英雄と
ヒティアとクノンの戦闘をトトは見ているしかなかった。クノンのスピードはトトの目では追いつかない。ヒティアはなんとか追いついているが、剣で攻撃を弾くのがやっとのようだ。
ヒティアは騎士として王都にいた時に全ての人間のデータが異能によって自動的に記入される「個人管理書」に目を通したことがある。その中にはもちろんゲルバナティスの幹部の情報も記載されていたため、ヒティアには彼らの異能は分かっていた。それを見たのは1年前の事だった。個人管理書は1年ごとに更新される。どこにいようと異能は全てを書き込んでしまう。そのため限られた人間しか見ることができない。
クノンの衝撃波の異能は強力だが、持続できるのは10分。そして10分の間を開けてまた使うことが出来る。ヒティアはその10分を耐えようとしていた。ヒティアにはまだ時間に余裕があったため、異能が使えなくなったクノンを一撃で沈めるという算段だった。しかし、それはあまりにも単純過ぎた。クノンは少し前に新しく異能を開花していた。それに気づいた頃にはもう遅かった。砂が戦闘時に少しずつ鎧の隙間に入っていることに気付かなかった。関節部分に詰まった砂のせいで上手く身動きが取れなくなったヒティアはクノンの攻撃をまともにくらってしまう。
そこにトトも参戦するが、クノンの蹴りを腹に受けて吹き飛ぶ。
「雑魚は引っ込んでてよ。今面白いトコなんだから。」
トトは腹を抑えながら地面に這いつくばる。ヒティアはトトの名前を叫びかけたがその途中でまたクノンに蹴られてしまう。静かだった。あまりにも静かだった。クノンは気づく。何かの異変に。何も変わっていないようで何かが違う。
「そろそろトドメにしておこうかな」
クノンは手のひらをヒティアに向ける。その手の周りは段々と歪み始める。
「異能が開花していたのは不覚だった。けれど、まだアタシは1つしか異能を見せていない…。」
「ハッタリ…じゃなさそうだね。じゃあ使われる前にサヨナラといこうか。」
瞬時にクノンの手のひらから圧縮された衝撃波がヒティアを襲う。トトは動けなかった。痛みと恐怖で体が動かなかった。あれを受けてしまえばいくらヒティアでも……。トトは、目を瞑ってしまった。
ヒティアの二つ目の異能。これはハッタリではない。しかし、ヒティアの異能の発動より遥かに速く衝撃波が飛んでくる。そしてその衝撃波は、ヒティアの目の前で消滅する。その状況にその場にいた誰もが驚きを隠せなかった。衝撃波は剣で遮られ、そこには1人の男が立っていた。辺りが静まり返る中、クノンは少し震える声を出す。
「どうしてあんたがいるの?まさか、そっち側に付くつもりなの…?英雄・ガルエール・シルドレア・サナン…!!!!!」
「別にどちらに付くとかそういう事じゃない。ただ僕は、戦争が嫌いなだけなんだ。」




