星占いが当たった日へ行く
一行はナドラギルドを後にして、ナドラ大森林の深部へ向かった。
支部長の依頼により、ナドラ大森林の最も深い場所にいると思われる高脅威魔物を調査するためである。
そしてついでに、青年のカルニボアの奥歯収集クエストも一緒に完了するつもりだった。
レベル10の青年が、格の差が大きいS級冒険者たちと共に魔物調査へ行くというのは本来あり得ないことだが、S級冒険者3名の同意によって、青年には不本意ながら特例が適用され、同行している。
青年は内心、ついて行かずにナドラギルドで気楽に雑用をしながら、楽に金を稼ぐ魂胆があった。
しかし、S級冒険者たちをごまかすのにちょうどよい言い訳を思いついた頃には、すでに歩き始めていた。
「司祭が星占いとは。ふむ。見方によっては神聖冒涜ですね。」
結局、自分の境遇を受け入れ、ガードが話してくれた星占いの話について自分の考えを述べた。
「そうだ。しかし、あえて言うなら神聖冒涜というよりは名誉毀損罪に近い。」
ガードはエドの罪を一つ追加しながらうなずいた。
「もし名誉毀損罪なら、どうなるのですか?」
その言葉に、青年はふと好奇心を覚える。
「それもそうだな。少し考えるべき問題だ。刑罰を定めるとしても、エドに与えるべき適当な罰がない。」
ガードはこの問題について悩む。
「せめて、私のいないところで私の話をしてくれないか?」
エドは、自分の目の前で露骨に自分の話をしている二人に呆れた。
「私の経験では、陰口の方がもっと良くないですよ。」
青年が答える。
「司祭に陰口などない。」
ガードが言う。
「はいはい。さすがですね。」
エドは両腕を上げて降参の姿勢を取った。
一行があれこれと話しながらナドラ大森林の深部へ向かっている間、ナドラ大森林へ接近する高速飛行体が一つあった。
リレイアは、聖神ガブリドと古代魔女ロレラの信号が捕捉された場所、すなわちナドラ大森林まで、トラニア王国の首都ウルから一直線に飛んできたところだった。
「魔法呪文。エンジェル魔法。聖霊召喚。十二品聖霊。」
リレイアはナドラ大森林上空を旋回する魔物たちを見ると、まず呪文を唱えた。
「今日は少し忙しいので、お前たち雑魚魔物に構っている余裕はない。」
召喚された神聖精霊たちは、雑魚と呼ばれた魔物たちに光の矢を浴びせた。
魔物たちは跡形もなく、あっさりと過剰鎮圧された。
そしてナドラ大森林へ向かう冒険者パーティーの頭上に、空から貴重な魔物素材が大量に降り注いだ。
ある冒険者は、ばらばらと降ってくる魔物素材に当たり、頭にたんこぶができた。
だが空を飛ぶ魔物の素材は、その冒険者たちのレベルではまだ手に入らない貴重な素材だったため、誰一人として自分の頭のこぶなど気にしなかった。
ナドラ大森林の深部へ向かう青年たちの耳に歌声が聞こえてきた。
誰かが言ったわけでもないのに、一行はひとまずその場で立ち止まる。
青年は静かに歌声に耳を傾けた。
「どうも人が歌っているようには聞こえませんが。」
青年は敵に聞こえないよう小声で言った。
「そうだ。厄災の狂気が歌っている。みんな気を付けろ。私たちが来るのを待っていたんだ。」
そう言うと同時に、エドは剣を抜いた。
そしてエドの言葉が終わるや否や、正面から魔物の群れが現れた。
狂気に囚われた魔物たちが正面から迫ってくる。
「基本防御陣形。」
即座に一行は、エドが前衛、ベリアと青年が中衛、ガードとボンヌ、そしてロレルが後衛に立つ基本防御陣形を形成した。
緊張が流れ、一行は迫り来る魔物の群れに備える。
「ガブリド様!」
その時、空に響き渡る声があった。
そして光の柱が天から地へと突き刺さった。
地上に降りた光の中には、片膝をついて礼を取るリレイアがいた。
リレイアは驚くべき忠誠心によって、最初から片膝をついた姿勢のまま礼を保ちつつ垂直落下してきたのである。
しかしリレイアが地面に衝突した痕跡はない。
本来なら地面に立った瞬間、重力によって轟音とともに土煙が舞うはずだったが、リレイアの着地はそんな低俗な着地ではなかった。
姿勢を整えたリレイアの周囲では草一本乱れず、小さな塵一つ舞わなかった。
むしろ清らかな気配さえ漂っている。
リレイアが地に立つと、乗ってきたフェニックスは空に現れた魔法陣を通って消えた。
「え? 何だ?」
突進していた魔物の集団は、進行方向を変えはしなかったが、突然現れたリレイアを見て困惑した表情で彼女の方を振り向きながら通り過ぎていった。
魔物たちがリレイアの戦闘力を見抜いて避けたわけではまったくない。
ただ、リレイアの出現があまりにも突然で、彼女を敵と認識する時間すらなかったのである。
防御陣形を組んで迎え撃つ準備をしている一行へ向かう途中、リレイアの方へ首だけ向けた魔物のリストは次の通りである。
狂気のカルニボア:レベル30、20体
狂気のモルトリデン:レベル25、10体
狂気の吸魔カルニモルトリデン:レベル40、5体
「ガブリド様!」
「きゃああっ!! リレイア、あんたなんでここにいたの!?」
しかしガードへ向けたリレイアの叫びは、それより一オクターブ高いロレルの声にかき消され、一行には届かなかった。
そしてロレルは隊列を離脱し、慌ててリレイアのもとへ駆け寄る。
ロレルの無断離脱によって、フォーメーションは一瞬で1-2-2になった。
しかし、それ以外の登場人物たちは現在の状況に忠実だった。
「青年。準備はどうだ?」
エドは青年のレベルを上げるための作戦を、すでに青年へ伝えていた。
エドとベリアがまず魔物を攻撃して、その体力を10程度だけ残せば、青年がとどめを刺してその経験値を得るという作戦である。
今の青年のレベルでは、狂気に染まった魔物に傷一つ付けることすらできない。
だが、ガードとボンヌの攻撃魔法をバフとして使用すれば、青年の精神が耐えられる限り、狂戦士モードを維持することができる。
青年の微々たるレベルでは、本来なら狂戦士モードに耐えられる精神そのものがないはずだった。
しかし、青年が歩んできた道が平坦ではなかった関係で、他人にはない精神耐性スキルを青年は持っていた。
そのため青年は、この険しい道をしっかりと歩み続けることができる。
ガードとボンヌの攻撃魔法バフが青年へ炸裂する。
ボンヌの攻撃魔法バフ:
魔導魔法攻撃バフ。 肉体の苦痛レベルを上げ、その苦痛の分だけ一般物理攻撃力を高める。
ガードの攻撃魔法バフ:
聖神魔法攻撃バフ。 精神の苦痛レベルを上げ、その苦痛の分だけ一般物理攻撃力に光属性攻撃を追加する。
ガードの神聖魔法攻撃は、不浄な存在に対して光属性の攻撃力を加えることができる。
厄災の狂気もトラニアでは不浄側に属するため、その効果は有効である。
青年の身体に慣れ親しんだ感覚が始まり、少しずつ心身両面の苦痛が始まった。
まるでリウマチ関節炎と帯状疱疹が同時に来たかのように全身が痛む。
しかしその感覚と同じだけ、青年の身体に力が満ち始める。
青年は家出している自分の精神を心の中で再び縛り付けた。
これによって、取るに足らなかった青年の攻撃力に物理・神聖攻撃特性を加えた攻撃倍率が追加される。
青年はこうしてかろうじて条件を満たし、厄災の狂気に染まり凶暴化した魔物たちへダメージを与えられる状態となった。
「ガブリド様。本当にひどすぎるのではありませんか! ガブリド様がお呼びになればいつでも駆けつける私に、どうしてこんなことができるのですか!」
リレイアは、魔物が通り過ぎても眼中にない。
「リレイア。お前、目の前を真っ直ぐ通っていく魔物たちが見えないのか? 魔物討伐が先だろう!」
ガードが先に口を開いたが、言葉はロレルの方が先だった。
「目をひんむいた雑魚どもが集まってどこかへ行くことの何が大事なの? それより、お前はなんでここにいるの! 時空間管轄違反じゃない!」
リレイアが今にも食い殺しそうな目でロレルを睨む。
「そう言うあんたは? 名目上はトラニア王国の守護者なのに、どうしてここへ来たの!」
ロレルも負けない。
「ふん! 広域業務を知らないの? あなたがガブリド様の隣にいる方がもっと大きな問題じゃない。古代魔女が現在の時間軸で妙なことをするかもしれないから、王国の守護者として確認する必要があるのよ。」
「ほう。そう考えているのね。でも私はガブリド様がお探しになったから来たのよ。何が問題なの? 無断離脱したあなたとは次元そのものが違うの。あんたこそ早く帰りなさい!」
ロレルがリレイアを威嚇する。
「ふん! あなたじゃなくて、ガブリド様に直接聞くわ!」
リレイアが再びガードの方を向く。
そんなリレイアの肩をロレルが掴んだ。
「さっきから空気も読まずにガブリド様、ガブリド様って泣き叫んでるけど、ここではガードというお名前を使っていらっしゃるの。二度は忠告しない。せめてそれだけは直しなさい。」
「あっ、そうなのですね。どうりでさっきから雰囲気が冷たかったわけだ。うん! 分かった。忠告はありがたく受け取ろう。」
ロレルがこっそり囁くと、リレイアもすぐに理解してうなずく。
静かな会話が終わると、再びロレルは距離を取った。
「ガード。あのエルフ、さっきから聖神ガブリドの名前を叫んでいるけど。応援団長でも呼んだのか?」
エドが新しく現れたエルフを見て露骨にガードをからかう。
「ふむ。この状況の責任を痛感している。」
ガードは状況を正直に認めた。
ガードの表情は厳粛だが、少し困惑している。
「そうか。とにかくガードのエルフ応援団長より、うちのベリアの方がずっと役に立つな。」
「ありがとうございます。エド様。」
エドから鋭い称賛を受け、ベリアの機嫌が良くなる。
カルニボアの体力を70%削ったエドが横へ退くと、ベリアが槍を振るってさらに繊細に体力の28%を削る。
すると中衛に属する青年がスパーリングをしながら身体をほぐしていたところへ、哺乳瓶二本分に相当する渾身の力を込めて魔物を攻撃し、残り2%を埋める。
まるで自動化された精肉システムのように、カルニボア精肉システムは見事に作動していた。
「うちの青年は五月六月の雑草のようにぐんぐん育っているな。」
エドは満足そうだ。
優良児の青年は順調に爆発的成長を続ける。
「リレイアが怒るのも理解できる状況だ。」
ガードが青年にバフをかけながら淡々と言う。
「うわあっ! ぐはっ! きゃあっ!」
周囲には青年の悲鳴だけが響いている。
他の者たちはまるで副業でもしているかのように身体を機械的に動かしながら、目だけはロレルとリレイアを見ている。
しばらくの間、リレイアは聖神ガブリドを叫び続けていたが、当の青年だけは聖神の名前すら聞けないほど忙しかった。
「ガード。いつも公平に考えるから問題が解決しないんだ。食べて飲む生命は絶対に公平さなんて望まない。それがベリアが意地を張ってここにいる理由でもあるしな。今まで数えきれないほど繰り返されたことだし、今さら珍しくもない。」
エドは笑いながら軽く言ったが、それだけにその言葉にはいっそう骨があった。
もちろん、その中に込められた深い意味をガードが分からないはずもない。
「とにかく早く帰れ! ここはお前のいる場所じゃない!」
ロレルが子供を家へ帰そうとするかのようにリレイアへ手を振る。
「それは私が言うことよ。」
リレイアも負けじと言いながら剣を抜く。
「おい! お前、本気か?」
ロレルは呆れ果てた。
もちろん、見物しているガードとエドも同じく呆れている。
実に、青年だけが一人で忙しかった。
「おい、お前。いくら何でもこれはないだろう。今の状況で聖剣エクスカリバーを抜くなんて。これは違うだろう。時も場所も全部間違っている気がするが。」
ロレルはリレイアに向かって目で悪態をつく。
「いいえ。時と場所に合わせて抜いたのよ。」
リレイアは、まるでホラー映画のワンシーンのように鋭い殺気を放つ聖剣を前へ突き出し、ロレルの視線による悪態さえ聖剣の光ではね返した。
「ほう。そう。今日は本当に決着をつけようというわけね。慈悲深い魔女にも我慢の限界というものがあるのよ。」
ロレルはそう言うと同時に、精霊の指輪を口元へ近づけて呪文を唱える。
「魔法呪文。精霊魔法。精霊召喚。四大精霊王。」
ロレルが呪文を唱えると、上空に四大精霊王が再び姿を現した。
「ふふん。この魔女。ついに本性を現したわね。魔女の本性。どこへ行けるものか。」
リレイアは言いながら聖剣を高く掲げた。
「どうやらお仕置きが必要みたいね。エルフが頑固なのは遺伝だというけれど、その頑固さがどこへ行くものか! こうなった以上、どちらが序列二位なのかここではっきり決めましょう!」
ロレルも精霊王たちに攻撃準備をさせた。
「ははは。ガード見てみろ。聖剣エクスカリバーと四大精霊王が魔物退治じゃなくて犬猿の争いに動員されているぞ?」
エドはあまりにもおかしくて、戦闘中であるにもかかわらず笑いをこらえられなかった。
「私は見ない。」
ガードはとてもその光景を見続けていられず、自分の手のひらで目を覆った。
ほとんど次の瞬間には、リレイアとロレルは互いに向かって攻撃魔法を放とうとしていた。
「二人とも。動くな。」
結局、ガードが短く言った。
大声で言ったわけでもないのに、ガードの言葉に二人は氷のようにその場で停止する。
「はい。ガード様。」
だが直後にリレイアとロレルは自ら停止状態を解除し、ぱたぱたとガードの隣へ走って来て並んだ。
その間にいる魔物たちをまったく傷つけずに駆けて来たことが不思議なくらいだった。
連続した動作の中で、リレイアが抜いていた聖剣エクスカリバーはすでに鞘へ収まっている。
ロレルの四大精霊王も、ガードの機嫌が良くないことを感じ取ったのか、召喚者であるロレルの指示すら待たず、自ら召喚魔法陣を解いて急いで帰っていった。
「どうするんだ?」
エドが、もう結論は出たのではないかという意味で尋ねる。
ガードにもエドの結論へ反論する口実は見当たらない。
「聖神の神託により、二人とも巡礼に同行させる。」
結局ガードは断定的に二人へ告げた。
「ありがとうございます。聖神ガブリド様。お命じになられた巡礼補佐任務、喜んでお受けいたします。」
ガードの言葉にリレイアは喜び、即座に片膝をついて礼を取った。
「ガード様がお望みなら、そのようにしなければなりませんね。」
ロレルにとっては歓迎できない結果だったが、ガードの言葉にしぶしぶ同意した。
ロレルとリレイアにとって、ガードの決定は絶対である。
「ただし、リレイアという名前は有名すぎるので、レアと呼ぶことにする。」
ガードはロレラの時と同じように、冒険者として使う名前を付けてやった。
「なるほど。ベリアとは違って、リレイアは人々によく知られている名前だからな。レアという名前を与えるのが正しいように思う。」
エドはガードの言葉に同意する。
「ありがとうございます、エド様。」
行き交う会話を通じて、魔神がエドという名前を使っていることにすでに気づいていたレアは、エドが味方をすると、レアは喜びながら礼を述べた。
「その、私のことを忘れているわけではありませんよね?」
青年が存在感を高めながら、自分の存在を皆にアピールする。
「もちろんです。青年はその身体についている手と足を、もっと速く動かしてください。青年はレベルが低いため、作業速度が遅くなる原因です。」
ベリアの冷徹な計算が、青年へ鞭のように振り下ろされる。
「それでも私の星占いを無視するのか?」
エドは最終結果に得意満面だった。
「たまたま生じた帰納的結果に過ぎない。演繹的な我々とは合わない。」
するとガードは、エドの言葉を完全には否定できず、苦しい言い訳を思いついた。
「なるほど。そうですか。さすがですね。」
エドはそう言いながらも、星占いについては自分が勝ったのだと喜んでいた。
たとえこれはエドとガードの間の会話であったとしても、その後トラニア神聖教団は星占いの使用を大々的に許可することになるのだった。




