第43話 肉食獣包囲網
※ちょっとだけ、肌色注意
【Side 両刀始祖】
「よし、アベルを襲いに行くぞ」
「ちょっと待って?」
アベルが上の階で服を脱いでいる頃――。
既にアロハシャツを肩にかけたレイナーレは、その爆乳を曝け出しながら三人に向かって声をかけていた。
「何のためにアベルを先に行かせたと思っている? 混浴狙いに決まってるだろう!」
「そんないきなりぃ!?」
「あらぁ、いいわねぇ!」
「ほ、ホントに!? 行こう行こう!」
頭を沸騰させたのはエルミーだけ、双子姉妹は完全に乗り気である。フレイはレイナーレの攻勢に触発されているし、マリアはアベルの逞しい体を想像して興奮していた。
「あ、オレは男でもあるが、別に肌を見てもいいよな? 今は完全にアベルしか見えてないし、三人に手を出す気もない。それに皆で抱かれるようになれば一緒だからな!」
「抱かれぇ……っ!」
「わたしはあんまり気にしないわよ~? レイナーレってほんとに心も女の子だもの」
「むしろ身体まで凄すぎっていうか……あたしたちよりスタイル良くて嫉妬しちゃうよ。元は男性だったのに、なんだか複雑だなぁー」
「いやいや。お前ら全員、男の理想みたいなスタイルだろうに……ぁんっ! おいぃ……お触りはいいが弄ぶのはやめろ、こら」
「ちょ、ちょ、わ……! ダメだよぉ!」
仲良く談笑しているフレイやマリアに、その胸にちょっかいをかけられながら階段を上がろうとするレイナーレをその大声が止めた。
「三人ともダメだって! アベルをお、襲うだなんて! そういうのはまだ、その……!」
「だがもう子供の恋愛というわけではあるまいに。大人の女と、男が求め合うならそういう関係が自然だぞ?」
うっ、と呻くエルミー。
年頃だ。エルミーだって、そういうことには興味津々である。
「焚きつけてアベルをその気にさせるだけだ。それにエルミー、お前だって興味あるだろ?」
「う、ぅぅ……でもぉ、混浴なんてしたらボク……」
レイナーレの言葉に圧されるエルミーが、とある所に視線を飛ばす。
目の前の、三つの大質量兵器たち。特にレイナーレのを。
それから自分のソレを見下ろした。
「なるほど、不安か。だが……」
「えっレイ、ナーレ?」
エルミーの視線から察したレイナーレは、そっと歩み寄ってその金髪に手を乗せた。
目の前に「だゆんっ」と揺れるものが突き出されたエルミーは目を白黒させるが、レイナーレはあやすように頭を撫でる。
「オレが言うのもなんだが、大丈夫だ。確かにサイズは負けているが、お前の引き締まりつつボリュームもある身体は十分……エロい。オレが保証してやる」
「……そ、そうかな?」
「男でもあるオレが言うんだ。それに……アベルと愛し合いたくて磨いた身体なのだろう? 自信を持て、な?」
「愛し、合う……う、うん!」
――――レイナーレがそんな説得で言いくるめて四人で押しかけた混浴だったが……。
「う、ぐぅ……っ!」
アベルの理性をガリガリと削ることに、成功していた……!
既に湯に浸かるため一糸残らず脱ぎ捨てた、獲物を逃さない肌色の包囲網が構築されている。
「ふふ……♡」
「えへへ……!」
両サイドにはタオルを取った双子姉妹が。圧倒的重量を誇る果実を湯船に浮かべて、じっとりとした女の視線を投げかけている。
舌舐めずりすらしそうな顔だった。
「フフフ……!」
そして入口から真反対、一番開けた絶景を拝める方向には……風呂縁に形の歪んだ尻を乗せ、胸を隠しもせずに脚を組む吸血鬼がアベルに視線の逃げ場を残さない。
背中を見せれば即、喰らいつく狩人の目をしている。
唯一、まだタオルで隠しているエルミーはというと――。
「ふっ……はあ……! ア、アベル……っ」
「…………っ!」
出口までの中間、風呂縁に腰掛けてタオルでなんとか胸と局部を隠していた。
その動きはモジモジとして、恥ずかしそうにアベルを見ては視線を逸らす。
なのに身動ぎしているせいで、隠しきれずに見え隠れしていた。
出口は押さえられ、五階建ての屋上から飛び降りることもできるが今は全裸……!
実行するわけにもいかず、アベルは逃げ場を完全に失った。
しれっと退散しようにも四方を囲まれているため捕まってしまう。
さらに極上の裸体をガン見で拝んでしまったアベルの魔剣は元気になっており……乳白色のお湯から出ることが出来なくなっていた。
(ヤバいどうにかして逃げ切らないと……! いや、嫌じゃないけど! まだ心の準備が……!)
アベルは一応、童貞ではない。途中まではヤったから。
だが行為は失敗、二度目のチャンスの前にミリアとは離れ離れ。とてもじゃないが経験豊富とは言えない。
さらには、ミリアよりもよっぽど魅力的な身体を持つ美女数人から言い寄られてキャパオーバーを迎えない訳がないのだ。
しかし逃走ルートなんてものを数千年生きた《始祖》が残すわけもなく。Sランク冒険者《四剣》のアベルすら逃げることはできず、その場で大人しくお湯に浸かるしか無かった。
(――それにしても、みんなスタイルヤバすぎるって。こんなの興奮しないわけないじゃないか……!)
本人は自信を持っていないが、エルミーは比較対象が規格外すぎるだけ。十分女性として豊かなスタイルを持っている。
フレイとマリアの双子姉妹は言わずもがな。出るとこは巨大であり引っ込むところはキュッとしている。
さらにレイナーレは、双子以上のダイナマイトボディ。もはや男の欲望そのものの具現化だ。
だがその中で、一際アベルの目線を誘っているのは――。
「――なんだ。さっきからエルミーばっかり、ケダモノみたいな目で見てるじゃないか……?」
「うわっ、レイナーレ!? ちょ、当たって……!」
またしても、いつの間にかアベルの背後にいたレイナーレはお湯の中でその背中に飛びついた。
背中でぺったんこに潰れる爆乳。幸せの柔らかさが一面に広がるが……さらに、経験豊富な《始祖》はアベルを追い込んでいく。
「あの恥ずかしがる姿……エッッッロいよなぁ? よくわかるぞ、モジモジとするくせに見え隠れする尻肉に横乳……♡ 身をよじって、そそられるなァ……?」
「……ッ!」
エルミーをダシに耳元で囁きながら……自分のパーフェクトボディを全身に擦り付ける全力誘惑。抱きつくことで逃がすことのない視覚、触覚で理性を責め倒す。
さらに――
「あ〜ん、レイナーレったらズルぅい……!」
「フレイ……!?」
ぬるりと忍び寄っていたフレイが、左腕をぎゅっと掴んだ。
「ねぇあっくん、ちゃんと身体は洗えたかしら? お姉ちゃんが背中流してあげるわよ? ……こ・れ・で♡」
ねっとりとした言葉とともに、手で寄せた腕の上をズリズリ……と、自身の巨大な胸で擦り上げるフレイ。
もしも許したら、全身がこれで洗われてしまうのだろう。アベルは生唾を飲み込んだ。
「アベル君、つーかまーえた……っ!」
「くぁ……マリアま、でっ……!」
背中と左腕に気を取られているうちに、今度は右腕をマリアに捕獲される。
「男の人って挟むの好きなんでしょ? こう……とか、触るのもいいよ……? こことか、さ……♡」
アベルの二の腕を姉と同じサイズの胸で挟み込み極楽の感触を与える。そして手は……自身の脚、その内側へと招き入れる。
まるで男から迫っているように、そのダイナマイトボディに見合う肉感の太ももを撫でさせる。
髪を結い上げ顔を上気させた彼女の息はとても荒く、艶めかしい。
まるで獣に群がられている状況なのに、アベルは力ずくで危機を脱しようとしない。
その様子に……仮説を立てていたレイナーレは確信を抱いた。
(思った通り。オレには対してはまだわからないが……少なくとも三人には、アベルは手荒な真似はしない……出来ない!)
不死であり同格レベルに強いレイナーレへの反応はまだわからない。だが、エルミーたち三人には、アベルは強引になれないのだ。
もしも手荒な抵抗で痛い思いをさせたら、強すぎる抵抗をして怪我をさせたらという考え。それが今、アベルを縛る自縛の鎖となっている。
「ボクの身体で、興奮してくれたんだ……!」
「……ッ! エルミーっ!?」
エルミーはタオルの代わりに白いお湯で局部を隠して、アベルに恐る恐る近づいていく。
恥ずかしがりながらも嬉しそうにはにかむエルミーは、アベルの男心を深く突き刺した。
状況は、さらに追い込まれる。
「ね、アベル……もっと見て♡」
「絡み合って♡」
「ぎゅってして♡」
「そういうことだ。女による傷は女で癒すのが一番だ。だから……な?」
ムニュムニュと柔らかい肢体との密着度が上がっていく。
レイナーレに至っては腕どころか、長く艶めかしい脚さえも鍛えられた体に回されて――
「――ん、お?」
「っ!?」
その魔剣に触れた。
「ちょ、レイ……!」
「ほう、へぇ? この感じ、なかなかご立派な魔剣をお持ちじゃあないか? 予想以上に中々楽しめそうだな……!」
これ以上ないほどのしたり顔をして、レイナーレはアベルに絡みつく。
その脚を、魔剣に触れながら上下に動か――そうと、したときだった。
トンッ……という力と共に、エルミー、フレイ、マリアの三人の体がアベルから離れる。
力を抜いていた三人はそれによってほんの僅かに離れ、そして――
「うぉわぁああああ!!!!!」
「ごはっ!?」
頭を挟んでいるレイナーレの胸を頭突きの衝撃で突き放し、アベルは手元のお湯を思いっきり飛沫として跳ね上げた。
「えっ……きゃあ!?」「ひゃんっ!?」「うわっ……!?」
気を抜いていた故に三人は反応できず、皆が目を瞑った隙にアベルは一飛びで浴槽から飛び出した。
「げほっ! くそ、飢えているところにいきなりエサをやりすぎたか……!?」
三年もの禁欲を経て婚約者に浮気されたあとでの、度重なる美女たちからの誘惑。ギリギリだった理性に、トドメを刺すべく行われた美女四人による全力淫猥誘惑アピール。
それはまさしく腹ペコの猫の前に、普段の量の大盛りをはるかに超えて雪崩を起こすような量のエサをぶちまける行為。
いかに飢えていたとしても、アベルにとってはパニックを起こすものだった。
「もっ、もう部屋で寝る!」
「くっ……! 言っておくがゲストルームの鍵はオレが持っているからなぁ!」
「〜〜〜〜っっっ!」
釘を差されたアベルは真っ赤な顔で怨めしい視線を送りながらも、飛沫が落ち着かないうちに脱衣所へ駆け込んだのだった。
――――その夜、昂ったままの女三人は。
二人は揃って激しく、一人は静かに身体に残る感触を元にお楽しみだった。
吸血鬼は再会の記念に気分良く高級ワインを空けていたが……男は慰めることもできず、魔法で無理やり眠りについたのだった。
オオカミ一匹、大蛇二匹、
ワンコ一匹。
どうも、書籍発売が明日に迫ってドキドキの赤月ソラです。
自覚できていませんが、アベルはトラウマを抱えています。まだ前へ進めていないのです。
それを克服できていないからこそ、彼はまだ【サレ冒険者】なのです。
『サレ冒険者は傷心を癒やす旅に出る』、書籍版は明日発売です!




