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ゼロのアクタ  作者: いくさや
第一章 零印
44/154

43 赤い、聖印?

 43


 直撃した。

 ギリギリかわしたとか、防御が間に合ったとか、後ろに飛んで衝撃を逃がしたとか、そんな要素はない。

 正真正銘の直撃。


「立つなよ」


 崖をぶっ壊すほどの一撃を受けたのだ。

 それでも立ち上がるとなれば、どうやって倒すんだって話だ。


 かなりの距離――十メートルは向こうに落ちたクラリスは動かない。

 あれだけ振り続けていた雪も止んで、草原を埋めた氷雪も段々と消え始めていた。

 少なくとも意識は失っているようだ。


 その間に味方の様子を見る。


「ラフルは、無理か」


 雷爪を掴んで、軌道を曲げてぶつけるなんて無茶苦茶をしたラフルのダメージが一番深刻だった。

 焦げた地面の上に倒れてピクリとも動かない。

 微かに胸が動いているから息はしているみたいだけど、痙攣じゃないよな?


「そう」


 そっと僕の隣に来たクロエ。

 服の下で、胸の聖印が薄っすらと青く光っているのが見える。

 戦意は十分、という感じか。

 頼もしい。


「アクタ?」


 クロエに名前を呼ばれる。

 初めての経験に嬉しく思うけど、気の利いた言葉も言えない。

 彼女が心配そうにしているのに、情けない。


「うっ、くっ……あ」


 僕?

 僕は、ちょっと、おかしいな……。


 砕かれた右肩の痛みは感じない。

 疲労はあるけど、それだって零印の体質で慣れたもの。

 なのに、なんなんだ?


「熱い」


 へその近く。

 焼き鏝でも当てられているんじゃないかと疑ってしまう。

 さっきの攻防の中で斬られた、なんて事もないのに。


 一人で立っていられない。

 クロエが支えてくれなかったら倒れていた。

 服を持ち上げるけど、それだけで力を振り絞らないといけない。

 そうやって、やっとの思いで持ち上げた服の下。


 熱を宿す位置。

 へその右と左。


「これは……」


 それぞれに見覚えのある印があった。

 見えたのは一瞬だったけど、見たばかりだから間違いない。

 この形、クラリスのお腹にあったのと似ている。

 少なくとも片方の形は全く同じで、もう一方のも上下左右が逆なだけ。

 三日月に似た紋様と、見た事もない文字。


「赤い、聖印?」


 ただ、赤い。

 クラリスのそれ、あるいはクロエの聖印の青と対極にある真紅。

 こんなのさっきまでなかったのに。

 僕の体に何が起きた?


「あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああ!!」


 突如の絶叫。


 意識を繋ぐのも億劫なまま顔を上げれば、いつの間にかクラリスが目を覚ましていた。

 僕たち――いや、僕、でもない。

 見開いた目が見ているのは、僕の腹に刻まれた赤い聖印。


「わたくしの、聖印。主より頂いた証を。正しさの、証明が。呪印の、忌み子が宿すなんて、あってはなりませんわ。そんなの、あってはなりませんもの。間違いでなければ、なりませんわ!」


 段々とボルテージが上がっていく。

 立ち上がれないまま、体を起こす事さえままならない様子なのに、気迫に飲まれそうだ。


「返しなさい。返しなさい。返して、返して、返して、返してよ! 返してって――返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせえええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」


 やばい。

 何がヤバいかわからないけど、本能的に危機感を覚える。


「そう」


 動けない僕に対して、クロエの対応は迅速だった。

 僕の右手を握りしめ、生み出した魔法は再びの雷爪。

 速さを優先したのか、数の三本だけでサイズも二回りは小さいけど、ほんの一秒程度で魔法を完成させてしまう。


「雷爪」


 青白い雷光が放たれる。

 満身創痍のクラリスにオーバーキルのはずなのに、咎めるつもりも、止めるつもりにもならない。

 むしろ、今のクラリスには足りないんじゃ……。


「ええええええええええええええああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぜええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ――!!」


 ブレスのない咆哮。

 魔法なんかじゃない。

 ただ、魂の底からの叫び。


 それに応えたのは散りかけの雪花だった。

 草原中に積もっていて、まだ解け切っていなかった氷雪が一斉にクラリスに集り、飲み込んでいく。


 雪が集まり、重なり、凍る。

 水が集まり、渦巻き、凍る。

 風が集まり、千切れ、凍る。

 凍る。凍る。凍る。凍る、凍る。


 何もかも、触れるもの全てが凍えて、停止していく。


 無慈悲に。

 無差別に。

 最早、術者の意思さえも超えて。


 迫っていた雷爪さえもあっさりと閉じ込めてしまった。

 氷の表面をなぞる間に、雪の中へ消える。


「なんなんだよ、これ……」


 そうして、唖然としている間にできあがったのは、氷と雪の彫像。

 人とも、獣とも、植物ともつかない異形は巨大だ。

 遥か頭上に見上げた頂点。

 そこには氷晶に閉ざされたクラリスの姿があった。

今日は万引き捕まえた記念日。

『バッグに持ってたのが落ちちゃったかもしれないわね、ごめんなさい』だって。

めっちゃバッグに入れなおして、チャックして隠してんのにね。

初めてやったとか言っていたけど、前から怪しくてチェックしていたのにね。

家族には言わないでとか、楽しー(#^ω^)。


すみません。愚痴です。警察に突き出していたから執筆間に合わないかと思ったわ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 返せと、言われてもなんで取れたかわからないだろうに。 頑張れアクタ君。
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