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際限なき激怒と、紅蓮の死闘

ドォォォォォォォンッ!!!!!


カノンの一振りの大鎌が放った真紅の斬撃が、コロシアムの床を砕き、マグマを噴出させながら、一直線に『憤怒の神』の玉座へと着弾した。

黄金の煙が立ち込める中、玉座に座る炎の巨漢――『憤怒の神』は、自身の顔のすぐ横を通り過ぎた斬撃の軌跡を見つめ、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。

「……ハッ。面白い。ただの吸血鬼の小娘かと思えば、少しは骨があるらしい。……おい、野郎共ッ! あの生意気なゴミ共を一人残さずマグマに叩き落とせェェッ!! 俺を楽しませた奴には、褒美をやるぞォッ!!」


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!


神の号令と共に、コロシアムの観客席から、そして地下の待機房から、何万もの狂信者たちが武器を手に、雪崩のようにカノンたちへと襲いかかった。


「……マスター。敵の総数、約三万二千。しかし、個々の戦闘力は下等。脅威度、極めて低」

ノアが銀色の瞳に魔力光を走らせ、冷静に分析結果を告げる。

「ええ。……ただの豚ね。みんな、掃除の時間よ。……誰一人、生かして帰れると思わないことね」


カノンが冷酷にそう呟いた瞬間。

六人の『真紅の死神』たちが、狂宴の幕を開けた。


「『聖なる断罪ホーリー・パニッシュメント』!!」

セラフィが高潔な白と黒の翼を広げ、上空へと舞い上がった。彼女の放つ神聖な光の矢がまるで雨のように降り注ぎ、狂信者たちの鎧を、肉体を、音もなく貫いていく。


「遅いわよ、脳筋ども!」

ミアが影に溶けるように戦場を駆け抜け、神速の双剣で敵の指揮官たちの首を次々と刈り取っていく。「新入りにカッコ悪いところは見せられないからね!」と、影の中でニヤリと笑う。


「カノン様には、指一本触れさせないっ!」

敵の群れの中央に元気に飛び込んだレヴィアは、無邪気な笑顔のまま『部分竜化』を発動させた。

頭部には気高い竜の角が、背には紅蓮の翼が顕現する。そして剥き出しの両手足だけが、どんな刃も弾く強靭な竜の鱗と鋭い爪へと変貌していた。

服を破くことも動きを阻害することもない、洗練された戦闘形態。軽やかなステップから放たれる一撃は、見た目に反して凄まじい超質量だ。竜の爪を模した手足が振るわれるたび、数百人の狂信者たちが紙屑のように吹き飛び、悲鳴を上げてマグマの中へと沈んでいく。


「『特級奥義・乱れ千切り』アル!!」

リンが中華包丁を手に、特級の歩法で敵の群れへと飛び込む。包丁が閃くたび、狂信者たちの身体は文字通り『食材』のように細切れにされ、空中に舞った。


そして。

戦場において、最も異質で、圧倒的な殺戮を見せつけたのは――ノアだった。


「……対象をロックオン。戦闘モード、起動」

ノアは表情一つ変えず、銀色の瞳で迫りくる敵の群れを見つめた。

彼女が右手を突き出すと、その腕が瞬時に『敵を最も効率よく殲滅する刃』の形状へと変形し、さらにカノンの魔力で強化された真紅の兵器へと進化する。


ズバァァァァァァァァァッ!!!!!


ノアが一振りした瞬間、腕から放たれた不可視の刃が、前方にいた数千人の狂信者たちをコロシアムの床ごと一瞬で真っ二つに切り裂いた。

敵の放つ炎の魔法は、彼女の周囲に展開された魔力バリアで瞬時に解析・無効化される。

感情を持たないからこそ、恐怖も躊躇いもない。ただ最速で、最も美しく敵を『処理』していく姿は、まさに殺戮の芸術だった。


「……マスター。敵の総数、残りゼロ。掃除完了。……マスターの肌を布で完璧に覆い隠す作業(※お触り)の続きを、要求する」

ノアは数千人の首を刈り取った直後、返り血一つ浴びない姿のまま、真顔でカノンの腕をぎゅっとホールドして見つめた。

「どさくさに紛れてまたセクハラしようとするんじゃないわよッ!!!」

ミア、セラフィ、リンの三人が、見事なシンクロ率で盛大なツッコミを入れる。


「ふふっ、本当に可愛い子ね。ええ、全部終わったら、いくらでもメンテナンスしてあげるわ」

カノンは大鎌を肩に担ぎ、クスクスと笑いながら、玉座の主へと視線を向けた。


わずか数分。

三万を超える軍勢は、カノンたちの前に文字通り塵と化し、コロシアムは不気味な静寂に包まれた。


「…………」

玉座に座ったまま、その光景を見下ろしていた憤怒の神が、ゆっくりと立ち上がった。

自身の自慢の軍勢が、たった六人の少女によって全滅した。さらに、かつて自分が『不良品』として捨てたホムンクルスが、自軍を容易く蹂躙した。

だが、神の胸に湧き上がったのは、恐怖でも、己の作品が奪われたことへの嫉妬でもなかった。


「……使えねぇ、ゴミ共がァッ」


ボワァァァァァァンッ!!!!!

憤怒の神の全身から、先程までとは次元の違う、黒く煮えたぎるような炎が噴き出した。

不甲斐なく散っていった部下への苛立ち。そして何より、神である自分の聖域コロシアムを、下等な吸血鬼とガラクタどもに荒らされたという事実に対する、純度100%の極限の『怒り』。


「誰の許可を得て、俺の庭で勝手な真似をしてやがる……ッ!!」


ズゴォォォォォォォォンッ!!

怒りの感情が爆発した瞬間、憤怒の神の魔力出力が底なしに跳ね上がった。

周囲のマグマが一斉に天高く吹き荒れ、コロシアムの空気が一瞬にして超高温の地獄へと変貌する。

際限なく強くなる『純粋な暴力』の化身が、狂気に満ちた瞳でカノンたちを睨み下ろした。


「一秒で灰にしてやる……!! 跡形もなく消え失せろォォォォォッ!!!!」


鼓膜を突き破るような大激怒の咆哮と共に、最強の吸血姫すらも戦慄する、圧倒的な死闘が幕を開けようとしていた――。

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