再来
「入るよ。」
あぁ、と返事の声が聞こえ、トトはラーヤの部屋を訪れる。すると中には、兵士の正装をしたラーヤが待っていた。
「後少ししたらお前の事でサイラルの中央付近にある役所に報告しなければならない。」
「異能の事か?そんなに重要なのか?」
確かに異能というのは誰もが持っているものではない。まさか兵団の勧誘なのか?だとしたらいずれ兵団から騎士に昇格して、さらに上層部の方に……。
「へ、兵団の勧誘かな……?」
照れる様子を隠せずにそれを口にする。ラーヤはそれに対し、あぁ、そんなところかもな。と何か誤魔化したような言い草で立ち上がった。
「もう行くの?」
「早いに越したことはない。」
そう言って、雨が止んだばかりのような外へと足を踏み出した。
サイラルは街というだけあって広い。人も多いし、商業も盛んだ。中央に近づくと、どんどん立派な建物やお店が並んでいる。そんな街並みを歩いている2人に、深くフードを被った一人の女が話しかける。
「ちょっとお尋ねしたい事があるんですが。」
「なんだ?」
兵として街の人の話を聞くのにも慣れているのか、急に話しかけられてもラーヤは平然としている。
「今からどちらへ……?」
「あぁ、こいつの事で役所にな。」
「あらまぁ……役所にですか。何かの罪人か何かですか?兵士様。」
「罪人?それなら役所じゃなくて牢にぶち込みに行くよ。ただ、少し話があって役所に行くだけだ。それで尋ねたい事ってなんだ?」
「いいえ、ただなんでこの周りにはあなた方……いえ、その男性を見張るかのようにして兵士が隠れているのかなぁ……と思いまして。話を聞いてわかりました。役所に話をするだけじゃなさそうですね。その事を確認したくて声をかけたんです。ウフフ。」
なんだこの女の人は。何を言っているのかさっぱりわからない。わからないことだらけだが、わかることがあった。この声、どこかで。
ラーヤは目を丸くして女を見つめている。そして急に我に返ったと思えば腰にある剣に手を伸ばす。
女はフードから口だけが見える状態で笑っているのだろうか。ふふふと声を漏らすのが聞こえる。
ラーヤが抜刀する。その剣は女の体を斜めに確実に斬った。女は反射的に手を前に出し、きゃあと悲鳴をあげるような姿勢で、実際悲鳴は聞こえなかったが、避けることも無くそこに剣が通る。
瞬時にラーヤ!と叫ぼうとしたがもう斬られてしまった後だから意味がない。それでもラーヤの方を見る。後悔?ラーヤはまた目を丸く、いや何かに驚いて?違う。何かに恐れて、と言うのが正しいのだろうか。ラーヤは斬った者に恐れている。その剣は確実に女を斬った。はずなのに血が飛び散っていない。そして斬れた時の音もなければ何も無い。そう斬れていなかった。剣を振った風でフードがめくれるくらいの事しか起こらなかった。
そしてそのめくれたフードの中に隠れていた顔が見える。
「あらら、見えて……どうもお久しぶり」
そこには異能の時の、あの不思議な女が立っていた。




