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殺害命令

クリスマス?


私の辞書にそんなものは存在しませんがなにか?


特に彼女が欲しいとか思っていない私は、今日も孤独に働いてます。


なぜか休みを取らされたので、現在はバイト中です。(裏のバイトね)

明日も休みなので、夜間までぶっ続けで、明日までやりますよ。イェーイ


ちなみに、皆さんは何をしていますか?

彼女とイチャイチャしてます?それとも、家で孤独にしてます?

もし、孤独仲間なら、私とお喋りしましょう。

(暇です)



右も、左も、上も、下も、何もかもが真っ黒で、何も見えない。

安定感はなく、浮遊感だけが体を包む。


そこに、リョーガは居る。


「で、次は何すればええんや?」


ここに来るのは、慣れている。何度も、何度も、暗闇から話かけられる言葉に従っていた。


いつも、尋ねれば少し待つと返答が返ってくる。だが、今回の返答はない。


何もない真っ黒な世界に漂い、返事を待つが、誰も答えない。


「おい、聴いてんやろ。さっさと言えや」


若干、怒りの混ざった声で問い掛け、遂に返答が返ってきた。怒りと殺意が混同した小さく、呻くような声で。


『…あいつを…殺せ…』


声からだけでなく、周囲を包む闇からも殺意が漏れ出す。

強くなったリョーガでさえ、その殺意の濃さに寒気を覚える。


『…あいつを…殺せ。殺すんだ。コロセ、コロセ、コロセ』


狂ったような言葉の羅列がリョーガの頭の中に直接響く。

頭の中に重く響く声のせいで思考が掻き乱されて、自分自身でさえも狂ってしまいそうになるのを堪えて、気丈に振る舞う。


「ハッ、お前、魔神なんやろ。せやったら、自分でやればエエやんけ」


リョーガの言葉に暗闇は黙った。いや、思考している。そして、言った。


『…ならば、お前の身体を寄越せ。…殺す。必ずあいつを殺す…殺してやる…』


闇から発せられる殺気が倍増した。

意識を保つだけでも精一杯な程の狂気に染まった殺気だ。寒気どころの問題ではなくなった。


「い、嫌に…決まっとる…やろがっ…」


この暗闇の中では動いても、目を瞑っても、耳を塞いでも、なんの意味もない。暗闇の声からは逃げれない。だから、リョーガは、なんとか言葉をひりだして拒否した。


『ならば…お前が奴をコロセ。必ず、コロセ…』


「…ハッ、ならっ、教えろやっ」


暗闇は殺気を抑える事すらしない。リョーガの意識は限界に近い。今にも、手放しそうだ。

それでも、リョーガは気丈に振る舞っている。もし、意識を手放してしまうと、身体が盗られそうだから、なんとか必死に繫ぎ止める。


リョーガの言葉に、暗闇は言った。

憎悪と殺意と狂気が織り混ざった声音で、ハッキリと言った。


『ーーユートをコロセ』


その言葉を聞き、一瞬、呆気に取られたリョーガだったが、押し寄せる殺気の波をも忘れてニヤリと笑った。そして、ゆっくりと口を開く。



ーーー



「リョーガさん!リョーガさん!リョーガさーーん!!もう昼ですよー!!」


声変わりのしていない甲高い声が部屋に響く。ついでに毛布に包まって寝ているリョーガの耳にも。


「うぅぅ…」


呻き声を上げ、モゾモゾと毛布の中で動いてから再度、夢の中へと突入した。起きる気配はなさそうだ。

ユースは、毛布に包まれたリョーガを控えめに揺らしながら起こそうとする。


「いつまで寝てるつもりなんですか!起きて下さいよ!」


「ぅぅ…うるさい」


毛布から顔を上半分出して眠そうな瞳をユースに向けてから言った。

そして、スポッと効果音が鳴りそうな感じに毛布の中に戻っていった。


「ちょっ!一体、いつまで寝るつもりなんですか!?もう昼ですよ!?僕は依頼終えて帰ってきたんですよ!?なのに、リョーガさん、寝すぎですよ!!」


毛布の塊をグワングワンと揺らす。毛布の中のリョーガは、嵐に巻き込まれた船に乗っている気持ちになっているだろう。


「だぁあぁぁ!鬱陶しい!!」


「ふぐっ!?」


我慢の限界を迎えたリョーガは、跳ね起きると同時にユースの腹を躊躇なく殴った。

ユースは、上手い事、開けっ放しの窓から外へと吹き飛び


「う、うそ…」


三階から落ちた。


下の方で何かが壊れる音と、カエルが潰れたような声と、人々の悲鳴のような声が聞こえてきたが、リョーガは知らぬ存ぜぬである。


「クソォ…ええ夢みてたのによぉ…あ〜あ、ユースの野郎、後で覚えとけよ…」


俺のパイパイが…と呟きながらベットから降りて寝癖でボサボサになった頭を乱雑に掻く。

彼の髪型を一言で例えるならば、鳥の巣である。



〜〜〜



リョーガは、起きたら必ず行う、洗顔と髪のセットを済ませ、宿の一階にある食堂で昼飯とは名ばかりの朝食を取っている。


「リョーガさん、酷いですよ…」


「不味い、超不味い。吐きそう。ゲロマズ。有り得へんやん、この飯」


ユースの言葉に耳を貸す様子はない。料理が出てきてから永遠と文句を垂れている。


「リョーガさん、聞いてます?起きてすぐに人を殴るのはどうかと思いますよ」


「アカン。もう食われへん。不味すぎ。前の街の飯の方がまだ美味かったわ。なんやねんこれ。動物の餌かよ」


ズイッと料理をユースの方へと押しやるリョーガ。ユースの話は全く聞いていないようである。


さすがのユースも怒りを瞳に宿し、強気で行こうと荒げた声を出す。


「リョーガさんっ!」


「うっさい」


が、いとも簡単に切り捨てられた。やはり、リョーガには敵わないようだ。

視線で、残った料理を食えと指示され、ユースは、渋々、リョーガに渡された食事に手をつけ始める。


「なぁ」


「なんですか?」


いかにもご機嫌斜めですよ。と言う風な返答を返すユース。

いつもなら逆ギレする筈のリョーガだが、今回は少し違った。


「お前、魔法使えたっけ?」


「一応、使えますよ」


「そか。んじゃ、俺、ギルドで待ってるから来いよ」


「は、はあ…」


なんとも要領を得ない質問だった。

いつもの事ながら、リョーガのする事は予想の斜め上を行く。


味の薄い料理を食べながら、ユースは立ち去るリョーガを見送った。



ーーー



人は必ずしも戦わなければならない時がある。それが、どれだけ逃げたい事であっても、どれだけ嫌な事であっても、戦わなければ先に進めない事がある。


だが、彼はそれから逃げてしまった。


仲間も見捨てて、全て投げ捨て、逃げてしまった。

それからは、急斜面を転がり落ちる石ころの如く、落ちる所まで落ちて行った。


奴隷落ちだけはならなかったが、Sランクとは名ばかりの、ただの臆病者に成り下がってしまった。


「クソッ、クソッ、クソッ」


発泡酒の入ったジョッキを片手に悪態を吐く。

他人ではない。惨めな自分への悪態だ。


もしも、あの時をやり直せたら。そう何度も思うが、過ぎた過去はやり直す事など出来やしない。


周囲からの冷たい視線は、今になっては気にならなくなった。いや、気にすらしなくなってしまった。


たった一度の失態。許されざる大失態。


悔いても、悔いても、何度悔いても、後悔を拭える事はない。


人並み以上に力があっても、能力があっても、何も出来やしない。


毎日、毎日、朝から晩までその時の事を、今の無様な自分を忘れようと、倒れるまで呑み続け、醜態を晒す。


情けない。何度そう思ったか。だが、何も変わりはしない。

過去に得た名誉ある称号や大金の数々も、今になってしまえば、ただの名ばかりの称号と、はした金。


残った金額も大きくない。武器も全て寂れ、使い物にならない。


死んだような毎日を過ごし、冒険者としての人生は終わりを迎え、死人同然の生活を迎えた。


それでも、まだ未練が僅かながらに残っているのか、無意識に冒険者ギルドへと足を運び、そこで酒を煽る毎日。


依頼など、ここ数年受けた事はない。いや、依頼板を見る事すらない。


ただ、酒場で酒を頼み、呑み続けるだけ。


もういっそ、死んだ方がマシだと思える毎日を過ごしていた。


彼と出会うまでは。


リョーガ「クリスマスやな…。彼女欲しい…」

ユート「いや、彼女なんて居ったら居ったで面倒やろ」

リョーガ「それでも欲ちいのよ!俺っち、彼女に癒されたいのよ!」

ユート「そーか、そーか」

リリィ「何の話をしてるの?」

ユート&リョーガ「うおっ!?」

リョーガ「どっから湧いた!?」

リリィ「人を虫みたいに言わないでよ!」

ユート「はははっ」

リリィ「何笑ってるのよ!」

ユート「何で俺だけ殴られるんや…」

リョーガ「フハハッ、ざまーみろ!」

リリィ「あんたもよ!」

リョーガ「のぉー!俺の息子がぁ!!」

ユート「リリィ、怒って帰っちゃったよ。どないする?」

リョーガ「くぅぅ…と、とりま、この痛みが治まってから、呑み…」

ユート「あいよ。野郎二人でヤケ酒やな」

リョーガ「…カップル見つけたら、いつつ、悪・即・斬っ!」

ユート「元気やなぁ〜。まぁ、程々にな」


次回に続く

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