第36話 愛ゆえに
どうも、もどかしい赤月ソラです。
お待たせしました、第二章開幕です。
どんな章になるかというとこんな感じになります。
恋人に一途で盲目だったヘタレセカンドチェリー
VS
奥手&エロ姉妹の未経験トリオ
ファイッ!
――酷く、寒い夜だった。
『ほんの暇つぶしのつもりだったが、まさかお前のような男と出会えるとはなぁ』
足元には雪が残るくせに、空は明るく月が照らしている。その光を背に、男は気分良く、不思議そうに。
『何故、奴らを助ける? その力、必死に練り上げたものだろう。そんな力を身につけてなお、なぜ一撃で命が潰えるような戦いに赴く?』
真っ赤な――真紅の長髪を風にはためかせ、その人影は問いかけた。
『奴らは足りない。力も、覚悟も。お前のような強者の助けが無くば、魔王すら倒せんような半端者ばかりだ。それを何故――』
『愛だよ、愛』
顔を流れる血を拭い、大きく息を吸い込んだ。冷たい空気が肺を刺す。
『恋人が、いるんでね。命を削るように強くなったのも、血反吐を吐いても助けるのも――力をつけた彼女たちが無駄に足踏みしないように、ここからお前をどかすのも……愛ゆえに、ってやつさ』
ありきたりなフレーズを、心からの答えとし……後の《四剣》となる青年は、にやりと笑った赤髪の男に向けて剣を構えた。
・ ・ ・ ・ ・
風の中に潮の匂いが混じってきた。歩いていると汗ばむくらいの暑さにもなっている。南に進めば当然か。
北から南へ伸びる街道を徒歩で移動していたのは、見渡す限り俺たち四人だけだ。
「最後の宿場町からの馬車が欠便になっちゃうなんて、ついてないわね〜」
「いいじゃない、急ぐ旅でもないんだし。ゆっくりのんびり行けばさ」
俺が嗅覚で海が近づいてきたことを察していると、そっくりな美貌を持つ紫髪の二人がそう話していた。
おっとりした姉のフレイに、宥めるように笑っている妹のマリア。
姉妹揃ってグラマラスなボディを持つエストムエ姉妹だ。
「ま、これも鍛錬と思えばいいし、楽しいからいいじゃん! ……ね、アベル!」
「そうだな」
そして、俺――アベル・シクサムが新しく所属したAランクパーティー、『誓いの輝剣』のリーダー、エルミー。
彼女が満面の笑みで歩くその歩みに合わせて、一房の長い金髪が尻尾のように揺れている。
「ふふ、それもそうね。あっくんが一緒ならどこを歩いてもいいわ〜」
「流石によっぽどの危険地帯だったら、守ってほしいけどね?」
「そんなとこ行かないよ。行くなら守るけどさ」
カーヘルから出立して一週間ほど。
俺の魔剣を返す旅だけど、急ぐものでもない。
のんびりと、会わなかった三年間を埋めるように会話を重ねながら、目的地の近くまで進んでいた。
その道程はトラブルもなく順調に進んでいる。……道程だけは、だが。
「でもよかったわぁ。な〜んにも危ないことなんてない道中で」
「……あぁ、そうだな」
フレイの言葉に少しだけ視線を逸らした。
危ないこと……あるさ、大きな危機だった。Sランクの俺でも現在進行系で解決できない恐ろしいことだ。
それは――パーティーに入ってから、三人のスキンシップが激しすぎることだ!
大したことじゃない、と言われそうだが、俺にとっては大きな問題だ。
カーヘルを出たあの日から、何度も何度も理性を削り取られるような……端的に言えば、とてもエロいスキンシップに晒されている。
例えば、マリア。
『アベル君が肩を揉んでくれるなんて嬉しいなぁ〜。あたしも姉さんもすっごく凝っちゃうからさ。なんでだろうね?』
『そりゃそうだろうね……んんっ。これくらいの力加減でいい?』
『ん〜、もっと強くお願いできる?』
『わかった』
『もっと強くお願い』
『まだ、強く、ぅん……っ』
『はぁ、んぅ……もっとぉっ……!』
『あぐっ、ぅっ、ふぅん……! ――ッ、ぁっ! イぎ、はぁ、はぁ……!』
『…………』
――なぜ、あられもない声を上げるんだ!?
かなり痛いぐらいの力でやってるんだぞ? なんで喘ぐ……? なんでビクビク震える……???
そして、フレイ。
『あっく〜ん。ちょっと手伝って欲しいんだけどぉ〜……』
『いいよ、何を手伝えばいいんだ?』
『お・着・替・え♪』
『はっ!?』
『防具をつけるのにおっぱいが邪魔だから支えて欲しいわ〜。いつもはマリアちゃんにお願いしてるけど、誰かさんのおかげでトロけちゃってるしぃ……ねえ?』
『……エルミーは? エルミーに頼めば』
『外に走りに行って暫く帰ってこないわ。……ねぇ、お願い?』
『っ、ぐぅ……わ、わかった……』
『そう、そんな感じで後ろから手を回して……下から――んっ、あんっ!』
『〜〜〜〜っ!?!?』
『ふふふ、なぁんでそんなに離れてるのかしら。もっと密着してもいいのよ……?』
――妖艶どころか、もうシンプルにエロい。あんな直接……生で……。
震えながらもなんとかやり遂げたもののまだ手に感触が、重量感、柔らかさが残っているんだよ……!
さらにはエルミーまで……。
『こうやって焚き火の番をするのも久しぶりだね』
『あぁ……最近はいょっと会っても、少しだけ話して俺が旅立ってたしな……でも結構変わったよな』
『そりゃね。警戒の魔道具なんて昔は買えなかったし、随分楽になったよ』
『うん……いや、それもあるんだけどさ、その……なんで、ぴったりくっついてるのかな、って……』
『あっ、あはは! その、そろそろこれくらいしてもいいのかなっていうか、しないとヤバいかなっていうか……! やっぱり、南下してるから暑いかな、えへへ……でも、もうちょっとこうしてても、いい……?』
『…………あぁ』
――可愛い。他の二人よりはいやらしさの面で見ればそこまででもない。でもいつも元気なエルミーが、上気した顔で見つめてくるのはこう……ギャップで、グッときた。
……俺だって、健全な男なんだ。ミリアに操を立てていたが、所詮は我慢しているだけだったんだ。
浮気され酷い裏切りに遭ったが、どこぞの勇者のように元気がなくなったわけでもない。むしろ三年もの禁欲で有り余り、溜まりに溜まっているくらいだ。
つまりは、だ。
――俺の魔剣は、もう限界なんだよ!!!
キツい。辛すぎる。
三人は昔からの友人であり恩人だ。でも、それ以上に彼女たちは魅力すぎるんだ。
彼女たちは溜まった元気に対して存在すら劇毒なのに、スキンシップは過激さを増すばかり。
そんな地獄のような楽園のような日々が続いている。野営か安宿なんかで元気を晴らすこともできない。
心が、理性が、死にそうだった……。
「はぁ……」
――なんでそんなことをするのか。三人が俺をどう思ってるかなんて、わかってるつもりだ。
だって少なくとも好意を持ってくれていなきゃ、こんなことはありえないだろう。
仮にも恋人がいた身だ、女性の機微にも気付けるノウハウはある。
ミリアしか見てなかったから気付かなかったけれど……三人は、俺に好意を向けてくれている、と思う。
というか思い返してみれば、三年前までもめっちゃアプローチされていたじゃないか……! それを気付かずスルーしていた俺はとんだ朴念仁だった。
でもその気持ちに気付いた途端に手を出すのは……違う気がした。そんなのまるで、あの勇者みたいじゃないか。
そして万が一にも無いと思っているけれど……もしも、ミリアのように変わってしまったらと考えると……下手なことは出来なかった。
なにかしてしまったら、関係が悪くなってしまうかもという考えが拭いきれずに、俺は前へ進めないでいた。
「あ〜っくん、もう……何を考えてるのかしら?」
そんな、悶々とした気持ちで益体もないことを考えていると、衝撃と共にフレイの声が聞こえてくる。
見ればフレイが右腕に抱きついてきていた。
みしり……っ、と骨が軋みそうな剛力で。
さてタイトルにもある通り、こちらの作品。
書籍化が! 決定しました!
カクヨムメインでこちらにご報告していませんでした! すみません!
発売日は3/25(水)! 来週です、一週間後です!
これからこちらでも2章を公開していきますので、よろしくお願いします。
KADOKAWAオフィシャルサイト サレ冒険者紹介ページURL
https://www.kadokawa.co.jp/product/322510001632/




