縺れた糸。
宮川が、「えっとー、優しく優しく…」
ライブハウス開店前、ブツブツ言いながら
ケーブルを纏めていた。
音響スタッフで責任者の
小野寺さんが近付いてきて、
「タクミん!!おまえ、今日俺につけ!
凪さんからおまえを預かった!!
立派な音響スタッフに育ててやるからな!」
と言って豪快に笑った。
宮川が、ちょっとブルッと震えた。
小野寺さんの怒号がいつもフロアに響くからだ。
「あの、多田さん、多田優太さんご存知ですか?」
ためしに小野寺さんに聞いてみた。
知っていた。が、今は忙しいから
「夢生!すまん。タクミんは音響の嫁にもらった!」
うっ、うちの子を宜しくお願いします。僕は頭を下げた。
小野寺さんは、緊張でカチコチになった宮川を
つれて行った。
僕は1人ケーブルを巻いていた。
後ろから、
「夢生~。多田くんの店でバイトしてるんだってね、びっくりしたよー」
凪さんだ。
あっ、凪さんおはようございます!
って、多田さんですか?
「そうだよ、夢生ここ以外のバイト辞めて
もらって、フルでどう?って
こっちに誘うつもりだったけどね」
えっ。僕をですか?
「そうだよ~。でも多田くんの所なら
辞めてなんて、言えないよ~。多田くん、
大型犬みたいでしょ。周りの人を明るくさせて。」
あっ!多田さん今でもそうですよ!
昔から知り合いって位しか聞いてないから。
凪さんと多田さんの若い頃の話、
聞きたいです!!
「んー。そう言えば多田くんから僕に
連絡きてね、来週RE:PLAYのライブにくるって
その後、夢生も一緒にご飯でもいこうか。」
はい!!
「オイコラ夢生!!リハの準備いそげ!!
凪さん!!遊んでないで仕事しろー!!」
音響の小野寺さんにマイク越しで
叱られた。
「あーあー。仕事するかぁ。あぁ、今日ギターは?」
持ってきてます!
「終わったら、バーにおいで。ギターコード
教えるから。」
凪さんはそう言って仕事に戻った。
「今日、タクミんから指示とばすからな!
手順俺が横につくから。ほら、タクミん
何か言え。」
「あ、あの宮川拓海です。どうぞ宜しくお願いします。」
「タクミん、かってーな!!ま、いっか。皆頼むぞ」
フロア中に、小野寺さんと宮川の声が
響いていた。
そんな中だったけど
僕は、凪さんにいつか聞きたい。
譲ってくれたフェンダーの過去を。




