朝の露店へ行く
一日が過ぎて、晴れやかな朝の始まりだ。
ナドラ支部の建物の右側にはカフェがあり、冒険者たちはここで簡単に朝食を済ませることができる。
また、フィールド探索に出る冒険者たちは、ここであらかじめ注文しておいたミールキットを受け取る。
朝寝をしないガードが、早朝からカフェ前のテラスでコーヒーを6杯注文して飲んでいる。
ひとまず一人でテーブルを一つ丸ごと占領するのも見た目があれなので、テーブルの上にコーヒーを6杯並べ、まるでリボルバーのシリンダーが一つずつ回るかのようにちびちび飲みながら、一杯また一杯と飲んでいるところだった。
現在、6杯のうち3杯目を手に持っている。
6杯のコーヒーはすべて種類が異なり、1杯目はアイスで楽しみ、2杯目はホットで楽しみ、3杯目はミルクを入れてラテになったところだ。
注文するときに、メニュー表の上から下まで一列を全部注文した結果である。
それでも注文したコーヒーの中にはアメリカーノ風のものが2杯ある。
アメリカーノはガードが最も好きなコーヒーだ。
「ガード。僕がお前の星占いを見てあげるよ。」
突然、穏やかなテーブルへとエドの叫ぶ声が聞こえてくる。
エドがガードを見間違えることはない。
朝の時間にテラスへ座ってのんびりコーヒーを楽しむ人物はガードだけだったからだ。
「座ってもいいだろ?」
尋ねるより早く尻から滑り込んできたエドが、ガードの隣へ椅子をぴったり引き寄せて座る。
「許可できない。」
ガードは断ったが、会話はそこで終わらない。
「なんとなく今日のガードには星占いが必要になる気がするんだよな。」
エドは星占いのためのカードをテーブルの上に広げた。
「それが俺に通用するのか?」
ガードが疑いに満ちた目でエドを見る。
「さあな。魔神の力を借りればできるかもしれない。」
エドが机の上に置いたカードをめくる。
「つまり今、魔神が聖神相手に詐欺を働くということだな。一発殴ってもいいか?」
ガードは礼儀として尋ねたが、拳はすでに上がった状態だ。
「光の神が暴力を振るうほうが問題じゃないか?」
エドは自分が原因を作った事実を無視して軽口を叩く。
「慈悲はない。罪を犯したなら罰を受けるべきだ。光の戒律にもはっきり書かれている内容だ。」
ガードが厳しい顔で言う。
「いやいや。その深刻な表情はひとまずやめてくれよ。占いの結果はもう出たから聞いてみな。」
エドはガードが上げた拳を自分の手で包んで下ろし、星占いの結果を伝える。
「女運が悪い。実際には女と言うには微妙なんだが、とりあえず女ということにしておこう。その運勢が悪い。それも二つだ。だから今日は気をつけろ。長年の友情を思って特別に教えてやるんだから、注意するように。」
エドは本当に心配そうな表情だ。
「つまり今、魔神が聖神に対して女関係に気をつけろと言っているわけか。わかった。じゃあもう殴っていいな。」
「いやいや。俺は殴られるようなことはしたことがない。まずはそういうことにしておいて。占いが当たるか当たらないか、それを確認してみようじゃないか。」
言い終えたエドは、星占いカードを急いで片付けると席を立ち、ガードを避けて逃げ出した。
そんなエドへ呆れた表情を向けながら、ガードは再び静かになったテラスで4杯目を手に取った。
「お、この味はチョコラテか。」
そしてアーリーバードの朝が終わり、ノーマルバードたちが朝を始める。
ナドラギルドの朝は三回始まる。
最も早く起きるアーリーバードと、最も多く起きるノーマルバード、そして最も遅く起きる救いようのないバード。
それでも大半の活動はノーマルバードたちと共に始まる。
救いようのないバードたちには特に期待するものはほとんどなかったが、それでもこの特別に怠惰な集団の中にはA級冒険者が多数含まれていた。
立ち上がりが遅いのが欠点ではあるが、戦力としては確実に頼れる部分もあったため、ただ叱りつけてばかりというわけにもいかなかった。
ナドラ支部からプラムスまでは距離があるため、価値の高い素材はプラムスへ行って売るとしても、一般的な素材はナドラギルドの空き地で露店を開き、直接売買することもある。
夜には冒険者たちが宿として利用しているが、朝になって宿を片付けて出発する前、一部の冒険者たちはアイテム整理も兼ねて露店を開き、販売する品物を展示する場合もあった。
ギルドがクエストとして登録したアイテムは、ギルドが高値で買い取ってくれるため露店に並ぶことはなかったが、それ以外の素材は冒険者たちが任意に処分することができる。
装備の点検も同じである。
プラムスのような大都市なら簡単にできることも、ナドラ支部ではそうではなかった。
例えば、剣の刃を研ぎ直してくれる鍛冶屋がいない。
そのため、冒険者の中で鍛冶スキルを持つ冒険者が露店を開き、冒険者たちの剣を研ぎ直している。
たとえ鍛冶スキルのレベルが高くなく、プラムスのように完璧にはできなくても、再びフィールド狩りができる程度には仕上がるため、それなりに冒険者たちから人気が高い。
ナドラ支部で開かれる朝の露店は、毎日の日常のようによく見られる光景である。
ただし、鑑定スキルを持たない冒険者たちは、自分たちが売っている素材の価値を知らない場合もあった。
そのため、価値の低い素材の販売、価値の分からない素材の販売、あるいはすでに死んだ冒険者の遺失した古い品物など、売られている品物もさまざまである。
「トレジャーハンター。トレジャーハンター。」
露店の間を、ローレルが名前も分からない歌を鼻歌で口ずさみながら先頭に立って歩いている。
実のところ、朝の露店を見て回ろうと提案したのはローレルである。
すでにローレルは長年の経験によって、朝の露店市場に鑑定されていない希少アイテムが存在することに気づいている。
一行は今日、ナドラ支部長指名調査クエストへ出発する予定になっている。
もちろん青年も含まれる。
本来ならすぐに出発しなければならなかったが、朝の露店を見て回るくらいならそれほど時間もかからないため、全員がローレルと行動を共にしている。
今、青年の体を拘束しているのはボンヌだけではない。
ローレルがパーティーに加わってからは、なぜかローレルも青年に対するスキンシップを自然に増やしていっている。
幸いなことに、今では青年もボンヌが主張する愛の領域の範囲をある程度予測できるようになっていた。
そしてボンヌとの愛は、愛の限界突破のようなものであり、青年には到底その愛へ向かう人間的な境界を越える自信がなかった。
ところが今度はローレルの愛が退路を塞いでいた。
すでにボンヌに散々な目に遭わされた分だけ、現実をありのまま喜ぶことができず、青年の背筋にはぞっとする感覚が走っている。
まずガードが言うには、ローレルが現在の時間軸に存在するために、その媒介として青年の純粋な魔力をすべて犠牲にしたらしい。
青年の意思を尋ねることもなく、青年のすべての魔力を横取りしたことも問題ではあった。
それでも青年のレベルが低く、魔力を使う場面がなかったという点は小さな慰めになる。
いずれにせよ青年は、自分の魔力が0になった代償としてローレルが現在に存在しているという点を理解はした。
エドが青年の代わりにステータス画面を開いて見せる。
徹底的に保護されており、本人の同意なしには絶対に開示されないと言われていた、そのステータス画面である。
青年は、自分の同意もなく自分の個人情報が目の前に広げられると、そのずさんな管理に笑うに笑えない気分になる。
ガードが魔力の犠牲と言ったように、青年が現在使用できる魔力は「--/300」と表示されている。
百回話すよりも一度見る方が確実だった。
しかも0ではなく「--」である理由も、おおよそ理解できる状況である。
「それでは、僕の魔力は永遠に失われたということですか?」
「その代わりローレルがいる。得な商売だと思おう。」
ガードが青年の肩を叩く。
違法施術をした医者も、この程度には図々しい名医だった。
それでも青年は今まで、このパーティーの中でガードを最も常識人だと信じてきた。
このおかしなパーティーの中で、ガードだけが唯一の精神的救世主だったというのに、青年は今や裏切りの限界点を超えつつあった。
「まあ、たった300しかない、本当に取るに足らない魔力量ではあるが、今まで大切に育ててきた情があるなら、元に戻してやる方法はある。」
エドが青年のもう片方の肩に手を置いて、方法があるとささやく。
「エド様! 本当ですか!? 教えてください!」
すると青年の顔に生気が戻る。
青年は実のところ魔法使いに憧れている。
数多くの敵を前に震えている味方たち、その視線の向かう先には青年がいなければならなかった。
その場所で青年は、究極の火炎魔法である隕石召喚によって敵をことごとく打ち倒さなければならなかった。
喜ぶ味方たちが青年の名を叫ばなければならなかった。
だが今、その青年の姿がローレルへと置き換わっていく。
もちろん剣一本でも夢を叶えることはできるだろうが、なぜか勤勉な肉体労働は避けたい気持ちもある。
「簡単だ。ローレルを帰せばいい。」
エドが笑いながら言った。
エドの目は笑っているが、青年が選ぶことのできる選択肢ではなかった。
青年も知っており、エドも知っているため、青年の目にはエドに対する不信感が浮かぶ。
「私を殺すおつもりですか。望まれるのでしたら受け入れます。でも、それを本当に望んでおられるのですか。」
ローレルが偽りの哀れな眼差しとともに、艶めいた姿勢で青年を見る。
「あ、いや。それはそうだけど。」
ありきたりなごまかしではあるが、美人の表情を前にして青年は選択をためらう。
「仕方ないな。こんな薄情な人なのだから、私たちにどうしようもない。ローレルが譲歩するしかないだろう。」
ガードが青年の味方をすると、青年の目にはガードがさらに憎らしく見える。
「悲しいですが、仕方ありませんね。たとえ短い出会いだったとしても、過去へ戻った後も私たちの出会いを毎日思い出します。」
ローレルが偽りの涙を自然に見せる。
青年の目の前には、あまりにも見え透いた場面が流れている。
これは青年が見てきた数多くの異世界物の資料で欠かさず登場する定番の場面である。
「ちなみに、ローレルが今言った“思い出す”というのは、毎日呪うという意味ですよ。」
エドの隣にぴったりと張り付いているベリアが説明を付け加える。
「どうせ今のレベルじゃ、うちのハニーは知っている魔法もないし、使う場所もないじゃない。ローレルは気に入らないけど、ローレルの魔法は必要よ。」
ボンヌはローレルの魔法に関心を持っている。
「それで、どうなさるのですか?」
ローレルが再び尋ねたが、青年を除く全員の答えはすでに決まっていた。
「私の魔力を諦めます。」
青年はパーティー一同から渡された演説文をそのまま朗読する。
「そうか。ローレルのために自分の魔力をすべて犠牲にするつもりだとは。本当に崇高な犠牲だ。本当に立派だ。」
ガードはそこでようやく満足したのか、うなずいた。
「魔力がなくても戦士の道は残っているじゃないか。生き続けていればまた方法もあるだろう。」
エドが青年の肩を叩く。
「はい。」
青年は仕方なく答えた。
こうして青年は魔法使いの夢を諦め、強制的に単純な戦士となった。
「私のためにこんな犠牲をしてくださるなんて思いませんでした。ありがとうございます。」
ローレルが感激して青年に抱きつく。
「こら。離れろ。」
ボンヌがそんなローレルをたしなめた。
「それでは、フィールドへ出る前に露店を早く見て回ることにしましょう。」
状況が整理されると、ローレルは全員にそう言って急がせる。
「何か見つけたのか?」
「はい、ガード様。どうも私が昔使っていた物が、朝の露店のどこかにあるような気がします。」
ガードが尋ねると、ローレルは片目をぱちりとつぶった。




