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球体世界の観測者 ~見えるだけの少年は、陰陽寮で世界の裏側を知る~  作者: 雅貴
第1章

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第8話:ちょっ、ゴミ投げてくるのやめてください

「下がって」


神代さんの声で、俺は出口へ足を向けた。

白いものが、動く。

神代さんの手から紙が飛んだ。俺の目には、細いものが一瞬、通路を横切ったように見えた。

白い前脚がそこへ当たり、進む方向をわずかに変える。


空気の裂ける音がした。

次に、床が割れる音。


さっきまで俺が立っていた場所へ、脚の先が突き立っていた。

霧なら、そんな音はしない。

地面も削れない。


「走らないで。私の後ろへ」


神代さんが俺の上着をつかみ、通路の外側へ動かした。

脚を引き抜いた白いものが、身体を起こす。

肩の羽根のような板が、硬い音を立てて重なった。


奥から声がした。

作業着の男性が、金属の扉の倒れた音に気づいて、こちらへ来ようとしている。

神代さんはそちらへ左手を向けた。


「建物の中へ。扉を閉めて!」


何が起きているか分からない顔で、男性が足を止める。

白いものが、今度はその声の方へ頭を振った。

神代さんは俺から手を離し、男性とそれの間へ出た。


「牧瀬君、金網の内側へ。門は開けないで。すぐそばにいる」


俺は指示された場所へ、二歩だけ動いた。

門の外には遊歩道がある。

そこへ出れば広い。

けれど、さっきまで何人か歩いていた。

開けるなと言われた理由が、少し遅れて分かった。


ひかりさんが下の階段を駆け上がってくる音がした。

その途中で、大きな音が重なる。

倒れた扉が白いものの脚に蹴られ、階段の手すりへ当たった。

曲がった金属が通路をふさいだ。


「ひかり君、上の通路へ回って。こっちの足場が崩れてる」


神代さんが叫ぶ。

ひかりさんの返事が、下から来た。


「分かった。そいつ、外へ出さないで」


金属を踏む音が遠ざかる。

回ってくる。

すぐ来る。

俺はその言葉を、自分の頭の中で繰り返した。


***


白いものが、頭をこちらへ戻した。

神代さんが何かを言った。俺には全部が聞こえなかった。

耳の近くで、心臓の音がしていた。


目の前にいる。

形は、さっきまでの霧よりずっとはっきりしている。

それなら、当てやすい。


俺はポケットへ手を入れた。

指先に、布の角が触れる。

うらばあちゃんの声が頭へ浮かんだ。

それでも追ってくる奴には、これを投げつけなさい。


逃げるより、先に手が動いた。

お守りが、短い弧を描いた。

白い胸のあたりへ当たる。


乾いた、小さな音がした。


お守りは落ちた。

白いものは、消えなかった。


何も、ほどけない。

空気も弾けない。

布の角が、地面の水を吸って、黒くなった。


俺は、その一点を見ていた。

いつもなら、そこで終わった。

どこに投げたか分からなくなるくらい、急いで拾いに行っていた。

今日は、拾いに行けない。


「牧瀬君、動いて!」


神代さんの声がした。

俺は肩を引いた。

白い前脚が、顔のあった場所を通り過ぎる。

頬の横で空気が鳴った。


遅れて、金網が震えた。

俺はその前へ身体を戻せず、横へ倒れるように一歩出した。

靴の裏が、濡れた床を滑る。


お守りが、効かない。


そういう相手がいる。

その当たり前を、俺は何年も知らなかった。


「それを取りに行かないで!」


神代さんが言った。

俺はうなずいたつもりだった。

実際に首が動いたかは分からない。

お守りから目を離す。

目の前の白いものを見る。


伝力が、片方の前脚へ寄っている。

次は、そちらだ。


俺は反対へ足を出した。

白い脚が床をたたく。

破片が足首へ当たった。

痛みより、音の方が先に来た。


「左へ二歩。壁に近づきすぎないで」


神代さんの声を頼りに動く。

俺は、言われた方へ身体をずらした。

白いものは、思っていたより早く頭を回した。

四本の脚で、狭い場所でも向きを変えられる。

その身体と俺の間に、何もない。


神代さんの紙がもう一度飛んだ。

白いものの視線のない顔が、一瞬だけそちらへ振れる。


「そのまま。私の声を聞いて」


俺は息を吸った。

吸えた量が足りない。

まだ、大して走っていないのに。


***


神代さんは、建物の戸口にいた男性を中へ押し戻した。

扉を閉じ、細い紙を枠へ貼る。

同時に、もう一枚が門の近くへ動いた。

周囲の気配が変わる。

俺にも、何かを保っているのが分かった。


「ひかり君、上へ抜けられる?」


神代さんの声が、少し離れて聞こえる。

スマホではなく、小さな通信機へ話していた。

ひかりさんの返事が、短い雑音と一緒に来た。


「回ってる。階段の上、もう少し」


もう少し。

俺は白いものを見たまま、足の位置を直した。

練習の棒なら、外れても痛くなかった。

目の前の脚は、床へ穴を作る。


右の肩のような部分が、固まった。

そこから、前脚へ伝力が移る。

すぐ来る。


俺は左へ跳びかけて、秋庭さんの言葉を思い出した。

幅が大きいと、次に足を戻さないといけない。

一歩。

全部を避けるのではなく、届く場所から出る。


白い脚が、上着の袖へ触れた。

布が引かれ、肩が回る。

俺は転びそうになった。

でも、脚の先は身体へ届かなかった。


怖い。

小さく動く方が、怖い。

相手のそばに残らなければならない。

もっと遠くへ逃げたいのに、遠くへ跳ぶと、次に動けなくなる。


俺は足を戻した。

ふくらはぎが、きつく縮む。

次の気配が、もう変わっていた。


今度は前脚ではない。

後ろの脚へ、重さが移る。

身体全体が前へ来る。


俺は横へ動き、壁際の太い配管を挟む位置へ入った。

白い身体が、配管の横をかすめた。

金属の表面に擦れた跡が残る。

肩の板が、壁へ当たって鳴った。


止まるかと思った。

止まらなかった。

長い前脚が、配管の反対側から伸びてくる。


俺は頭を下げた。

しゃがむつもりはなかった。

背中が先に縮んだ。

脚の先が髪の上を通った。


「立てる?」


神代さんの声がする。


「立てます」


返事をして、膝へ手をつきかけた。

そこで止める。

手をつけば、その間、上が見えなくなる。

俺は壁を使わず、足の力だけで立った。


身体が、もう重い。

先に分かる。

でも、先に動ける時間が短くなっている。

見えるだけでは、足が軽くならない。


***


白いものは、俺の目を見ていない。

目がどこかも分からない。

それでも、俺が動いた場所へ向きを変える。

俺から漏れるものを、感じているのだろうか。


抑えよう、と考えた。

手のひらの手前へ注意を向ける。

昨日の練習で、流れが細くなった感じを探す。


その一瞬、白い身体の変化を見るのが遅れた。

前脚が横へ出る。


俺は腕を引いた。

肘の近くで、上着が破れた。

痛みが走る。

深く切られたのか、布に引かれただけなのか分からない。


「抑えるのはやめて。今は、見る方!」


神代さんの声が来た。

俺は顔を上げた。

自分が何をしていたか、分かっていたらしい。


全部を同時にできない。

知っていた。

安全な机の前で知ったことを、ここでは忘れたくなる。

止めれば追われないかもしれない。

そう思ったら、試したくなった。


試している間に、当たる。


「はい」


声が、掠れた。

神代さんが近づき、俺の前へ紙を一枚滑らせた。

白い前脚がその上へ触れる。

薄いものが引き伸ばされ、すぐに裂けた。

けれど、その一瞬だけ、動きが遅くなった。


「右へ。足元の段差を越えて」


俺は言われた通りに動いた。

小さな段差の上へ、片足を載せる。

両足を揃えず、前と後ろに分けて立った。


白いものが、低い音を出した。

鳴き声なのか、身体の中で何かがこすれているのか。

板の重なる音とは違う。


気配が、急に密になる。

脚へ集まっていたものが、肩の板へ広がる。

何をするのか分からない。

分からないけれど、そこにいたら駄目だ。


「広がります!」


俺は叫んだ。

神代さんの手が、こちらへ向く。


「低く!」


しゃがんだ直後、白い板の端から、細いものが飛んだ。

壁に当たり、軽い破裂音が続く。

俺の上へ、粉が落ちてきた。

口を閉じ、頭を腕でかばう。


神代さんの背後で、建物の扉が震えた。

貼られた紙が、端から少し黒くなる。

その向こうには、さっきの男性がいる。


神代さんがそこを離れなかった理由が、ようやく分かった。

俺だけを抱えて逃げれば、外へ出せたかもしれない。

そのあと、白いものがどこへ向かうかは分からない。


「今の、見えたね」


神代さんが言った。

俺は立ち上がりながら、息を吐いた。


「脚じゃなくて、上に、集まったから」


「次も、気づいたら言って。分からなくても、変わったなら言って」


俺はうなずいた。

戦っているわけではない。

できることを、できる順番でしているだけだ。


***


時間が、伸びていた。

ひかりさんはどこまで来たのか聞きたい。

聞いている間に、次の動きが来そうだった。


白いものが、向きを変える。

今度は俺から離れ、門へ顔を向けた。

神代さんの紙がそちらへ動き、金網の前に薄い線ができる。

それが白い脚へ触れた。

身体が一度、止まる。


止まっている時間は短かった。

線がたわみ、門の金属が鳴る。

外へ出るつもりなのか、何かに反応しただけなのか。

俺には分からない。

でも、門の外へは行かせられない。


神代さんが低く声を出し、紙を二枚重ねた。

白い身体が横へ向く。

俺の方へ戻ってくる。


出口を守る。

そのために、俺のいる場所へ動きが戻る。

俺は逃げる。

逃げ続ければ、ここに残る。


そんな考えが、頭の中を一瞬で通った。

自分から引きつけようとはしなかった。

そんなことをすれば、神代さんに怒られる。

何より、そんな余裕はない。


白い前脚へ、また伝力が寄る。

左。

いや、途中で変わった。

左の脚を下ろし、右で床を蹴る。


俺は出しかけた足を止めた。

止めきれなかった。

靴が水のたまった場所へ乗り、横に滑る。

身体が傾いた。


神代さんの紙が、白い頭の前で弾けた。

その瞬間だけ、進む方向がずれた。

俺は片手を床についた。

掌の中へ、細かな砂が刺さる。


痛い。

痛いけれど、腕は動く。

俺は膝を前へ出し、立ち上がった。


「左足、大丈夫?」


「……踏めます」


「足首をひねった感じは?」


「ない、です」


答えながら、左足へ少し重さを載せた。

痛いのは、さっき破片の当たったところだった。

力は入る。

神代さんは俺の足を一度見て、次の位置を示した。


「柱の手前まで。裏へ回りきらないで」


俺は動いた。

柱の向こうへ隠れたい。

でも、回りきると神代さんの姿が見えなくなる。

言われた場所で止まる。


白い身体が、柱へ前脚をかけた。

こすれる音がして、表面の薄い部分が落ちる。

その腕のようなものが、俺の方へ伸びてくる。


俺は腰を引いた。

壁と柱の間には、まだ少し隙間がある。

そこへ入りすぎると、次に出られない。

身体を斜めにして、脚の先だけを避ける。


肩の板が動く。

また、広がるのか。

俺は声を出した。


「上に、来ます!」


神代さんが建物の扉の前へ戻る。

俺は柱の手前で、できるだけ低くなった。

細いものが壁をたたく。

一つが靴のすぐ横へ刺さり、白い粉になった。


息が、もう苦しい。

胸の奥が焼けるようだった。

身体を起こすたび、足が重くなる。

どこへ動くかは分かる。

その場所まで、足が届くかが分からない。


***


上の通路で、靴の音がした。


「遼悟、右に寄って!」


ひかりさんの声だった。

俺は考える前に、右へ動いた。

白いものの肩に、濃い伝力が集まる。

次の攻撃の予兆だと思った。

けれど、その外側から、もっと強いものが来た。


ひかりさんが、上の通路から階段を二段ずつ下りてきた。

片手には、神代さんが持ってきていた道具袋から取り出した短い棒がある。

細身の身体が、俺と白いものの間へ入った。


「神代、入口」


「押さえている」


返事を聞いたひかりさんが、前へ出た。

白い前脚が下りる。

ひかりさんは横へ避けなかった。

棒で脚の内側をたたき、そのまま、身体の近くへ踏み込んだ。


硬い音。

白い表面へ、細いひびが入る。

肩の板が開きかけた。

ひかりさんの次の動きの方が、早かった。


「それ、遅い」


短く言って、棒を肩の付け根へ入れた。

俺には、そこへ伝力が集中するのが見えた。

ただ強く振ったわけではない。

強く振れる身体と、当てる道具が、同じタイミングで動いた。


白い板が、重なったまま砕けた。

破片が壁へ飛ぶ。

ひかりさんはその下を通り、長い前脚へもう一度棒を当てた。

白い身体が、姿勢を崩す。


俺は柱の手前で、立ったまま見ていた。

逃げ続けていた相手が、ひかりさんの前では、動きを選べなくなっている。

脚へ伝力を集めても、その脚を動かす前にたたかれる。

肩へ回せば、そこへ来られる。


俺には、次が分かった。

分かっても、避けるので精いっぱいだった。

ひかりさんは、その次を、起こさせない。


最後に、白い頭の下へ棒が入った。

押し込むような動きだった。

伝力が一度、濃く集まる。


乾いた音がした。

白い身体が止まり、重さを失うように崩れた。

霧みたいには散らない。

砕けたものが床へ落ち、そこから薄いものだけが抜けていく。


ひかりさんはすぐには棒を下ろさなかった。

神代さんが周囲を確かめる。

そのあと、ひかりさんがこちらを向いた。


「立ってていいけど、動かないで」


俺は返事をしようとした。

息しか出なかった。


白い破片の近くへ寄らないよう、神代さんが手で示した。

俺は足を動かしかけて、止める。

終わったと思うと、言われたことまで忘れそうになる。


「残ってる?」


ひかりさんが俺へ聞いた。

俺は床を見た。

重かったところは、もうない。

でも、砕けた板の間から、薄いものがゆっくり抜けている。


「少し。そこから、上へ。まとまっては、ないと思う」


声を出すと、自分がまだ見ることのできる状態だと分かった。

ひかりさんは神代さんへ目を向ける。

神代さんも床を確かめ、うなずいた。


「同じように見える。片づける人へ、その情報も渡そう」


ひかりさんが棒の先を下げた。

神代さんは、貼った紙をすぐには剥がさなかった。

外の遊歩道から、誰かの笑い声が聞こえる。

その人たちは、門の内側を見ていない。

ここへ入ってこないようにする仕事は、まだ終わっていなかった。


俺は時計を見ようとして、スマホを出す手が震えていることに気づいた。

画面を触れない。

指を伸ばすだけで、掌が痛んだ。


「今は出さなくていい」


神代さんが言った。


「帰る時間が変わるなら、落ち着いてから連絡しよう。先に身体を見せて」


俺はスマホを戻した。

ひかりさんが、俺の肩に残っていた粉を手で払う。

触られたところから、上着の布が現れた。

裂けている。

普通に帰ったら、玲奈に見つかるだろう。

それを考えられる自分に、少しだけ安心した。


***


神代さんに肩を支えられ、段差の端へ座った。

足が、座ったあとから震え始めた。

止めようとしても止まらない。

ひかりさんが目の前へしゃがみ、俺の顔を見た。


「どこ、痛い?」


「手。あと、肘と、足」


声が小さすぎた。

ひかりさんは聞き返さず、順に目を向けた。

神代さんが上着の破れたところを確かめる。


「深くはない。でも、戻って診てもらおう。手は、砂を落とすまで触らないで」


俺はうなずいた。

ひかりさんが立ち上がり、白い破片の間からお守りを拾った。

泥を軽く払って、神代さんへ渡す。


「これ、袋は切れてない」


神代さんが俺へ見せた。

俺は右手を伸ばしかけ、掌の痛みで止めた。


「ポケットへ戻しておくね」


神代さんが言う。

布の重さが戻ったことを、上着の上から感じた。


「……効かなかった」


言うと、神代さんは俺の隣へ座った。


「形を保てないものには働いていた。でも、いまの相手は、身体を持っていた」


「同じ干衝体なのに」


「同じ呼び方の中にも、違いがある。そのお守りが役に立たなかったわけではないよ。役に立つ相手と、そうでない相手がいた」


俺はポケットへ目を落とした。

お守りが急に弱くなったわけではない。

うらばあちゃんが間違ったわけでもない。

俺が、これで全部何とかなると思っていた。


ひかりさんが、砕けた白いものを見た。


「リーヴェル。外側の実体型では、そう呼ぶ区分のやつ」


初めて聞く名前だった。

俺は覚えようとして、途中でやめた。

今日は、音だけ頭へ残した。


神代さんは通信機で短く状況を伝えた。

処理の確認と、見学者が怪我をしたこと。医療の担当へ連絡してほしいこと。

見学者、という言葉が、今は重かった。

俺は勝手にお守りを投げた。


「すみません」


神代さんがこちらを見た。


「投げる前に、言わなかったから」


「そこは、帰ってから確認しよう。今は怪我を見る方が先」


叱られないのが、余計に申し訳なかった。

神代さんは続けた。


「予想していなかった反応が、別の場所から出た。こちらの見学の組み方も、確認する必要がある。君だけに考えさせるつもりはないよ」


俺は顔を上げた。

ひかりさんは、手の棒を見ていた。


「あんた、逃げるのは上手かったわ」


「……それだけだった」


「今は、それができたから、ここにいるんでしょ」


強い声ではなかった。

でも、聞き流せなかった。

逃げるしか知らないと思っていた。

今日は、逃げることだけでも、やることが幾つもあった。


見て、伝えて、足を出す。

教わった一歩を、戻せる場所へ置く。

できないことを試している時間はない。


俺は息を吐いた。

水門の下で、まだ水が流れている。

ほんの少し前まで、その音さえ聞こえていなかった。


「どのくらい、経ったんですか」


神代さんが通信の記録へ目をやった。


「ひかり君へ戻るように言ってからは、一分半も経っていない」


俺は、笑いそうになった。

笑えなかった。

あんなに長かったのに。


ひかりさんが俺の足元を確かめ、帰る道を指した。


「ゆっくりでいい。今日は、もう走らなくていいから」


俺は神代さんの手を借りて立った。

膝が少し曲がる。足は、まだ自分の重さを支えられた。


ポケットのお守りは、いつもと同じ場所にある。

今日は、それだけで帰れるわけではなかった。


それでも、帰れる。

俺はそのことを確かめるように、一歩ずつ、門へ向かった。


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