青春と呼ぶには
「凪!! 俺、凪のバンドでギターやりたい!!
ギタリスト探してるなら、俺にしてよ!」
嵐がそんな事を凪に言ってきた。
凪は、少し困った。
「嵐、自分のバンドどうするの? 掛け持ちは
難しいよ?」
嵐は、ニコニコ全開で
「ああ、それなら心配ないよ。バンドって
お金掛かるから、今皆金もたないってやめてるし!!
凪困ってたじゃん!!ねえ、お願い!!」
嵐はこうして、
BLUE RIOTのギタリストになった。
凪と言えば、嵐にギターを教えた張本人で
ギターの腕前を認めていた。
話はスムーズに決まった。
小野寺さんは、遠い目をしながら、
「夢生のストローク、荒さはあったけど
嵐にそっくりだった。ドラム叩きたくなった。」
と静かに言っていた。
「教えたのが、俺だからね。そうなるよ
夢生に、嵐のようなギタリストになってほしいなんて思ってないんだよ、夢生は夢生のギターをやってほしいから。」
凪さんが静かに言う。
あぁ、凪さんは僕個人を見てくれている
なんとなく思った。
だって。僕が教わったのは
凪さんのギターだから。
だからこそ。
嵐さんにそっくりに弾けてたなら、
嬉しいです!
「あの頃、懐かしいよね~
バンドは絶好調で。多田くんなんて
ライブハウスの手伝いしながら、
リハも見てたから…あぁ、だから。だから
多田くんが 気付いたんだよね。」
凪さんが静かに言う。
「いや、隣にいたらわからなかったんじゃないかなぁ。俺フロアから見てたから…」
リハの時。まだフロアの証明が明るかった。
多田さんは、
BLUE RIOTが音の調整をしている様子を見ていたが、ふと気になった。
休憩に入った嵐に駆け寄る多田さん。
嵐が心配で、声をかけた。
「嵐、熱でもある? 調子悪いんじゃない?
顔色悪いからさぁ、俺心配なんだよ。
凪さんには、体調悪いって言ってるの?」
嵐は、
「ああ、最近作曲楽しくて。寝不足なんだよな! 大丈夫! 優太、心配いらないから!!
凪もうるせーの。ちゃんと休めって。」
と笑っていたが。
多田さんは、この時
妙に引っ掛かっていた。
嵐が
授業中、よく寝るようになった。
体育の時間。
いつもなら、多田さんとはしゃいで
うるさいくらいの嵐が、
「調子悪いから。」
と、見学するようになった。
作曲のための寝不足なら、違うんじゃないか。
顔色がよくない。
何回も嵐に聞いた。
嵐は大丈夫しか言わなかった。
ある日、嵐と多田さんの2人は
授業のために移動する教室に向かうため
廊下を並んで歩いていた。
「面倒くさいから、俺保健室いこっかな。
優太も行かね?」
嵐が疲れた顔で言った。
多田さんは、嵐を1人で行かせたくなかった。
「おー!行く行く」
なんて言った時だった。
嵐が、多田さんに体を預けるように
倒れてきた。
多田さんは、とっさに支えた。
嵐の顔色は、真っ白だった。
支えた嵐の体は、細かった。
呼びかけても、嵐は答えなかった。
多田さんの首筋に冷や汗がつたう。
多田さんは、震えながら叫ぶ。
「誰か! 救急車呼んで! 先生もよんで! 頼む!!」
いつもの学校の廊下の景色が
一変した。
嵐、どうしたんだよ。
やがて遠くから聞こえる救急車のサイレンの
音。
「優太!! 後は先生が嵐についてるから、
教室に行きなさい!!」
多田さんに聞こえる先生の声。
それでも。多田さんは嵐から
離れなかった。
救急隊員が来るまで、多田さんは
周りの声も、ざわめきも
関係なかった。
多田さんが、人を大切にしている
原点がもしかしたら。
嵐さんだとしたら。
僕は、多田さんの顔を見れなかった。




