ライブハウス「REBELLEルベル」へ 。
「ぎゃー!むー!!ちょっとまってー」
僕のバ先の事務所では、多田さんがのけぞっていた。
一人暮しのアパートは距離が少しある。
車があればなんて事ないけど、
僕には車どころか、免許もない、
多田さんが、僕を何とか引き留めようと、
「なんとかならない?完全に辞めるまでいかなくても、ホラ…。」
なんて、提案をする。
実際、まだ次のバイト先は決まっていなかったから、
妥協案として、在籍の形にして貰った。
一番最初に行ったバイト先、あれは
なんだったんだろう?と思える位
明るくて、寛大な
多田さんの元で働く事は、居心地がよかった。
時々注意されても、嫌じゃなかった。
多田さんとの話が終わると、宮川と待ち合わせをして、ライブハウス「REBELLEルベル」へ
行った。
ドアを開けると、思っていたより静かだった。
「……ここ?」
目の前に、誰もいない客席が広がっている。
ライブハウスというから、もっと騒がしい場所を想像していた。
でも今は、ステージに誰もいない。
壁際にはアンプ。 ステージの上にはドラムセット。 床には何本ものケーブルが這っている。
壁には、過去のライブらしいフライヤーが何枚も貼られていた。
その一枚を眺めていると、
「まだ開演前だからな」
少し掠れた声の人が僕達に声をかけてきた。
振り向くと、男の人が僕達を見ている。
その人が、僕と宮川の側に来て、
「君達、優太の紹介の子だね?
僕は、ここのオーナーやってます。
海原 凪です。」
宮川が
「優太くんの紹介で本日伺いました、
宮川拓海です。宜しくお願い致します。」
と、お辞儀をした。
「おっ同じく、田口優太くんに紹介して貰いました、佐上夢生です。」
慌てて挨拶をした。
海原凪。
髪は肩位かな?
その髪を無造作に1つに束ねていて、前髪はセンターに分けていた。
緩くて大きめのパーマがかかっていて、
お洒落に見える。
首と手首から少しタトゥーがチラッと見えて
いて、ピアスはおそらく片耳に3個はつけている。
僕達が、関わる事が無さそうな
カッコいい大人。
海原さんが、笑って
「優太が、真面目そうなメガネが2人行くけどよろしくねーって。」
真面目そうなメガネ2人は
ゆーたコンニャロ!と思いながら緊張していた。
「ライブの日は、ここから別の場所になる。
同年代ががんばってるから、刺激になるんじゃない?」
海原さんの言葉に反射して、
僕はステージを見た。誰もいない。
別の場所かぁ。
不思議と目が離せなかった




