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ナドラ大森林へ行く

しばらくして、プラムスのある孤児院で慈善募金行事を行うということで、青年が買った光の剣セットはそのまま孤児院に寄贈された。


公演の主題は簡単だ。


まったく愛していない二人が、親同士が決めた政略結婚を避けるために、夢と冒険の活劇を繰り広げるという内容だ。


子供たちが理解するにはやや難解な内容ではあったが、大人たちのための公演なので、この程度でなければ小遣い稼ぎにはならなかった。


プラムスは冒険者たちが多く居住する都市であるだけに、この場所の子供たちは他の都市よりも大人の影響をより強く受ける傾向がある。


主人公である男の子に必要なものが、フラッシュ機能のある剣の形をした玩具と、その玩具に似合う防具セットだった。


そのため、青年の玩具セットの武器と防具は、その子供にぴったりの小道具になった。


青年が過酷な資産管理を学んでから、いつの間にか1週間が過ぎている。


その間に固有スキルが2つ生まれた。


そして、レベル1の冒険者にレベルアップもなく固有スキルだけがぽつんと2つ生じるのは非常に珍しいケースである。


1:物理苦痛耐性


2:精神苦痛耐性


2つとも状態異常防止に関する固有スキルであり、苦痛を頻繁に感じ、その感覚に慣れると自動的に付与される状態異常防止スキルだった。


苦痛耐性スキル自体が連続して苦痛を感じなければならないため、一般的には習得しにくいが、その点で青年は運が良かった。


そのうえ、苦痛を感じ続けていると、ときには得るべき耐性ではなく、得てはいけない妙な性質に目覚める場合もあるため、このスキルの習得には細心の注意が必要である。


実際に苦痛耐性スキルを習得する過程で、新しい自我に目覚めて別の道へ進んだ冒険者も時々いる状況だ。


青年の場合は、この分野の専門家二人が惜しみなく指導してくれた結果だと言える。


実際のところ、青年の現在の状況が苦しいとはいえ、苦労ばかりというわけではない。


何よりも金が不足していない。


数多くのロールプレイングゲームのオープンワールドで、超序盤レベルにおける最大の苦しさは、まさに貧しさである。


ほとんどのゲームで初級レベル取得者向けの薬草クエストが用意されている理由が、まさにこれである。


初級レベル取得者からレベルが徐々に上がり、ついにはゲーム世界の絶対強者になる物語は、かなり長いプレイ時間を要求する。


しかし、まるでゲームでクリアデータを読み込んで2周目を回るように、貧しさだけ解決してしまえば、この悪循環の沼からは容易に抜け出すことができる。


ガードとエドは、青年に固有耐性スキルがあることを確認すると、青年を連れてプラムス都市郊外のナドラ大森林へ向かう。


フィールドクエストを行うためである。


フィールドクエストの名前は、カルニ・ボアの牙収集クエスト。


クエスト自体は単純だが、レベル1がやるにはかなり無理がある。


特にカルニ・ボアの生息地は、ナドラ大森林中心部にある幻惑の森である。


そして、この幻惑の森は現在、古代の魔法によって保護されている。


古代に環境保護団体所属の魔女ロレラが、緑地保護のために作った魔法結界である。


幻惑の森と呼ばれるように、魔法抵抗が弱い冒険者に錯視と混乱を与える状態異常魔法が常時発動しており、状態異常にかかった瞬間に森の外へ送り返す魔法結界である。


そのため状態異常への耐性がなければ、たとえレベルの高い冒険者であっても森で迷うことがあった。


ナドラ大森林の幻惑の森の中には、カルニ・ボアというイノシシの姿をした魔物が数多く生息しており、このカルニ・ボアの牙は中級回復薬を作るための重要な材料である。


つまりカルニ・ボアの牙は、需要が保証された固定的な価値を持つ品物だった。


しかし、必ずしもカルニ・ボアを狩る必要はなかった。


カルニ・ボアの牙は、ある程度成長すると自然に抜け落ち、また新しく生え変わるからである。


そのためカルニ・ボアには、牙が抜ける頃になると、わざと硬い木に牙を刺して抜歯する習性がある。


幻惑の森にあるこの木の名前は、「牙の木」という意味でモラリス・ツリー、略してモルトリーと呼ばれる。


つまり見方によっては、獰猛なカルニ・ボアたちが集まっている生息地の真ん中まで行き、モルトリーに刺さった牙だけを抜いてくればよい簡単な仕事である。


カルニ・ボアの平均レベルは20である。


ただし、魔物であるカルニ・ボアの牙に宿る魔力によって、モルトリーも時折魔法生物になる場合があった。


この場合、モルトリーデンという魔物の木が発生するのだが、運が悪ければ遭遇する可能性がある。


モルトリーデンのレベルは15だ。


そのため、レベル1である青年が単独でナドラ大森林の奥深くにあるモルトリーまで行くことは不可能だ。


もちろん、周囲の助けがある場合には可能である。


「魔導ヒーリング。」


ボンヌがアイドル歌手のように優雅に杖を振ると、青年の傷が消える。


「うわあっ!」


青年は、自分の傷を治療してくれたボンヌに感謝の挨拶をするつもりだった。


しかし、口からは感謝の言葉よりも悲鳴が先に飛び出す。


「うわあっ! 全身がうずいて痺れます!」


青年が苦しいと訴える。


「耐えねばならぬのだ。」


エドは、それはどうしようもないという表情だ。


ガードが初級者育成マニュアルを懐から取り出す。


「レベル1育成注意事項1-1。初級者はHPがあまりにも低いため、通常のヒーリングではHP回復を行うことができない。聖神系回復魔法使用時、成仏する。」


ガードは読み終えるとマニュアルを懐へしまった。


「いや、司祭様はどうして何を言っても全部成仏するとおっしゃるんですか!?」


青年が慌てる。


「だから聖神回復魔法は使用不可。」


エドがきっぱりと言う。


「レベル1育成推奨事項1-2。初級者の回復はまず推奨しないものとし、回復薬物を服用させながら雑務や下働きをさせて経験値から先に上げること。フィールド探索禁止。ただし魔導ヒーリングの限定的使用は可能。」


青年の抗議を無視して、ガードが再び懐からマニュアルを取り出して読んでみる。


「しばらくはボンヌに治療してもらうこと。」


エドがきっぱりと言う。


エドの言葉が終わると、ガードがマニュアルを閉じて懐にしまった。


そのため、ボンヌが代わりに魔導ヒーリングの呪文を青年にかけている。


「魔導ヒーリングですって……。」


青年は最初その言葉を聞いたとき、ヒーリングはどうであれヒーリングだと思った。


しかし、魔導ヒーリングの正体は完全に違っていた。


不死者であるボンヌが使用するのだから、神聖魔法ではないことは確かだ。


そうである。


魔導ヒーリングは、実は呪いだ。


この魔法呪文は、不死者の呪いを応用して肉体の損傷を治す。


そして肉体の損傷を治す分だけ、同等量の精神的ダメージを与えた。


「ハニー。どうせなら思い切り体を張って、たくさん怪我をしなきゃね。」


「そうすれば、体がたくさん痛いぶんだけ心の苦痛は少なくなるはずよ。」


ボンヌが再び杖を振りながら、愛情を込めて青年に助言する。


そうして魔導ヒーリングをするたびに、青年は苦痛の悲鳴を上げた。


しかし青年はすでに固有スキルを得ていたため、レベルが低いにもかかわらず状態異常耐性があり、幻惑の森をさまようことなく魔物狩りを続ける。


その間にレベルも上がり、レベル4になった。


それどころか魔導ヒーリングによって精神的ダメージも同時に受けているため、状態異常耐性も効果が継続して強化中である。


エドの話によれば、冒険者登録カードでは状態異常耐性の横に60という数字が表示されているが、継続して強化されて100になれば、状態異常耐性から状態異常防止へとスキル能力が大幅に強化されるという。


「あ。ちょっと待て。」


幻惑の森をほとんど通り抜けた時、エドが一行を呼び止める。


ちょうど青年のレベルが5になった。


良い機会だと思ったエドが周囲を見回しているうちに、捨てられた武器と防具を発見する。


エドは持ち主のいない武器を手に取り、あれこれ見回す。


「どうだ、ガード?」


「良さそうだな。聖神魔法。武具回復。」


ガードがこの言葉とともに武器と防具に魔法をかける。


すると武器と防具に込められていた魔法が互いに反応し、魔法武器が新品のようにきれいになる。


「おお~。それは私のものですか!」


察しの良い青年が先に喜びながらエドに近づく。


「そうではあるが。」


「少し待て。」


「魔法武器の使用最低レベルは10だ。」


「だからセラピーをしてやらなければならない。」


エドは武器と防具を横に置いて、少し離れた場所へ歩いて行く。


「え? どういう意味ですか?」


青年が疑いの目でエドを見る瞬間、その視線と交差するようにエドの声が聞こえ、何かがエドから飛んでいく。


「魔導魔法。ライトニング・ボルト。」


目標は当然、武器と防具だ。


「バチッ!」


青年の耳に、武器と防具が損傷する音が聞こえ、武器と防具のレベルががくんと下がる。


これで60%破損した武器と防具のレベルが4となり、青年が使用できるようになった。


「いや、この段階ならもう雑巾です。」


青年はあまりにも呆れたが、自分が使うべき武器と防具をさらに惨めにしたくなかったため、語尾を濁す。


「誰も見ていないのだから、とりあえずこれを着て、レベルが上がったらもっと良い武器と防具を着せてやる。」


ぐずる子供をあやすように、エドが青年をなだめる。


そして仕方なく、青年は自分専用に無残に壊された防具を身に着ける。


しかし、エドが調整してくれた武器と防具は意外にも性能が良かった。


青年がボンヌから魔導ヒーリングを受ける回数が著しく減ったことがその証拠だ。


ボンヌは次第に機嫌が悪くなったが、反対に青年の気分はレベル上昇とともに良くなっていた。


たとえぼろぼろで見栄えが悪かったとしても、エドの言葉どおり、この醜い姿を誰かに見せることはないということに、青年は慰めを見出す。


「霧の立ち込める幻惑の森で、誰に出会うというのだろう。」


しかし、青年の考えは浅かった。


ナドラ大森林の深部は、ダンジョンではないとはいえ、それでも多くの冒険者がクエストを遂行する準ダンジョン区域である。


幻惑の森を通過することに困難を感じるのは、初級レベルの冒険者だけである。


資格が十分な冒険者は、容易にロレラの結界を通過してナドラ大森林の深部へ入ることができる。


そのうえ、その場所には冒険者たちを支援するための冒険者ギルドの建物も存在する。


まさに、プラムス冒険者ギルドの出張所にあたるナドラ支部である。


そうして数多くの冒険者たちの前で、青年の思考は論理エラーとともに停止し、そのまま何も考えることができなくなった。


青年の精神は、その後もしばらくの間、何が起きたのかを知ることを拒んだ。

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