でも相手は元騎手。何かしたら殺されるし、そんな事は絶対ない。それにしても、整頓された部屋だ。そんな事を考えながら目を閉じた。
「早く起きて。早く。」
朝から兵の格好をしたヒティアが焦り気味に言う。外からは人や馬車が走る音が聞こえてくる。
「一体何が……。」
「実はサイアリアは村から街になるように王都へ申請を出していたの。でもそれを否定する村もあってね。その村の人が夜、サイアリアに火の矢を撃ったみたいで。」
ヒティアがそう言いながら窓を開けると、曇り空の下。少し離れた家が黒く焦げて、部屋がむき出しになっていた。
「昔から言い合いが絶えなくてね。今回の事件で1人の妊婦さんが命を落とした。これがきっかけで……戦争が始まるかもしれない。」
「戦……争……。」
一般人は自宅待機。村からは許可を出さないと出られないらしい。それにしてもついてない。これじゃあ異能がなんなのかわからないじゃないか。
「そういえば、その相手の村の名前は?」
その質問に数秒の間を置き、ヒティアは答えた。その答えは聞いてよかったのか聞かなかった方がよかったのか。まさかあの村と戦争をするなんて。
「あの村は街にも劣らない程の戦力を持っているけれど、土地や人口の問題で街になれない村。事件も多くてとても危険な村ーーーーーー」
あの村にはいつも悪い噂が飛び交っている。両親もあの村には近づくなと言っていた。あれだけの強さを持っているヒティアでさえ、余裕が無さそうだ。
「ーーーーーーーーーーーーゲルナバティス。」




