模範の力。
たった一つで空腹は満たされた。しかし、まだ満たされていないものがある。それは守る力。あの女性はここを示した。なのにあるのはこの木と果実だけいつの間にか果実は全て床に落ちて腐っていた。
騙された、だけか。
騙されただけ。それなのに不満はない。怒りも溢れてこない。何故だろう。何も手に入らず時間を無駄にしただけ。たしかにあのままフラフラしていても時間の無駄ではあったが。とりあえず戻ることにした。戻るとそこにはまだ女性がいた。
文句を言ってやろう。そうだ。
「おいどういう事なんだ。守る力は何もーーーーーーーー。」
「アナタやっぱり期待通り、ウフフフっ。あらごめんなさい。アナタは守る力を既に得た。ここからどう足掻くかはアナタ次第。もう運命の歯車はあるべき方へと回ってはいない。」
一体何を言ってるんだ。もう得ている?何も変わっていないぞ。
「触れた異能者の能力を1時間だけ使用できる。クールタイムは30分。模倣能力。アナタはもう戦える。その力に私は期待しているわ」
うふふと言いながら笑う女性は、瞬きをした瞬間消えていた。
模倣能力。もし本当にそんな異能が身についたのだとしたら、ヒティアの力になれる可能性は高い。使い用によっては強力なのに間違いはない。しかし、模倣しなければ始まらない。異能者はほとんど戦場にいる。戦場に行けばきっと強い異能を得られる。しかし馬車はサイアリアから来るものばかりで、サイアリアへ向かうのは騎士が乗っている馬ばかり。乗せてもらえるわけもない。そんな事を考えていた時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「トトか。こんな所でどうした?」
「ラーヤ!!」
ラーヤなら話が早い。これまでの経緯をラーヤに話すと、ラーヤは血相を変えてこちらを見てくる。
「トト。ひとまずお前を戦場へ送る。しかし俺はお前の事で少し報告しなければいけない事があるからその後またこちらに戻って上へそれを伝える。この戦争が終わったら、忙しくなるぞ」
それがどういう意味だったのか。そんな事を考えている暇はなかった。分かっていると適当に相づちをして急いでラーヤの後ろに乗る。馬は風を切るように走り出した。




