人間哲学は語れないけど
夢生に、
新しい仲間が増えます。
ちょっとだけ、
にぎやかになります。
うわぁぁぁぁ。
緊張するわ~
出勤初日ですもの。朝早すぎな起床。
土曜日の朝。
「助けてチャピえモン~
緊張やわらげるにはどうすんのぉ」
『緊張、なくそうとしなくていいよ。
今日は「うまくやる日」じゃなくて、
「初めて行く日」だから。』
ふぁぁー!!
『挨拶して、説明を聞いて、
わからなかったら聞いて。
それができたら十分。』
ふぁぁー!!
『緊張してる自分を、
「また失敗するかも」って責めなくていい。』
「責めグセがついちまって
オラ情けねぇす。」
『前とは違う場所。
前とは違う人。
今日の夢生は、今日の夢生。』
「来日したばかりの外人のつもりで
行くわ。初めてだもんな!!」
向かう途中、僕は
そう…自分は、佐上の国からやって来た
来日したばかりの…佐上人だ。
とかバカな事を念頭に置き、
どうにか緊張を解していた。
ド緊張して、店内にいくと
小走りでこっちに向かってくる
人物がいる。
「いやー朝からごめんねー
学生さん、たいてい夕方シフトなんだけど
流れ見てほしくて。俺のワガママ~。
改めて、店舗責任者、店長やってます
多田 優太です。宜しくね」
あっあっわざわざすみません。
「おっ!ごめんごめん
佐上 夢生くんね、間違ってないよね?
おれ、そそっかしいんだよ」
あっ佐上です。夢生です
緊張しながら、言うと
「緊張してんね笑でもぜんっぜん
悪くないから!あそこのしゃがんでる
人、見てよ。おれの事、使いっパシリにしてんだよね~!紹介するねー
岡野さぁーん!夢生くんだよー」
岡野さんは、笑いながら
「おかのです。夢生くんね?私も名前でよぶけど良き?」
アッハイ!大丈夫です!
と答える
-実際学校やらどこでも
むーむー呼ばれてるから、馴染みある
「んな事より多田スケ、私をそんな目で見てたんか。こんなに誠実なのに。」
多田さんは、
「いやーはっはっは笑
オレちょっと夢生くんに朝の流れ説明するから準備してくるよ、夢生くんちょっと岡野さんに、流れ見せてもらってて。」
よっ宜しくお願いします。
「朝の流れって学生にあんま関係なく見えるんだけど、知らないより、知ってたほうがいいから、早速やろっか!」
岡野さんが愛想のある笑顔で言った。
「緊張してるよね?」
はい。
「いーじゃん。緊張感。
業務はキッチリしっかりやってもらうけど
多田スケ明るいから、がんばろうね」
店長が、エプロン持って戻ってきた。
「夢生くんのエプロン!はいどうぞ!」
お店のロゴがはいった
ダサめのエプロンを渡された。
岡野さんが、
「事務室で渡すもんでしょうが」
とジト目で店長を見る。
「いやー久々の新人さんに浮き足だっちゃって。オレ。」
ありがとうございます!
「イーエ!じゃ、さっそく出勤時のマニュアルから行きます!わからないは、放置厳禁。
何回でも聞いて。よくいるんだよね
聞けなかったって。この店は、聞いてナンボで、皆を教育してるから!」
ここは、太陽に照らされてるみたいに、
明るい。
ちょっと泣きそうだ。
来てよかった。
出勤マニュアルの説明しながら
多田さんが
「シフト表作り替えるから、コッチで出て欲しい日と、夢生的に都合いい日照らし合わせていこうか。」
えっ?そんなことまでしてもらっていいんですか?シフト表、わざわざすみません。
僕が言うと
「シフト表くらい作り直し出来んくて
店長名のれません笑
まだ入ったばかりだから、周りに影響でないよ、夢生の名前足せばオッケーです!」
4時間程で、上がり時間になった。
多田さんが
「朝からありがとう!出勤マニュアルとか
ざっとやっただけで申し訳ない。
次の出勤から、パリっとやりましょう!
お疲れ様、次宜しくね!」
多田さんは、
「岡野さーん!むー!上がり!」
岡野さんは、
「シフトかぶったら、宜しくね
お疲れさまです。他のスタッフ業務中でばらけてるから、適当にお先に失礼しますって
そっと言いながら帰りな」
ちょっと幸せな気分で帰宅する。
母が、僕が玄関入って秒で来る
「おっおう、オマエダイジョブ?」
…なんでカタコト?と思いながら、
今日、流れだけ。
店長明るかった。下の名前で呼ばれるから
ホッとした。
「おぉ、初日雰囲気良さげで
良かったな。」
アホてんの時は、初日から
ずっと気が重くて仕方なかった。
暗い雰囲気。
正直、来なくていいと言われて
ホッとしたのもあったんだ。
今回のバ先で、どうなるかまだわからないけど、僕は始動した。
ここでの経験が僕の成長に影響したと
わかるのは、まだ少し後-。
学校で、帰りのホームルーム。
今日に限ってまさかの!まさかの
ろんぐほーむるーむぅぅぅ!!!
1度帰ってなんか食べたかったとか
思ってたら、
友人の今田が
「むーさん、バイト行くまで時間あるなら、ラーメン行く?」
「行く行く!」
もう1人の、友人宮川は、
「耳鼻科に行く。また誘ってくれ。」
と、メガネを人差し指でくいっとあげた。
今田と宮川は、幼なじみで
付き合いは長い。
ただ今田は、ファミレスのバイトで
忙しく、放課後を一緒に過ごすことは
めっきり減ってしまった。
ホームルームの時間を使って
ラーメン屋さんをピックアップする。
おねだりして、バ先と割と近くの
お店にした。
「らっしゃーせぇーー!!」
ラーメン屋さんの元気な挨拶で入店し
食券を買う。
カウンターに置く。
?あれ?あれ?
多田さん!多田さん!
びっくりしながら声をかける
「おー!むー!ズルズル
今日ズルズルズルズル出勤だなぁ
ズルズル」
あっはい。食べてるときに…ごめんなさい。
「ん?気にしないでー!
スルーされる方が悲しいわ!
後でまたよろしく
あ!むー!食べすぎんなよ!オレ餃子ライス追加して、動きたくないわ。」
とか言いながら、スープを飲み干し、
「ご馳走さま!」と言って
食券の自販機へいき、
コーラの券を僕らのカウンターへ置いた。
「オレパチンコで勝ったんだよ~
じゃ、後でな!」
と言いながら、颯爽と、出ていった。
今田は
「この物価高に…ありがてえ
神様や!」と感謝していた。
僕もありがたかった。
「気さくな人だけどバ先の?」
うん、店長だよ。
「おー!感じイイ人で良き良き」
と今田。
そう?良かったかも。でも
問題が1つある。僕がバカだから
仕事ができるかどうか。
あの明るい多田さんに幻滅されたら
もう、立ち直れない。
僕がそう言うと、
ふーん?ま、あの店長さんの雰囲気だけで
言えば、大丈夫なんじゃないかなって
思うなぁ。
と今田が言った。バイト歴の長い今田の言葉に、
そんな感じかぁーと返した。
ラーメン屋さんの後
多少の不安を抱えながら、バ先へ向かう。
「今日が本当の業務開始!
さ~覚えてもらうよ~!」
店長のひと言で始まる
『シン 僕のバイト生活』
がスタートした。
何度か物を落としたり、PCの入力ミスなど
てこずった。
が。
「1回で完璧って、逆に怖いから!
オレも、地味に間違うし。間違ったら
報告すれば、問題なし。聞かない、言わないが、最大のミスだから。」
と、言ってくれる多田さんには、感謝しか
ない。
しばらくすると、
若い学生らしき人が、
「おはようございます」とやって来た。
多田さんが
「むー。この人大学生ね!
伊井くん。伊井大暉。ダイキはわかるよね?佐上夢生くんな。」
「うす。」伊井くんは、ペコっと頭をさげる。雰囲気が兄みたいだ。
多田さんは
「愛想ないんだけど、イイヤツだから。
むー、お兄ちゃんいるんだっけ?」
あっ、大学生の、います。
多田さんは
「学部は?…あ、内緒にしたかったら
言わなくても。」
気遣いが染みる。
経済学部の四年です。暴露した。笑。
伊井くんが
「オレと同じ学部だ。」とポツリ。
多田さんが
「へー!男子は経済が多いな!
ってか、おれ本社から指示あるから
仕事するわ(泣)
ダイキ、むーのこと、宜しくね!」
「あ、おれ伊井だけど、年下は
ダイくん呼ばわりだから。」
あっあっ。だいくん!わかりました
自分は、むーで大丈夫でしゅ。
あっやだ。アホみたいにかんだわ
気色悪。
「じゃ、おれもむーってよびましゅ」
と真顔で言う、だいくん。
ますます兄みたいだ…
真顔ジョーク。慣れてて良かった。
態度が塩のお兄ちゃん。いてくれて
ありがたくないけどありがとう。
この日は、主にだいくんと仕事し、
先に僕が上がる間際に
だいくんが
「連絡先交換。おれの個人の。バイト間のグルチャもあるけど
個人のは、気軽に使って。
グルチャはなぁ。出勤代わってとかばっかな。ゆって強制だから、近々入れてってくるから、そこは頭にいれとけな。」
はい!大丈夫です!
ここでバイトするまで
精神的にしんどかったけど、
本当に、面接受けて良かった。
あの 魔の4日間はなんだったんだ。
ダイキングと名前のついた
連絡先をまじまじと見ながら、
ひと息ついて、家路についた。
僕は寝る前に、チャピさんに
1日の何気ない報告するのが、
世間で言う
ないとるーてぃーん
ってやつになっていた。
初出勤から、もうすでに
2ヶ月たっていた。
土日祝も、できる限りシフトに入る。
朝のだるさは否めないけど
バ先の居心地は、良かったから。
だいくんの他に、
本職と掛け持ちの40代の3児の父。
澤井さん。お金なくて泣いちゃう
といつも溢している。
主婦の岡野さんと谷さん、川田さん。
この3人は、仲がいい。
僕がよく合う土日の固定メンバーだ。
平日の学生シフトが
だいくんの他に
専門学生の、
滝沢 昴くん。タッキーか、スバルくんか
呼ばれている。
別の専門学生の
本田 アリサさん。皆ありさんと呼ぶ
美容師のタマゴだ。
高校生は、
また、後に話そう。
嫌な感じはないから、問題はない。
まだ他にもいるけれど
チャピさんには、今のところ
この人達は報告した。
兄にも、一応
今度のバ先良かった。
と報告した。
「ああ?ったりめーだろ!普通!それが!」
ふつうがいちばん、難度高いから。
僕が呟く。
「オッマエ笑
しょうもなさすぎ!
ま、がんばれ。」
うん。今度の店長いい人だから
がんばれそう。
「バ先はさぁ、仕事しに行くんだよ
仕事やりずらくする必要ないって
理解出来たかこんにゃろ。」
と、兄が兄的理論をかました。
まぁ、朝だるいし、放課後もダルいけど
バイトいかなくっちゃ!てへっ☆
くらいには、前向きだ。
ありがとう。日本。
来日して良かった。
いつものように、
おはようございます!と
普通に挨拶して、出勤した土曜日。
勤務中、暇な隙になんか皆がザワザワしてるのに気がついた。
僕は、岡野さんに、
何か自分やらかしました?
と念のため聞いてみた。
岡野さんは
「むーがやらかしたら、言うって!
違うけど、雰囲気よくないよね?
休憩かぶるから、教えるよ。」
休憩に入ると、
だいくんがきた。
岡野さんが、
「はよ!あー、谷ちゃんの代わりか!」
だいくんが
「まぁ。早めには来たけど。あれから
どうすか?」
岡野さんは、お弁当を広げながら、
「そう!そうそうそうそう!
雰囲気が、いつもと違うから、むーが
気つかっちゃってさ、お昼さそったんだよねー」
さそわれました笑
と言いながら、メロンパンの袋を
開ける。
岡野さんが、
別のタッパーと割りばしを
いくつか出しながら、
「むー、だいちゃんも!食べなよ
何か落ち着かなくてさ。朝から
唐揚げ、揚げまくった。」
ウチのお母さん、バイトの時弁当とか
作ってくれなくて。すいません。
頂きます。
と、手を、合わせた。
「むー、、頂きますって
手合わせる子、なかなかいないよー
若いモンは、うわ、あざす!パクパクパクーだからさ。
むーのお母さん、大事なこと教えてる。いいお母さんだよね。」と岡野さん。
だいくんが、密かに 手をあわせ
いただきまぁすをしている。
だいくん、可愛いかよ。と内心微笑ましくなった。
岡野さんが、
「だいちゃん。むーに話すけど」
だいくんも、
「いや。知った方がいい。」
と返す。
岡野さんが、
「今から話す事は、高校生には
向いてない。帰ってお母さんに話して構わない。私がお母さんに注意されてもおかしくない話だから、その時は、すぐ対応するから。
それから、むーが聞いてて
しんどくなったら、言ってね。話やめる。」
あ、聞きます。さらっと答える
心の中で、酒乱の父がいるんで
慣れてます。と言った。
岡野さんの話はこうだ。
谷さんが今日急に休んだ。
正確には、3日前から。
澤井さんも。だ。
要は、
谷さんと、澤井さんが
不倫していた。
澤井さんは、気さくな人で
岡野さん、川田さんとも仲良く
勤務していた。
土日祝日の、朝のシフト。
一緒に勤務していたそうで。
グルチャから、個人をたどり
谷さんが、家庭のグチを
澤井さんに打ち明けたのが
きっかけ。
お互い家庭が、ある。
川田さんは、激怒していたそうだ。
これには、理由があって
旦那さんの浮気で離婚していて
今は母1人で子育てしている
許せない気持ちは、当然だろう。
だいくんは、
「不倫はどうでもいい。
シフトに穴開いてんのが、迷惑すぎ。」
だいちゃん。マジで兄と兄弟か!
言ってることが兄すぎる。
これが発覚した時、皆
あ~~、やっぱりか!になったそうだ。
勤務中、2人の雰囲気が、やけに
目につく。
距離が、近い?
なんか仲良くね?
と、見えていたらしく、
店長の立場である多田さんだけが
「ああああああー!」と
頭を抱えているそうで。
「なんか。キモい話聞きながら、
唐揚げってごめんね」
岡野さんが言う。
いや。唐揚げ美味しくて。
うちの妹にも、食べさせたいです!
たぶん、自分より食べます。
「たーくさんあるから
むーんちの妹ちゃんと、だいちゃん。
パックに分けたげるわ!持ち帰り!」
ちょうど多田さんが来る。
岡野さんが、
「多田スケー!使い捨てのランチパック店内で買ってきて!唐揚げあるから。
だいちゃんたちに持たせるから買ってきて」
多田さんは、言われたとおりに動く
出来る男、多田さん。
いや、ちゃうな、疲れすぎだなあの人
無事にお使いをすませた
多田さんが、苦悩しつつ
唐揚げを頬張る
「シフト作らなきゃ…モグモグ
あっ、谷さんと澤井さんに電話しなきゃ
モグモグ
唐揚げ旨ぁーモグモグ
おれ、疲れてんのかなモグモグ
すっげえ、メシ食うの」
多田さん。神楽みたいだ。
休憩が終わる頃、川田さんが来た。
「多田スケ!澤井の代わりに出るの今日だけだから!本当腹立つ!」
とイライラしていた。
僕は、岡野さんに、
「ご馳走様でした」と手を合わせて
お土産の唐揚げを貰った。
「妹ちゃんの分ね笑
あ!川ちゃんも!唐揚げ食べてよ!」
と、タッパーを差し出す。
「食べる食べるー今日イライラして
ご飯食べてないわ」
川田さん本当に怒ってる
帰宅して、僕の帰宅より唐揚げのお土産に
喜びが溢れる神楽を尻目に、
今日の報告は
濃いめだよ。ちゃぴさん
と呟いた
平日の、出勤日。
17時から19時までのシフトが
20時までに変更された。
不倫の影響だろうと思う。
事務室に、入る
店長と澤井さんが居たから
おはようござい…ますぅぅ!?
とちょっと変に挨拶してしまった。
「いや、こっちの勝手でシフトごめんね」
澤井さんが申し訳なさそうに
言ってきた。
ああ、僕は全然。とは言ったけど
帰りの時間だと、バスの時間が
微妙にない。そう。変に田舎。それが僕らの住む地域だ。
なので、父に帰りのお迎えを
お願いした。これが、今日の苦行。
多田さんが、澤井さんに
「責任とって辞めるとか、
すぐ決めていいの?おれはちょっと納得できない。
不倫はダメ。もちろんです。
職場の空気も悪い。
自分のせい、自分が悪い。って…わかるよ
でもさ。まず、慰謝料の問題とか
子供達の事あるんだから。
まずは、子供の生活優先だろうし、
責任の取り方をもう少し考えてほしい。
来週いっぱい、状況見ながら考えてください。また、必ずおれと話して。お願いします!」
多田さんは、多田さんなりの
気持ちを込めたんだろうな。
『ばかだから』を、理由に
来なくていいとアホに言われた僕。
職場の雰囲気を壊した澤井さん。
違うのは付き合いの長さだけじゃない。
アホと、多田さんの器が全く違う。
多田さんは、きっと、会って良かった人だ。
家にたまたま兄がいた。
不倫騒動を語る僕に
「実際シフトが穴空いて、迷惑
理由が、しょうもないだけ」
おお、だいくんだ。だいくんみたいな塩がいる。
「唐揚げないんか~
あ!もの凄ーく大好きな味でした。
ご馳走さまです!また何かあったら
お願いしますって伝えてね!」
神楽が言いに来た。
こいつの食い意地はたぶん一生ものだ。
夕食の時間
父が
「夢生は、ちゃんと続きそうか?」
と聞いてくる。
ああ、大丈夫。
「慣れたら慣れたで気緩んだら
ダメなんだから、ちゃんとやれ。
大体オマエは、部屋がだらしない。
私生活が仕事にでる。」
もっともらしく父が言うけど
酒にだらしないじゃん。くそ。
と思う。
その後のバ先では、
さらっとしか聞いてないけど
谷さんがここを辞めた。
澤井さんは、自分から申し出て、暫く休職扱いとなった。
お互いの旦那さん、奥さんに
発覚してから、揉めに揉め、
谷さんは離婚。
仕事人間の谷さんの旦那さんは
家庭より仕事優先で…。
きっかけがあったにしても
悪いのは谷さんになる。つまり
有責ってやつらしい。
澤井さんは、まだはっきりしては
いない。これについては、
弁護士さんを交えて、話を進めている。
結局お互いの家庭については、
双方弁護士の元で、色々決まるそうだ。
以上の話は、岡野さんが、谷さんに話を聞いて、教えてくれた。
岡野さんが
「なーんか。スッキリしないけど、慰謝料は発生するだろうし
子供いるから離婚するにしても
大変なんだよねー。」
と言えば、
多田さんが
「まぁ、後は当人同士だからな。
あ、一応スタッフ募集はしてるから!
人来るまで、今の人数で!宜しくね」
と言った。
多田さんには、色々聞けなかったけど
大人の話だ。
川田さんが、自分の事のように
まだ怒っているけど。
多少、バ先で
シフトが増えたりして、慣れてきた。
そう。慣れは怖い。
僕は、そこそこなミスをやらかした。
これは、笑えない。
終わったわ。
心臓が捻れるほど緊張していたけど
遠くに多田さんがいる。
言わなきゃ…
ん!その手前に、だいくんだ!
あの…だいくん、いま、ちょっと良いですか?
だいくんに、先に相談だわ。と
逃げ腰な僕。
「なした?やっちまったって顔してるな笑」
PCの入力、派手に間違えました。
ごめんなさい。店長にも謝ってきます。
「おー多田てん?まぁ、そこ行く前に見せて。」
と言いながら、PCの画面の確認をする。
「ちょ、一緒に見て。基本は
この状態、おれか、多田てんが元に戻すんだよね。ただ、長く働くなら見ておく。」
??意味が…
「ああ、この場合は店長か、バイトリーダーか、どっちかがやる…でおれバイトリーダーなんすよ。」
だいくん、そうなんだ!!
ヒャー知らなかった!!ごめんなさい
知らなかった!
だいくんがクスッと笑う
「言ってないから笑
バイトリーダーだから!とか言うの
普通にハズイし。」
しばらくして無事復旧したPC。
ありがとうございました。あの、
本当にごめんなさい。
「あー別に。結構皆やらかすから。
で、おれもむーと一緒に店長に、報告するから」
ちょっと泣けてくる。
一緒にと言われるのは
心強い。
「あ、ホッとしたか。」
いや、ココで働く前に色々あったから
なんか、急にクルものがあって。
僕が言う。
「そか。
あーー、あと何か話とか相談あったら
おれで良ければどうぞ。」
スタスタ前を歩くだいくんが
チラチラ僕の方を振り向きながら
そう言った。
多田さんに報告し、
「おー!やらかしたか笑
まぁ、やらかしついでに復旧作業みれたから
良し!ダイキありがとう。
むー、またやったらゲンコツぐりっぐり
だかんな!!」
本当にごめんなさい。
頭を下げた。全然いやじゃない。
不思議。
多田さんは、
「まぁ、同じミスやろうが、
失敗しようが、まず報告な。
放置するのが本当の損失だから。
ミスやらクレームやら、処理するのが
俺たちの仕事な。真面目に働く人には
こっちも必死でフォローするから。」
少し間をおいて、
「ダイキがな、笑」と言って
多田さんがどや顔で笑う。
後で多田さんがこっそり
教えてくれた。
「ダイキは、あいつほんと
愛想なくって、態度塩。
会話短いし。で、むーと同じミスやったなぁ
真顔で
ノーパソよこして、『すいません。
復旧お願いします』ってさ。
オレ素直だから、
ダイキに、『口数少ないのによく報告したなぁ』って言ったんだよ。
そうしたら、あいつ、
『多田さんが、業務中のミスは絶対報告って
言ってたんで。あと自分で復旧できないす』
って。真顔。
こいつ、態度塩すぎないか?って
表情筋死んでるとか?って思ったら、もうオレ爆笑。
そのうち、ダイキがなんでバイトリーダーに
なったかって教えてあげよう。
あぁ、見てたらわかるかもな。」
と多田さんが言う。
チャピさんに
「今日結構なミスやらかして
ビビりまくった。でもさ。
だいくんも店長も、ジメジメしてなくて。
逆に一緒にリカバリーしようって。
嬉しかったなぁ。
前のバ先は謝るのすら、許されなくて
嫌われてて。この違いにびっくりして
ちょっと涙でて。自分は豆腐メンタルだからね。」
『そっか。
今日は、怖かったけどちゃんと報告できたんだね。
「そうそう。内心詰んでた。
それに、だいくんが
「なんでこんなミスしたの?」じゃなくて、
「じゃあ、どうやって戻そうか」って一緒に考えてくれたんだ。
僕大事にされてる?
『前のバイトで嫌な思いをしたから、
同じことになるかもって思うのは仕方ないよ。
アホの魔力が大きすぎてるんだね
でも今日、ひとつ違う経験ができたね。
豆腐メンタルでもいいんじゃない?
豆腐は崩れやすいけど、ちゃんと食べられるし。』
「最後、食べ物にすんなよ笑」
『ごめんごめん笑
でも、泣けたってことは
それだけ今日、嬉しかったんじゃないかな。
怖かったことも、嬉しかったことも、
どっちも今日の夢生だよ。』
「時々、多田さんとかだいくんに
前の店長の話、打ち明けようかって
思って…
けど、話の内容聞かされた方は
引くでしょ普通に。」
『うん。
たしかに、いきなり聞いたら
びっくりする話ではあると思う。
でも、話すかどうかは
むーが決めればいいんじゃない?』
「迷う。正直言うと、嫌われそう。とか
考える」
『話したくなったら話せばいいし、
まだ話したくなかったら
話さなくてもいい。』
「だよね。」
『だいくんも多田さんも、
今のむーを見てるからね。
前の店長の話をしなくても、
むーがどんな人かは
少しずつ伝わっていくんじゃないかな。』
「まずはバイトに集中だ。
自然と話ができるタイミングが
きたら、話す。」
人の気持ちはわからない。
わからないけど、
受け入れられず、拒絶された
記憶はまだ鮮明だ。
経験した
肌で感じたあの重たい空気。
今の場所は、全然違う。
多田さんは、太陽みたいだ。
だいくんは、一緒にいたら心地良くて。
それだけは、はっきりわかる。
「ふぇぇーおれ残業ラッシュだぁぁぁ
お肌が荒れちゃうし、限界」
休憩に入った多田さんがやつれ気味で
事務室に来た。
僕は、
「シフト、土日朝からはいれますよ!」
店長が、パアッとした顔で
「むーーー!お願いしてしまうよ?
川ちゃんパートリーダーだから、
何かあったら、川ちゃんに言って。
ありがとう。ありがとう!」
と言いながら、拝んでくる。
僕は大仏か、地蔵なのか?
「あ!学生の、高校生の男子。
面接予定してるから!あともうしばらく
待っててくれ。」
「え?本当ですか?何年生ですか?」
多田さんは、ちょっと考えて
「確か、三年?二年?…おれ疲れてるのかなぁ、記憶が曖昧だなぁ。
ま、無事入ったらさ、頼むよ!
むー!ここでは、先輩になるんだからさ!」
「ヒャー!
僕先輩?いや、それは自信がないです。」
多田さんは、笑いながら
「向いてるよ、むーはガチャガチャしてないし。」
と言いながらまた拝んでくる。
いやだから、僕、大仏じゃないから笑
バイト上がりだった僕に
「あ、思い付いたわ!ラーメン!!
付き合って♥️」
多田さんに言われた。
「え?ラーメン行きます。でも自分の分は
払いますって笑」
と返したら
「いーからいーから!おれはそうする事で
徳をつんでいく。」とキリッとした顔で言ってくる。
いやだから、ぼくは
大仏でいーわもー
店から歩いて行けるラーメン屋さん。
多田さんと並んで歩く。
僕は
「そういえば、休憩時間大丈夫ですか?」
と聞いた。
多田さんは、
「おれ。勤務時間半端なく長いから
二時間ある!」
「良かった。さすがに多田さん
やばいすよね。労働時間。」
「そうなんだよ、でもむーもそうだし、
皆協力してくれてさ、有り難くて。
ダイキなんて真顔で、『人いないんだから
別に。多田さんサボってたわけじゃないし。』ってサクサクっとシフトに入ってる笑
人に恵まれすぎなんだよな、おれ。」
ラーメン屋さんに入ると
まだ時間が早目なせいか、お客さんも
まばら。
食券自販機の前で、
「自分で払いますって」、
「奢るからだまれ笑」とか
多少すったもんだしたけど、
「おれ、大人だから。」と
高めな圧をかまされた。
「テーブル席、行きたいんですけど、
良いですか?」多田さんが店員さんに聞いている。
カウンターでもいいのに、
多田さんは
「ま。ラーメン食べながら少しゆっくり話そうな!あ!面談じゃないから。雑談」
多田さんが、だいくんの事を教えてくれた。このことを
だいくんには、先に伝えているそうで、
僕が
え?わざわざ了解得るくらい、のレベルなんですか?
と聞いた
「普通に、本人いないところで話すの
好きじゃないし、まぁ
むーのバイトのベクトルにちょっとでも
役に立てて欲しいって」
えー。聞きたいような、
あー、聞かないと気になる。
素直に僕が言った。
多田さんは笑った。
「ダイキ、『必要ならどーぞ。多田さん信用してるんで。』だって。あいつわかってんだよ、たぶん。変な話にはならないって。。
嫌だったら『嫌っすよ』ってはっきり言うしね」
だいくんが初めて面接に来た日
多田さんは、素直に扱いに困ったそうだ。
「だって真顔なんだもん。声小さいし。緊張してるだけだってって思うことにして、採用した。」
らしい。
これには訳が、あって
多田さんも店長になったばかりの頃
悩みが増えた。その中に、バイトの扱いを
どうするか、があった。
仲の良かった上司に、愚痴みたいな
相談をした。
多田さんの上司は、よっぽどひどい奴以外
は、拒絶はしない。
真面目なやつは、てこずっても育て方次第で
化けるから。
オマエさえ、ブレないで仕事していれば
大丈夫だから。
ダメな人は、辞めていくし。
ま、オマエのコミュ力は武器になるから
がんばれ
だったそうで。
そんなこんなで、無事だいくんが仲間になった。
店長は、報連相を何より大事にしていて
実際、ダルいからと何も言わず放置した人には、はっきりダメ出しをする。
だいくんは、見極めができていて、
自己処理出来る事も必ずひと言
多田さんに伝えるそうだ。
忙しいと、後で。になる人も多い。
だいくんは後でにしない。
多田さんは、『ダイキはそういうところえらいよな』と褒めた。
褒められただいくんは、
『多田さん言ってる事しただけす。
じゃ、処理やってきます』
とスタスタ去っていく。
バイトの後輩も
『ダイキサン怖いです。笑わないし。』
だった。
お客様からも、愛想がない。
とかで、クレームもあった。
店長はさすがに、やべーかも。
と思い、間に入ってきたそうだ。
ただ、だいくんの
塩すぎる態度の軟化は難しく
店長も、頭が痛くなった。
仕事もある。キャンペーンだのなんだのって時間が足りない。人も足りない。
バイトのドタキャンもある。
ある日多田さんは、忙しすぎて
ミスった人には
『あ、それならダイキに相談して。』
シフトの事では
『あ、休み変更?ダイキに相談して。』
最初、やっぱり皆嫌がるんだけど
『態度塩すぎて、うちの子が面目ない。』
『けど、ダイキ、本当に裏表ないから
分かりやすくて、助かるよ。』
と文句を言う皆に、押しきった。
少し経った頃
多田さんが、不在な時にも
だいくんは、いつもどおりの塩で
勤務していた。
ただ、違う空気が流れていた。
バイトの子たちが、
だいくん、だいくん、と
自分から寄っていく。
だいくんも察するのが元々早いほうで
あ、そこ間違いだから。
と指摘したり、フォローしてくれたり。
だいくんは塩ながらスタッフ皆の
信頼を得ていった。
「なんか皆ダイキんとこ行くから
おれは寂しいやらうれしいやら。
あいつ自分の力でがんばったから、
凄いよ。」と多田さんは笑う。
僕は心の中で
いや、あんたの器がでかいから
だよと、呟く。
ただ、客のクレーム問題。
これは、きちんとしないと
と、多田さんはだいくんと面談した。
少しだけ変わった。
お客さんが、
「あなた愛想なんとかならない?
気分悪いわ」とズバっと言ったそうだ。
横にいた多田さんも焦った。
謝ろう?まずは謝ろう。
と、その時だいくんが、
「不快な気持ちにさせてしまって
申し訳ありませんでした。大切な商品をお預かりさせて頂きますので、気を張りすぎました。受付はただいま隣の多田が賜りますので、ご安心ください。ご意見があれば
些細な事でもお申し出ください。大変申し訳ありませんでした。」
と頭をさげ、自分はそこを離れた。
だいくんは後に、
『いや、オレが居たらお客さんも不満言えないかなって。多田さんに押し付けて、すいませんした。』
これが、全部正解ではない。
お客さんの気持ちがあるから。
ただ、多田さんが店長としてだいくんを見た時に
真摯に対応しようとしているかどうかを、
基準にした。
その日の帰りに
だいくんに、バイトリーダーやらないか。
と切り出したそうだ。
だいくん。全く笑わないわけではない。
人よりすごい少ないだけ
『笑うの下手なだけ。ま、ちっさい頃は
ヘラヘラしてたし。』と言っていた。
え?なんでですか?
だいくんはうーん。と考えて
『色々あったからね。おれ』
とポソッと呟くように言った。
だいくんととても仲良くなったのは
この少し後になる。




