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村ぐるみの計略

 結論から言うと、土建屋さんたちは自身の為に動いてくれていた。


 どのような動きかと言えば、アグダ氏の戸籍作り。


 テレビの記者会見で老夫婦が語っていたように、自身は捨て子として扱われることになった。これを老夫婦が拾い、本日まで育ててくれたという建前である。少なくとも行政や司法の担当者には、そのように説明しているらしい。


 我が国では国籍法二条により、捨て子は日本で生まれたと見做されて、反駁が出てこない限り日本国籍が与えられる。ただ、自身の場合は見た目が完全に洋ロリなので、些か怪しい気がしないでもない。


 そんなことをして大丈夫なのかと思わないでもない。


 正直、説明を受けてから生きた心地がしなかった。


 この辺りは事後に老夫婦や土建屋さんから説明があった。


 なんと集落の人たち全員で口裏を合わせているのだとか。


 村ぐるみの隠蔽工作、恐るべし。


 警察もすっかり信じているらしい。


 逆にそこまでしてくれたからこそ、目や体毛の色さえ異なるアグダ氏であっても、里子としての事実を優先して、法務局も就籍に向けて舵を切ってくれたのだろう。ここ数年、自身は老夫婦のところで育っていたという設定である。


 弁護士の先生曰く、家庭裁判所も駄目とは言わないでしょう、とのこと。


 なんなら世論も味方しているから。


 女児の日本ゲームショウでの奮闘っぷりも影響しているのは間違いない。


 そこまで見越しての記者会見か。


 マスコミやネットの力のおかげである。


 ちなみに会見を開いたのは土建屋さんの入れ知恵らしい。


 時系列的には、まず最初にイベント会場での爆破騒動がニュースで報道。重要参考人として児童保護施設に突っ込まれたアグダ氏を把握した老夫婦が、彼に連絡を取ってくれたのだそうな。


 これに土建屋さんから、山神様のピンチを伝えたところ、ならばと村の方々総出で協力を申し出てくれたとのこと。いつぞやのメガソーラーの件、村の皆々が建造に反対していると言っていたのは、決して嘘ではなかったみたい。


 人口が少ない限界集落だからこその禁じ手だ。


 村の会議で口裏合わせまでしてくれたらしい。


 土建屋さんにしてみれば、今回の騒動が下手にこじれた場合、自身の立場まで危うくなってくる。女児誘拐的な意味で。その辺りも加味した上で、老夫婦と協力してアグダ氏の就籍にまで話を持っていったのだろう。


 デキる男の行動力は半端ないぜ。


 諸々の打ち合わせを終えたところで、本日のところは解散。


 あとは弁護士の先生と法務局の担当者の方々が上手いことやってくれるそうな。少なくとも土建屋さんからはそのように言われた。まぁ、表向き女児の中身オッサンには、行政の手続きで行えることなんて、きっと何一つない。


 弁護士の先生は土建屋さんの知り合いで、ツーカーの仲とのこと。


 なんと頼もしいことだろう。


 就籍にはしばらく時間を要するらしい。


 ただ、身元保証人が得られたので、自宅に帰宅しても構わないとのこと。


「……といった具合だ」


「色々と面倒をお掛けしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


 おかげで児童保護施設から無事脱出。


 あの個室には、もう二度と戻りたくない。


 今は自動車に乗り込んで帰路に着いている。


「今回はこっちも肝が冷えたよ。テレビでニュースを見てたら、アグダさんがイベント会場でヤンチャしてるんだからな。しかも、保護者不在で児童保護施設にぶち込まれるとか、マジ勘弁して欲しいって」


「仰ることはご尤もかと」


 最近なにかとお世話になっている高級セダンの助手席。


 ハンドルを握った彼とお喋りをしている。


 ちなみに老夫婦とひ孫の娘さんは、彼の会社の若い衆とやらが自動車でやって来て、別の車両で地元まで送って行ったとのこと。なんと驚いたことに、都内までは公共の交通機関で足を運んでいた彼らだ。


 本当にアンタたちは九十代なのかと、土建屋さんも驚いていた。


「とはいえ、あの状況なら見過ごせないよな」


「そういってもらえると気分が楽になります」


「そういうアグダさんだからこそ、彼らも声をかけてくれたんだろう」


「一方的な山神様扱いは相変わらずでしたが」


「感謝しているのなら、何か神様っぽいことをしてやったらどうだ?」


「いずれにせよ、近い内にお礼に行きたいと考えているのですけれど」


「あぁ、そのときは自分も付き合うさ」


「ありがとうございます。とても助かります」


 とはいえ、自身に出来ることなんて限られているのだが。


 野良仕事でもお手伝いしたら、喜んでもらえるだろうか。


 肉体労働ならどんと来い。


 もっと色々な魔法を使えたら、神様っぽいことも行えそう。ただ、下手に手を出すとどんな反動があるか分からないので躊躇している。現在は既に習得済みの、手からファイアーの研鑽で様子を見ている次第。


 ちゃんと学べる機会が訪れたら、そのときに試してみようと考えている。


「それとすみません、不動健一の扱いがどうなっているのか、知りたいのですが」


「警察には、村の関係者でアンタの知り合いってことにしておいた。ただ、村の連中には山神様の関係者とも伝えてある。どっち付かずの状況で了承を得ている状況だから、今後も上手いこと扱って欲しい」


「それで村の人たちは承知したのですの?」


「彼らにとってアンタは山神様だからな。恩返しのつもりなんだろうよ」


「なるほど」


 そうして自身が施設内に収まっていた間の出来事を耳にすることしばらく。


 小一時間ほどで自宅に戻ってきた。


 世話になった運転手へお茶でも飲んでいくかと尋ねたところ、あんな汚い部屋に上がりたくない、とか言われてしまった。多少なりともショックだったので、そろそろ部屋の模様替えにチャレンジしようかと思う。


 私物は施設を出る際に返してもらった。


 財布などもちゃんと手元にある。


 また、普光院さんに預けたスマホと部屋の鍵についても、何故か土建屋さんが持っていた。話を聞いてみると、動画配信サイトのアカウントを経由して彼女と連絡を取り合い、受け渡しを申し出てくれたとのこと。


 向こうしばらく土建屋さんには頭が上がりそうにない。


 そんなことを考えつつ、自宅に足を踏み入れる。


 室内はイベントに参加した当日と変わりない。


 万年床の掛け布団のくしゃり具合までそのまま。


「やっぱり、自宅は最高ですわね」


 どうやら警察も宅内までは押し入っていなかったようだ。ノートパソコンにログインしてシステムログを確認してみると、最後のログイン日時はイベントの前日。不動健一としてのプライベートも守られている。


 老夫婦の突撃がもう少し遅れていたら、どうなっていたか分からないけれど。


 おかげでほとんど元通りである。


本作はカクヨムで10万文字以上の「先行連載」を行っております。

「アグダちゃん」で検索、もしくは以下のURLからどうぞ。

https://kakuyomu.jp/works/2912051596661307013

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なんとか丸く…丸く? 収まってなによりでしたw
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