希望とは 2
春のバタバタも落ち着いた、ある日、
だいくんとゴハンの約束を
していた、その前日。
だいくんから着信がきた。
通話なんて珍しい。
電話の向こうで
『むー、ごめん。行けなくなった。』
とだいくんが言った。
別に気にしなくていいのに、と思いながら
あ、じゃ、また今度でいっすよー
なんて返した。
『ほんと、ごめんな。
…………バーちゃん、亡くなった。』
僕の心臓が、悲しく跳ねた。
僕ら多国籍軍は、
自宅に無言の帰宅をした
だいくんの祖母に会いに向かった。
お通夜は明日だけど、いてもたっても
いられなかった。
途中で買ったお花を手向け、お線香を
あげ、皆が、順番にそうして、手を合わせる。
だいくんの祖父とだいくんが
「わざわざ、ありがとうございます。
お茶、飲んでって下さい。」と
居間へ通された。
奥のキッチンに、ん?
兄だ。だいくんも、そこに行く。
年配の女性と、何やら話していた。
その人の顔に怒りが見えた。
僕は、手伝う振りをしながら
キッチンへ。
年配の女性は、たぶん…あの叔母だ。
会話の内容は
兄は他人だから、もう帰ってくれ。
家族葬だから、後は身内で済ます。
ダイキもその友達も常識がない。
などと、言っていた。
兄が真顔で
「別にあなたが決める話ではないし、
喪主に、許可頂いてます。」
と言い、
だいくんも
「文句なら、ジジイに言えよ。
てか、ジジイも、スカイにいてほしいって
こっちからお願いしたんだよ!
オバサン。」とツラッと言った。
オバサン、激怒。
口の端から泡出てる、汚いなぁ
ギャーギャーうるさい。
そして、だいくんにカナキリ声で
「あんたみたいな、孤児!!
周りに迷惑かけて育ったくせに!
何様のつもりよ!
出ていきなさい、今すぐ!!」
と叫んだ。
「出ていくのはおまえだ!!
バーサン死んだ途端、金の話ばっかり
しやがって!!出ていけ!2度とくるな!」
と、だいくんの祖父が、叔母に怒鳴りつけた。
荷物を慌ただしく纏めて
叔母が目をつり上げながら出ていった。
その後に、病院で荷物を整理してから
自宅に行き、
「いや~、自分の荷物、急いでまとめて大変だったよー」と戻ってきた叔父さん。
少しキョロキョロしてから
「あれ?ウチのかーさんは?」と聞いてきた。
だいくんが叔父さんに事情を説明した。
叔父さんは、だいくんと祖父に謝った。
叔母は、元々の気性も荒かったが
最近、精神的に不安定だった事。
息子が、反抗期を迎えたのは仕方ないが
家出や、補導を繰り返し、
現在は、彼女の家で暮らしている。
叔父は連絡を時々とっているが
叔母には、全くなかった。
叔父さんが、
「だいき。本当に申し訳ない」
と言ったが、
だいくんは
「いや、オバサンはオバサンで
勝手にどうぞって感じ。あの人に対して
感情が動かない。昔から。」と冷めていた。
だいくんの祖父が、
「スカラ君!
嫌な思いをさせてしまって申し訳ない!!
帰りたくなったら、こっちは大丈夫だから。」と言いながら頭をさげた。
僕ら多国籍軍で、んんん??と
引っ掛かった。
スカラくん。???
だいくんが笑いながら
「ジーさん、スカイな、スカイ!」
と優しい顔になった。
しばらくして、落ち着いたが
だいくんの祖父が、必死にスマホを見ている
「皆で食事でもどうだ?バーサン1人
置いていけないから、皆でどこか行ってきなさい」と祖父が万札を数枚出した。
が、『多国籍軍の自称調理担当』の
ゆーたが、
「Uber たのもーよ!おれ、だいくんの
ジーちゃんと、バーちゃんと皆で食べたい」
と、言い出したから
だいくんのスマホで
『ジーちゃんはじめてのUber に挑戦』
の幕が上がったのだった。
バーちゃんすきだったろ、って訳で
お寿司。
サイドメニューも色々沢山。
不謹慎きわまりないけど
バーちゃんの側で、ワイワイ騒がしく
楽しく。
途中、だいくんの祖父が線香をあげながら
祖母に、
「よかったなぁ、だいきがなぁ、こんなに
沢山友達ができて。皆やさしくて、なぁ、
ばーさん、だいき、心配いらないな」
と言って泣いた。
だいくんが祖父の背中を優しく撫でる。
兄が、だいくんの隣に行く。
ゆーた、こーき、タクミん、
イツキにぃ、そして僕。
皆寄り添う。
悲しみの中に、優しい時間も確かにある。
静かに流れる時間に包まれた。
突然
インターフォンが鳴る。
多田さんだ。汗だくだ。
仕事終わりで、飛んできた多田さんだ。
多田さんは、ゆーたから事情を聞き
やって来たのだった。
祖父と叔父に挨拶を済ませ、
祖母に手を合わせる。
物凄く大きな花束を持ってきていた。
「だいき!!辛かったよな、おれ、おまえが心配で堪らなくて」と泣きながら
だいくんを抱き締めた。
だいくんが、
「ぐえ」と声がもれる。
僕はだいくんの祖母に
『だいくんは、皆に愛されてます。
だいくんが、幸せな時間を過ごせますように
見守ってください。僕も、時々ここに
ご挨拶にきます。どうか、宜しくお願いします。』と、改めて線香に火を灯した。
その後、兄以外の多国籍軍と
店長は、喪服を取りに1度帰宅し、
僕の家に集まった。
我が家の会議室に、
多田さんが要るのが不思議だったが
皆、気にしてなくて、驚く。
多田さんは、
父には、お酒を、
母と神楽には、コンビニ限定のケーキを
いくつか持ってきていたから
歓迎されていた。
「銭湯いこ!!」と、ゆーた。
多田さんは、「おれ、シャワーしてきたから
むーのお父さんと飲むよ、てか飲みたい」
と言ったが、
ゆーたが「一緒に行く!」とゴネた。
宮川も、「多田さん、ゆーたはおそらく
多田さんとだから行きたいんだと思います。
諦めて、同行するのがベストです。」
と謎理屈をこねた。
僕はわかっていたんだよ、ゆーた。
多田さん、自宅で、シャワーを済ませて
いたんだから。
風呂上がりに、
多田さんは、ゴムの部分に、
『多田優太』
と書かれたブリーフを
田口優太から支給された。
こーきが太い声で
「多田さん!ブリーフ銭湯へようこそぉー!!」
と言い、
皆も「ようこそー!!」と元気に続いた。
多田さんの小さな悲鳴が響いた瞬間だった。




