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恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第八章 並び立つ者

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第四話|その先へ

夜が、静かに落ちている。


高窓の外に、星が広がる。

昼間の喧騒は、すでに遠い。

人の気配も、ほとんどない。


「……」


セレスティナは、廊下を歩く。


足音は、わずかに響くだけ。


急ぐ必要はない。

止まる理由もない。

ただ、進む。


「……」


角を曲がる。


見慣れた回廊。

それでも——


どこか、違って見える。


「……」


足を止める。


高窓から差し込む月の光。


白く、静かな光。

その下に、一つの影。


「……遅い」


低い声。

振り向くことなく、落ちる。


「……そうかしら」


わずかに、息を整えて返す。


「待たせた覚えはないわ」


「……そうか」


短く、返る。

それだけで、十分だった。


「……」


セレスティナは、自然に歩み寄る。

迷いなく、その隣へ並ぶ。

何も言わずに。


「……」


しばらく、言葉はない。


必要がない。

ただ、同じ場所に立つ。

それだけでいい。


「……」


ふと。


指先が、触れる。

ほんのわずかに、確かめるように。


「……」


離れない。


そのまま、重なる。

当たり前のように。


「……」


視線を上げる。


月の光が、淡く落ちる。


その中で、レオニスが、こちらを見ている。

何も変わらない。


「……」


セレスティナは、わずかに息を吐く。

それから、ほんの少しだけ距離を詰める。


肩が、触れる。

そのまま、離れない。


「……どうした」


低く、問われる。


「……いいえ」


首を振る。


「何も」


それだけ。

それでいい。


「……」


沈黙が落ちる。

だが、重くはない。

静かで、穏やかで、揺らがない。


「……」


セレスティナは、視線を前へと向ける。


長い廊下。


続いている道。


終わりは見えない。


だが——


不安はない。


「……」


隣に、変わらない気配。

確かに、そこにある。


「……行くぞ」


低く、落ちる。


「……ええ」


小さく、応じる。


そのまま、歩き出す。


並んで、同じ歩幅で。


触れたままの距離で。


言葉はない。

必要がない。


「……」


歩みは、止まらない。


その先へ。


どこまでも続く道へ。


迷いなく、選び続ける。


そのまま。


——共に、進んでいく。

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