表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/52

第37話 努力の先には狂人ばかり



「フレイ、フレイ。力加減忘れてる」

「えっ、あっ!? ご、ごめんなさい! 大丈夫!?」


 声を掛けると慌てて腕を離して心配してくれる。

 反射的に《強化魔法》を発動したから怪我はしてない。だけど普通の人だったら腕がぽっきりだったかもしれないな。


「最近ずっと《増強ブースト》をかけていたから、力加減に気をつけないといけないの忘れちゃってたわ……」

「いい調子だよ。常に魔力やスキルを使ってる感覚が身についてきてる証拠だから」


 ため息をつくフレイを慰める。俺の腕を折ろうとして力を込めたわけじゃないからだ。

 彼女は今、自分に身体能力を強化する《増強ブースト》の付与を常に付与している。だから意識しないと、思わぬところで事故が起きるかもしれない状況だ。

 ちなみにこれはフレイだけじゃなく。


「あ、マリア。《雷球ボールボルト》の形崩れてる」

「えっ、うそ!? あ〜、失敗だぁ」


 マリアの周囲には三角や四角といった形をした雷の球がいくつか浮かんでいた。もう球状に戻ったけど。


「エルミーの魔法は? 発動してるか?」

「えっと……実はさっき、ちょっと途切れちゃった。でもなるべく発動するようにしてるよ!」


 エルミーは、体の中の魔力に集中している。

 こんなことをしているのは、ひとえに彼女たちの特訓だ。

 魔人と魔獣の群れにやられたことがショックだったらしく、旅に出ると早々に「鍛えてほしい」と頼み込んできた。

「守られるだけじゃなくて、支えられるようになりたいから」だって……ま、まあ、強くなるのに越したことはないからな、うん!


 とはいえ俺はスキルを使わない。クソ雑魚ジョブの《剣士》だからな。魔法と素の剣技全振りだ。

 だから魔法寄りにはなってしまったが、こうしてトレーニング方法を教えている。


 フレイには《増強ブースト》の他にも、邪魔にならない程度の付与を限界いっぱいまで付与している。

 対称にスキルを付与する《付与師エンチャンター》の性質上、たくさん付与できた方が強いだろう。スキルの習熟と魔力量の上昇を兼ねてしてもらっている。


 マリアは魔法型だからやりやすいな。彼女の魔法力は元からかなり高いから、低く感じた魔力操作を高めることに。魔法とスキルを両立している《魔戦士》の特性も伸びる。

 長時間いくつかの《雷球》を出し続け、なおかつ形も弄るのは操作力が鍛えられる。難易度も高いけど。


 エルミーは……残念ながら、あまり助言できるところがなかった。

 そもそもAランク上位だ。ほぼ完成された強さだし、スキル主体で戦うから俺が詳しくない。身体能力強化もスキルだし。

 結果――《剣聖》の超高速の速度で強烈なステップを多用するので足への負担が大きく、継戦能力に不安があったようだから、疲労を回復させる無属性の回復魔法《代謝促進(リ・ライフ)》を教えてずっとかけさせている。


 これまでの道中で俺との模擬戦も何回かした。

 三年前と逆転していて俺が余裕で勝ったけど、彼女たちもこの一週間で一歩か二歩くらいは強くなったんじゃないかな。弟子だった俺が言うのもおかしいけど。


「これってアベルがいっつもやってたことなんでしょ? 凄いなぁ……ボクたちだって訓練はしてたけど、ここまで四六時中なんて難しすぎるよ」

「必要に駆られてって面が強いけどな」


 怪我しても戦い、疲れても動き、寝る間も惜しんで稼いだからな。

 それでずっと《身体強化》やら《代謝促進リ・ライフ》をかけ続けて、いつの間にかここまでの練度になっていたからな……。

 フレイに抱きつかれたときのように咄嗟に魔法を発動するっていうのは、実は超高等技能だったりする。

 高い魔力操作力と慣れを要求されるんだ。とりあえず、三人には一つの魔法かスキルでいいからそれくらいできるようになってほしい。


「この水準がSランク……他の人たちもボクらよりずっと強んだろうなぁ」

「想像もつかないわね〜。そうだ、あっくんは他の人たちとは会ったことはあるの?」

「ん〜……あるけど、他のSランクかぁ……」


 フレイの質問に、俺の声は露骨に下がる。きっと顔はすごく微妙な表情をしているんだろうな。


「アベル君と一緒にいるならそのうち会うかもしれないかなって思ったけど……なんだか反応が悪いね?」

「俺はあんまり会ってほしくないな……会うにしても俺がいるときじゃないと……」

「え、何その反応……みんな危ない人たちなの?」

「危ない、というかな……ネジが外れてんだよ、Sランクってのは」


 そう言いつつ、交流のある先輩たちを思い出す。

 悪人ではない……だが、()()だ。どこか危うい人たちばかりなんだ。


「俺に言わせてみれば他のSランクってのは、元々どこかイカれていた人間が、さらにぶっ壊れた成れの果てだ。全員強さと、頭のネジが壊れてるんだよ。……どっちが先だったかは知らないけどな」


 どいつもどの人も、総じて化け物のような戦闘力を持っている。そしてそれぞれ独自のルールというか、自分の世界を持っているから扱いが難しい。

 まるでどこにスイッチがあっていつ爆発するか分からない爆弾だ。何かの拍子に地雷を踏んで、起爆するかわからないから、止められる俺がいないと……と不安を抱かせるくらいのくらいのな。


「まあ、俺はその中でも貴重な「普通の人間」だけどな」

「……普通?」


 なぜか首を傾げられた。

 三人がなんか疑わしそうな目つきで俺を見てくる……普通だよ、俺は。


「ねぇ、アベルの魔力量って凄いよね。いつからなの?」

「生まれつきだな。昔はミリアの三十倍近くあったぞ」

「魔法系最高峰のジョブ持ちの、三十倍……」

「それに魔力操作は俺の方が上手かったな。ミリアに魔力操作を教えたの俺なんだよな」


 まあ、魔力ばっかりあっても魔法として放出する魔力出力がないとあんまり意味がなかったんだけどな。


「ねぇあっくん。ミリアちゃんを助ける旅で死にかけた、って言ってたけど、どれくらいのことになったの?」

「んー? ボロボロの瀕死になったのは二桁じゃ効かないじゃないか?」

「ひんっ……二桁以上!?」

「当たったら即死みたいな状況も山程あったから……それ合わせたらもっとだな」


 三人だって、この前の魔人のような死線をいくつもくぐってきたはずだ。それを短い期間で何十回と繰り返せば、みんなこれぐらい強くなれるさ。下地はあるんだし。


「……恋人のためだけに?」


 エルミーが聞いてくるが、それくらい普通だろう。――愛する人のためなんだから。


 そんな質問をされて不思議に思っていると、エルミーたちは顔を寄せてコソコソと話し始めた。


「――真性は自分がそうと気付けないって本当だったんだね」

「なるほど……こうでもなきゃあの域には届かないってことね、良くわかったわ」

「ひとまず、これからはそんな、無茶をさせないように――」


 なんだよ、ひそひそと。まるでヤバい奴を目の前にしたかのような感じで。

 俺は普通ノーマルだからな!?


 嫌な予感がする……このまま話を続けちゃいけない。

 なにか話題を変えなければ……と、思っていた時にそれは見えてきた。


「そんなことより! ほら、あれ見てみなよ」

「っ、わぁ……!」

「まあ!」


 目にした光景に感嘆する三人。

 上り坂を終え小高い丘の上から目の前に広がったのは、キラキラと光る一面の青。

 そして手前に広がるたくさんの建物と活気のある街並み。

 広大な海と、賑わう街の光景だ。


「おぉー……ここには来たことなかったけど、凄いね……!」

「海がとっても綺麗……! しかも何あれ、何か浮いてる?」

「さすがシュナルテ……その一大観光地だね」


 あの街こそ、魔剣を返すための旅で最初に目指していた……つまり、魔剣をくれた一人がいる街。

 大陸南部の沿岸全てを占める海洋国家『シュナルテ』の誇る一大リゾート観光地。


 常夏の海氷の街、『エステナ』だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ