真紅と黄金の目覚め、極上の多幸感
「……ただいま、みんな」
カノンが真紅の瞳を開き、静かに身を起こした。
その瞬間。
紅蓮の要塞の跡地に、世界そのものがひれ伏すような、圧倒的で濃密な魔力の波動が爆発的に広がった。
「な、なに……この魔力……ッ!?」
ミアが息を呑み、本能的な畏怖で身体を震わせた。
カノンの背中には夜の闇より深い漆黒の吸血鬼の翼が広がり、頭上には星々を集めたような穢れを知らぬ黄金の光輪が輝いている。
これまでも底知れない力を持っていたカノンだが、今の彼女から放たれるオーラは次元が違った。息をするだけで空間が震え、周囲の空気が甘く、そして神聖な香りで満たされていく。
「カノン、様……? ああ、なんて……なんて美しい……」
レヴィアが、その神々しさと恐ろしいほどの妖艶さに魅入られたように、ポロポロと涙を流して膝をついた。
「……マスターの魔力出力、計測不能。エラー、エラー……既存の概念では、マスターの存在を定義できません」
ノアの銀色の瞳が限界を告げて明滅する。
カノンは、言葉を失って呆然とする五人の家族を見渡し、ふわりと、この世の誰よりも艶やかに微笑んだ。
「私が眠っている間、ずっと血を分け与えてくれていたのね。……私の冷たい夢の中まで、あなたたちの愛が届いたわ」
カノンはゆっくりと立ち上がると、最も近くにいたミアとレヴィアの腕を掴み、自身の胸へと抱き寄せた。
「んっ……カノン?」
「あぁっ、カノン様……!」
「命を削って私を繋ぎ止めてくれた、可愛い家族たち。……今度は、私が最高の『ご褒美』をあげる番ね」
カノンが二人の首筋に顔を寄せ、その鋭い牙を優しく、愛を込めて突き立てた。
「あ……っ、ぁああっ!!」
「ひゃあぁっ!? カ、カノン様ぁっ……!」
悲鳴のような甘い嬌声が響き渡った。
カノンから流れ込んでくるのは、これまでの吸血鬼の魔力だけではない。神格化された『黄金の魔力』が混ざり合った、未知にして究極の快楽だった。
魂を直接撫で回されるような、脳が真っ白に焼き切れるほどの多幸感。ミアの強がりな理性も、レヴィアの竜としての頑強な精神も、一瞬にしてドロドロに溶かされていく。
「あ、だめ……っ、カノン……これ、気持ちよすぎ……っ、頭、おかしくなっちゃうぅっ……」
「はぁっ、あぁっ……! 神様、カノン様ぁ……っ、私、もう、溶けちゃいます……っ!」
二人はカノンの背中にしがみつき、腰をガクガクと震わせながら、快楽の波に溺れて絶頂を繰り返した。
「ずるいアル! あたしにも、あたしにもご褒美ちょうだいアル……ッ!」
「私も……カノンの愛に、触れたいです……っ」
カノンの放つ甘い香りに当てられ、理性を飛ばしたリンとセラフィが、自らカノンの足元にすり寄り、その柔らかな太ももや腰に顔を擦り付けた。
「ふふっ、急がなくても、たっぷり可愛がってあげるわ」
カノンは長い指先で自身の血を滲ませると、それをリンとセラフィの唇に這わせた。
「んちゅ……あっ、んんっ……!!」
「はぁっ、あぁ……なんて、神聖で……エッチな味……っ」
神の血を舐め取った瞬間、リンとセラフィの身体がビクンと大きく跳ねた。全身の神経が極上の快感に支配され、二人は地面に崩れ落ちて、甘い喘ぎ声を止めどなく溢れさせる。
「……マスター。ノアも、ノアの胸のバグも……限界、です……」
最後まで耐えていたノアが、ポロポロと涙を流しながら、熱で真っ赤になった顔でカノンの腕にしがみついた。
「ええ、待たせてごめんね、ノア。……私の神の力、あなたなら誰よりも深く解析できるわよね?」
カノンはノアの顎をすくい上げ、自身の唇を、ノアの唇へと深く重ね合わせた。
「んっ……!?」
口移しで直接注ぎ込まれる、カノンの真紅と黄金の魔力。ホムンクルスの人工回路が、カノンの圧倒的な愛のプロトコルで完全に書き換えられていく。
「あ……っ、ぁああっ……なにこれ、処理、できない……っ、ますたぁ、ますたぁぁっ……!」
感情を学習し始めたばかりのノアにとって、それはオーバーフローを通り越した、宇宙が弾けるような快楽だった。銀色の瞳がトロンと潤み、口の端から銀色の糸を引いて、ノアは完全にカノンの胸の中でとろけ切った。
「はぁっ……ぁあ……カノン……すき……」
「カノン様……私だけの、神様……っ」
五人の少女たちは、カノンから与えられた次元の違う快楽に身も心も支配され、彼女の足元で幸せそうに身をよじり、甘い吐息を漏らし続けている。
「ふふ……本当に、私の可愛い家族たち」
カノンは、自分の腕の中で蕩け切っている少女たちを優しく見下ろした。
吸血鬼の妖艶さと、神の慈愛。その二つを完璧に兼ね備えたカノンは、五人をまとめて自身の翼と光輪のオーラで優しく包み込んだ。
傲慢の神を討つための真の力を手に入れたカノン。
激しい死闘の後の、甘く、そしてどこまでも淫らな休息の時間は、いつまでも紅蓮の要塞の跡地に響き続けていた――。




