霞む存在
トトの首に向かって放たれる一筋の剣。トトは間一髪それを避けて体制を立て直す。
この状況を最も理解できてないであろうトトは、剣を構え息を整える。しかし鼓動の速さは変わらない。
「ヒティア。騎士であった頃の君の噂は英雄である僕にも届いている。優秀な騎士だ、と……。そんな君がなぜ故郷を捨てるような事を……。」
「あなたには関係ない。守りたいモノを守るためには犠牲も必要。」
「故郷より大切なモノ……か。家族かい?」
「……家族はいない。そしてお話もここまで。英雄の耳にどれほどの噂が入ったのかは知らない。でも、あの頃のアタシより今の方が格段に強い。」
「守りたいものを守る力、か。僕にそれを止める権利はない。でも、僕にも守りたいものを守りたい気持ちがある。そしてそれは、この場所であり、君やトト、街の人達や兵隊だ。」
「全て拾いきれるわけがない。いずれどれか大切なモノをその手から落とす事になる。」
「僕は落とさない。だから僕はここで戦争を止める。」
「リミッター解除。バル・バラール…。今のアタシは8倍じゃない。…………12倍!!!!!」
砂を巻き上げヒティアが英雄に斬りかかる。英雄はすかさずかわすが、ヒティアは次の攻撃の体制に入る。ガルエールは風の力で後ろに飛び、また攻撃をかわす。
その戦闘を見ていたトトには、不意をついて攻撃を仕掛けるバイフィールに気付く。
「ガルエールさん!上!」
その声に素早く反応したガルエールは体に風を纏い、上から降ってくる氷の刃とヒティアの攻撃をかわし続ける。
あまりの衝撃的な事実と、強さに多くの人が他の存在を忘れていた。ソーマは重症、ダギヌスはその側から離れる気はない。しかし、どこだ。クノンがいた場所には誰もいない。
ズッーーーー。そんな音がすぐ側で聞こえる。まるで、自分の体から出た音のように、近い。そして、背中に痛みが走る。トトは情けない声を出しながら、自分の背中を触る。そして、硬い何かが2つ刺さっている事に気付く。背中を触った手は真っ赤に染まる。目から涙が、口からは赤い血が流れる。後ろには、それを放ったであろう人物、クノンの姿があった。
「1人、排除っと。」
トトは倒れる瞬間に、裏切りと埋まらない力の差を感じながら崩れ落ちた。




