79 ぼろ負けた……
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挑戦、二~五日目。
二日目。
いつものように突然出現する魔王様。
僕は二爪、クロエは空弾の魔法を浴びせかけたけど、結果は一日目と一緒だった。
三日目。
僕が三甲で抑え込んでいる(微動だにしなかったけど)間に、クロエに雷爪の魔法を叩き込んでもらったけど、扇で撫でられると掻き消えた。
四日目。
前日とは逆にクロエが空弾の連続で注意を引いて、僕が後ろから四刀で切りつけたけど、広げた扇で受け止められてしまった。
五日目。
自傷覚悟の五崩を試したものの失敗。
危うく囮のクロエを巻き込みそうになって、逆に魔王様にフォローされてしまった。
完敗だった。
クロエをお姫様抱っこしながら、五崩を完璧にガードされてぐうの音も出ない。
「出会い頭に仕掛けるのはやめよう。不意打ちにならないし」
「そう」
そもそも出現のタイミングを魔王様に委ねている段階で不意打ちにならないし、慌てて仕掛けようとするから足並みも揃えづらいし、何よりいつ来るかと意識してしまって開拓の仕事が疎かになってしまう。
「出てきてもいったん合流して、それから堂々と挑もう」
「そう」
挑戦、六~十日目。
魔法主体に変えてみた。
僕は左手の一指と二爪で、クロエは風と雷の四節の魔法を。
どうせ魔王様からは仕掛けてこないのだからとたっぷり時間をかけての魔法だ。
で、どれも扇に払い落とされたり、空に吹き飛ばされた。
周りに被害が出ないようにする余裕まであった。
というか、雷って見てから受け流せるものだったっけ?
魔王様の底の知れなさにあきれるしかない。
「遠距離攻撃は届かない。なら、もっと近づいてみよう」
「そう」
挑戦、十一日目。
近づいてから大きな魔法を仕掛けようとしたら扇を頭に載せられて、首を傾げられた。
別に卑怯だとか責められたわけじゃないけど、こんなやり方で意味があるのかと言われたみたいでやめた。
というか、ぶっ放したところで通じる気がしなかった。
だって、魔王様ってば分身するんだよ!?
分身して全方位を囲んで扇を載せてくるんだよ!?
たぶん超高速移動で。
いくつも残像を残して。
それでいながら周りに衝撃波が広がらないよう工夫までして!
あんなの当てようとしても無理だ。
「僕が引きつけるから、隙を見て魔法だ」
「そう」
挑戦、十二~二十日目。
僕が前衛と中衛になって攻撃を仕掛け、その間にクロエが近づきつつ大きな魔法を放つ方向へ。
あっさりと扇で受け流された。
僕の攻撃も、クロエの魔法も。
例の分身を使わなかったのは必要ないからだろうか……。
「大きな魔法なら魔王様も避ける。なら、僕の一番強い魔法を使う」
「そう」
挑戦、二十一日目。
僕とクロエの役目を逆転。
クロエが前に出て気を引き、その間に僕は魔法を詠唱。
合図でクロエが撤退すると同時に放つ。
「凍原の墓標」
なんとなく出来そうな気はしていたけど、クラリスの使った唱歌を使えるようになっていた。
聖印持ちが使用できる伝説級の魔法だ。
上空から叩きつけられた冷気。
空気が凍え、氷結した。
紅葉の散る秋の季節。
その一角が真白の冬に染まる。
魔王様は避けなかった。
確実に捉えた。
が。
「ふむ。涼やかながらも荒々しく冬の風情があるのぅ」
髪の先どころか服にさえも霜は届いていなかった。
魔王様の周りだけ何事もなかったように秋の景色が残っているあたり、見えないバリアーでもあるのかもしれない。
愉快そうに景色を楽しんだ魔王様は、去り際に扇を一振りして冬を払うとカラカラ笑いながら帰っていった。
「……当たっても威力が足りない」
「そう……」
「最大威力を鍛えよう」
「そう」
挑戦、六十日目。
僕らは鍛錬を重ねた。
僕は五崩を完璧に使いこなす事。
クロエは五節の魔法を覚える事。
毎日の魔王様参り(向こうから来る強制イベント)では失敗を恐れず、訓練の成果をぶつける場として利用した。
最初の内は大失敗ばかり。
むしろ挑む相手に助けられる場面ばかりだった。
それでも失敗を糧に工夫して、ラフルにも相談して、知り合った人たちに支えられて、少しずつ少しずつ成長していった。
挑戦、百日目。
五崩と五節をマスターした。
成功率百パーセント。
暴走の恐れもなく、不自然な溜めもなく、それでいながら威力を落とさずに発動させられる。
僕は右と左で遠近どちらも。
クロエは風と雷の属性両方で。
満を持した挑戦。
切りの良いタイミングだと嬉々として挑んで。
「ぼろ負けた……」
「そう……」
あの魔王様。
畳んだ扇で五崩を受け流すわ、大風を切り裂くわ、雷を打ち払うわとメチャクチャだった。
とっても機嫌よく笑いながら帰っていくのを見送り、僕たちは座り込んでいた。
「広範囲の大威力。条件は揃えたのにまだ足りないって、どうなってるの?」
「そう。頑張ったのに……」
「そうだね。本当にね」
わかりやすく落ち込んで僕の手を握るクロエの頭を撫でながら考える。
意気込んでみたものの、想像以上に魔王様がやばい。
山とか海を相手にケンカしている気分になる。
しかも、山と海だと僕らが思っていたのが、向こうにとっては丘とか池だった、みたいな。
井の中の蛙、なんていうけど、大海が広すぎて困る。
次はどうしようか。
クロエの心が弱ってしまう前に方針を考えないといけないなと思っていると、そのクロエが手を強く握ってくる。
「クロエ?」
「でも、扇を閉じた」
「うん。そうだったね。いつもは広げたまんまなのに……」
「魔王も少しは本気になった?」
僕を見上げる目に落ち込んだ色はもうない。
強くなっているんだな、クロエは。
「うん。きっとそうだ。もっと。もっと強くなろう。そしたら、本気の魔王様に一撃入れられる」
「そう」
そして、挑戦開始から四年が経った。




