むかしむかし。
エルフ族なのに異能を使えない。昔はそんな理由で彼は周りから浮いていた。孤独だった。辛かった。1人は辛い。彼の母は、そのうちすごい異能が使えるようになるから、と何度も言い聞かせてくれた。しかし、それじゃだめだった。開花したのころで、天才型には劣る。そんな異能では使えるようになったとしても状況は変わらないんだ。
ある日、彼の住んでいた大きな森に火が放たれた。何の目的でかは今でもわからない。エルフ達が総動員で火を消したため被害は少なかったが、犯人は捕らえることが出来なかった。犯人はエルフが駆けつける前にさっさと森を出ていった。その時、彼は1人で森を歩いていた。理由もなく、1人で。彼にとってはそれが日常だった。彼は走ってくるフードの何者かの姿を目にした。そいつは彼に気付かずそのままぶつかる。彼は何故か避け無かった。顔はよく見えなかったが、男だった。あまりに腐った日常で、何をすればいいのかがわからなかった。その直後、エルフ達が走って来るのが見えた。
「そいつを捕まえろーーーーー!!!!!」
そんな叫び声が聞こえる。でも彼は動かなかった。動けなかった。尻もちを付いたまま、非力な彼はおどおどしたまま、走り去る男の姿をただただ眺めることしか出来なかった。
彼のその後はあまりにも酷かった。逃げられた責任を全て負わされ、すぐにでも森を出ていけと言われたのだ。母が謝っても父が謝っても追放は決定された。
「強くなれ。そしてまた戻ってこい。お前が戻ってくるまで、絶対にまっている。」
それが父の最後の言葉だった。少しのお金と古い鉄の剣を持たされ、彼は森を追放された。
彼は歩いた。お金が少ないので、最初は木の実や動物を捕まえて腹を満たしていた。寝泊まりも木に登ったりしていたが、だんだん寒い季節になり、彼は宿を探すしかなかった。適当に歩いてたどり着いたのは小さな街オルオッサだった。
3日も泊まればなくなるような持ち金だった彼は、仕事を探した。しかし当時13歳の彼にできる仕事は限られて、その上平穏な森で暮らしていた彼には何もできなかった。彼はふらふらと街を歩く。どこを歩いているかもわからなくなってしまった彼は、疲労の末に倒れてしまった。
意識を取り戻した時にはベッドに横たわっていた。辺りを見渡すと、そこは小さな家のようだ。誰かが看病してくれたようで、濡れたタオルや、水があった。ガチャッと扉が開く音。そこには同い年くらいの少女の姿があった。
これが彼、ガルエールが英雄と呼ばれるきっかけになった出来事。この続きはまた次の機会に語ることになるだろう。




