50 そんなの魔王様がやればいいじゃん!
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やばい。
ストレートにぶっこんでしまった。
無礼講(自己責任)でやっちゃいけないやつだ。
思わず顔を青くする僕に魔王様は豪快に笑ってくれる。
「ぬふふふふ。そうそう。主はその方が面白い。ただでさえ小さい己の器を自ら狭めてどうするのじゃ。人の子の時間は短いのだからのう。存分にやりたいようにすればよいのじゃ」
わけがわからないけど、何か含蓄のあることを魔王様は言いたかったのか?
だから、あんな一方通行な会話を……。
「で、儂の頼みはのう」
違った。
やっぱり僕らに何かをやらせたいだけだった。
こっちの返事を求めていない辺りがとても魔王様らしい。
「わかりました。何をすればいいんですか?」
ともかく、大森林の最奥なんて場所に連れられてきた僕らに選択肢なんてない。
周りは亜人種の街で、ドミトル氏や他の人たちの反応を見るに人間の僕らは圧倒的にアウェーだ。
魔王様の庇護下から外れたらどうなるか、考えたくもない。
そもそも、僕たちの旅支度は大森林の人の街までのもの。
いうなれば、大森林の中層向けの装備。
なのに、大森林の深層の更に奥なんて無理ゲーが過ぎるだろう。
道もわからなければ、装備も、食料もない。
魔王様の依頼を無視するわけにはいかないだろう。
いや、どんな理屈をこねたところでどうせやらされそうだけどね。
「うむ。素直で結構。人の子は聡いのう。ちと過ぎる部分もあるが、それもこれからよ。ほれ」
魔王様が閉じた扇で僕らの後ろを指す。
途端に、背後の扉とか壁とか柵とか、背後の建物がズドンと音を立てて吹っ飛んだ。
綺麗にまあるく繰り抜かれていて、まるで最初からそうだったみたい。
「は?」
魔王様、自分の城をあっさりぶっ壊したぞ。
巻き込まれた人はいない……よな?
誰もいないってわかってぶっ壊したんだよな?
「ほれほれ。見えるじゃろ。儂の街の端っこじゃ。もう森に飲まれそうでなんとも見苦しい。そもそも人が増えすぎて街に入り切れん有様よ。ま、これも儂の統治が凄すぎるからだがのう!」
いえ、本当に統治が凄い人は人口密度が過密にならないと思います。
ちゃんと計画的な都市設計をして下さい。
よし。
今度は心の声を出さないでいられたぞ。
その分、視線は冷たくなっているかもだけど。
「なんじゃ。主もそんな目で見るのかえ? ドミトルみたいな目をするでない。あんなでかい上に頭でっかちになってもよいのか?」
まだドミトル氏が何者かも知らないけど、とりあえず苦労が偲ばれる。
「それで、街が森に接しているのがまずいと?」
「おうおう。それよ。儂はどうでもいいのだが、他の者には森は過酷に過ぎよう。で、だ。主らであれを拓いてくれ」
開拓村を出て、また開拓を命じられるとは。
いつから僕は開拓系シミュレーションゲームの住人になったんだろう?
けど、開拓か。
前までなら足手まといだったから何もできなかったけど、今の僕なら少しは力になれるんじゃないだろうか?
魔王様からの命令と考えると、脈絡はないけど無理難題ではなさそう。
「ちなみに、どれぐらい開拓すればいいんですか?」
「うむ。街の周りをざっと家が三十は建てられる程度じゃな」
家が三十。
上から見下ろした家は長屋みたいな形だった。
あれが大体、一軒三十メートルあるとして、それが三十となると……九百メートルと仮定して? それが全周――はないのか、でっかい城壁があるから半周となると……はあっ!? この街、一キロもないぐらいの大きさだよな!? それって街を三倍の大きさにしろって言ってんのわかってる!?
「そんなの魔王様がやればいいじゃん!」
「ふむ。人の子の言い分もわかる。万能たる儂が出れば一瞬で済む、と。その通りじゃ」
一瞬で終わっちゃうんだ。
大言壮語じゃないんだろうなあ。
「しかし、できん。儂がやったらなんもかんも吹っ飛ぶからの。ドミトルがうるさい」
なんもかんもの範囲が気になります。
目に見える範囲全てが焦土と化しそうで恐ろしい。
「それに儂はあまり動けん」
難儀な事だがのうと肩をすくめる魔王様。
いや、十分に動いていると思うけど?
魔王様が一人で大森林に現れて、僕らを攫って、やりたい放題じゃん。
「で、やってくれるじゃろうな?」
断る選択肢はないくせに。
けど、ただ流されてはたまらない。
「期限はありますか?」
「ないぞ。どれだけ時間をかけてもよい」
終わるまで逃がさないって事だよね。
まあいい。
それは想像できていた。
とりあえず、一日でやれって話じゃないならいい。
「その間の僕らの生活は?」
「無論、儂が手配しよう。客人に不自由はさせんぞ」
器の大きい魔王様だ。
贅沢させてくれそうな気もする。
とはいえ、実際に世話をしてくれるのは亜人の人だ。
ギスギスした空気になりそうだから、上げ膳据え膳とはいかないか。
いったところで、無駄に時間を浪費できないから甘受するつもりはないけど。
「身の危険は……」
人を嫌う亜人の街。
ただここにいるだけで僕たちは危ない。
「それは知らん。自分たちでなんとかせい」
魔王様の線引きはそこ、か。
知らないと言いつつも、強権を持つ魔王様だ。
魔王様の客人に攻撃する奴はなかなかいないだろう。
だから、僕らに危険な迫るとすれば直接的じゃなくて、間接的な感じになる。
つまり、評判とかの話だ。
自分の評判は自分で良くしろ、と。
うん。当たり前の話だ。
魔王様から『こいつらは良い人間だから仲よくしろ』と言われて関係が良くなるわけがないのだから。
「わかりました」
僕はクロエとラフルに視線を向ける。
クロエはうんと頷いて、ラフルは気軽に手を振って任せると投げてきた。
「魔王様の三十軒分といわず、百軒分開拓してやりますよ」
「いや、そんな一気に広くせんでええ。ドミトルがうるさい」
そうですか。




