プラムス中古市場へ行く
プラムス・ダンジョン都市は、都市の規模に見合うだけ中古品専門取引市場もまた活発である。
毎日開かれる中古市場は、ナドラギルドの朝市の露店とは比較すること自体が無意味なほどだった。
青年は過酷な補習授業の後、この中古市場に来ている。
青年に必要なものを探すためだった。
レベルの低い冒険者の場合、完全に新品をそろえるよりも中古市場でアイテムを購入するほうが懐事情に優しかった。
さらに、レベル10程度の物は価値があまりにも低いため、取り扱う店もほとんどないのが現実である。
そのため低レベル冒険者にとって、中古市場の訪問はほとんど必須となっている。
しかもローレルの目利きなら、真珠を豚の首に掛ける前に横取りすることも可能だ。
つまり青年程度のレベルで使う良い物を発見し、安く手に入れられる可能性が非常に高かった。
「これは!」
青年は中古市場でそれを見つける。
「V字型の角。」
「男のロマンだな。」
青年の言葉にドワーフは腕を組み、満足そうな表情をする。
「そして光る二つの目。」
「二倍で映像を確実に伝送できる。頭の後ろにも一つあるので、後方の状況も見られるよう配慮した。」
青年の言葉にドワーフがその場で立ち上がる。
しかし立ち上がった身長は青年よりかなり低い。
「頑丈な二本の腕。」
「関節式の指は道具をしっかり握れるようになっている。」
青年の言葉にドワーフは自慢げに自分のひげをなで下ろす。
「そして頑丈な二本の脚。」
「そのうえ足の裏には滑り止め用のスパイクを装着している。」
青年の言葉にドワーフの肩が誇らしげに持ち上がる。
「そして胴体。」
「最新式の操縦装置を付けて、搭乗者が楽に操作できるようにした。」
ドワーフの口元に勝者の笑みが広がる。
「つまり、機動戦士!」
青年が自分の知っている単語を口に乗せた。
青年はかつてその分野のオタクとして活動していたことがあった。
「魔導兵団機。 略して魔団だ。 魔団を知らないとは。 本当にこの時代の冒険者なのか!?」
ドワーフは、自分が期待していた名称とは違う名前を青年が言い始めると、途中で青年の言葉を遮り、不審そうに青年をにらみつける。
「魔団にしてはずいぶん変わった姿ですね。」
すると、優雅にドワーフと青年の間へ割って入ってきたローレルが、ドワーフの注意を自分へ向けさせながら慌ててなだめる。
「製作依頼は、人が搭乗する魔団を開発することだった。」
ドワーフはローレルに隠れて見えなくなった青年を探すが、結局見つけられず、視線を上げてローレルを見る。
ボンヌがすでに青年を自分の後ろへ回して隠した後だった。
「いくら何でも、魔団を誰が中古市場で買うんですか?」
エドは魔団を見回しながら、中古市場へ持ってくるような玉ではないという口調で尋ねる。
「売るために持ってきたのではない。支援を受けられないかと思って持ってきたのだ。」
ドワーフは自分の頭をかきながら小さくため息をついた。
「何か問題でもあったのですか?」
「簡単に言えば、魔力消費が大きすぎて魔団の稼働時間が短い。」
ベリアが尋ねると、ドワーフは問題点を言う。
「ですが普通は製作を依頼した側が支援しますよね。依頼した側に問題があるのですか?」
ベリアが再び聞く。
「その依頼主が跡形もなく姿を消してしまった。まあ、一応は魔団試作機の製作に必要な費用は前金で全部受け取っているから、それは問題ないのだが、追加支援がなければ魔団製作を完成できなくてな。だからといって未完成の魔団を工房に置きっぱなしにもできないし。」
ドワーフは自分の作品を見上げながら名残惜しそうに言う。
「そういえば、モラン家の紋章ですね。」
レアは魔団の右肩に描かれている紋章を見ている。
「おお。さすがエルフだな。モラン家の紋章を見分けるとは。やはり長生きはするものだ。まあ、そっちのほうが私より長く生きているようだがな。」
ドワーフはレアのセンスを褒めた。
「エルフに年齢を聞いて生き残ったのはドワーフだけじゃないですか。小さすぎて狙いを付けにくいからですが、それは今も変わっていないようですね。」
レアは、エルフの年齢を話題にして突っかかったドワーフに対し、ドワーフの低い身長を持ち出して反撃する。
「何だと!」
ドワーフが聞き返す。
その瞬間、エルフとドワーフの間に冷たい空気が流れる。
「おお。エルフとドワーフの仲が悪いのは、どの世界でも同じみたいですね。」
青年は前で読んだ数多くの資料を思い出しながら、仲の悪い二人を見て安心する。
細長くすらりとした種族と、背が低くずんぐりした種族は、見た目からして正反対だった。
「ふむ、これは失礼。大人げなくまた興奮してしまったな。ともかく私はプラムス・モラン工房の工房長を務めているモラン・ガという。」
ドワーフは自分をモラン・ガと名乗る。
「私も年齢に見合わないことをして失礼しました。」
レアもモラン・ガに謝る。
「また年齢の話か? ははは! 本当に話が終わらないな!」
モラン・ガは突然そう言って笑う。
「ほほほ。本当にそうですね。」
レアもつられて笑った。
「ちぇっ!フフ喧嘩は刀で水を切るようなものだって言うけど、本当にその通りね。」
ボンヌは呆れたように二人を見ている。
「フフ喧嘩ですって?」
青年は理解できずに尋ねる。
「エルフとドワーフを終わりの部分だけをまとめてフフ。この二人の喧嘩はいつも些細なことで、深刻なものは一つもないという意味よ。」
ローレルが青年に説明する。
「え? 元々エルフとドワーフって仲が悪い種族じゃないんですか?」
青年は理解できず首をかしげる。
「青年。まだ正気に戻れないの。エルフとドワーフは仲が良すぎて困るくらい。どれだけ仲が良いからフフ喧嘩なんて呼ばれると思う。」
エドは青年の間違った常識を正してやる。
「それはそうと、モラン・ガというなら一族の嫡流ですね。なのに、なぜ王国の首都ウルにおらず、ここにいるのですか?」
「おお! そんなことまで知っているのか? 博識だな!」
レアの指摘にモラン・ガは感心する。
「一時的に首都ウルのモラン工房とプラムスのモラン工房、両方の工房長を兼任している。まあ正確には、プラムス・モラン工房の一番弟子が今回昇格することになっていてな。昇格が確定すれば、プラムス・モラン工房の工房長はその一番弟子が務めることになる。私は弟子の昇格を見届けるために、しばらくプラムスへ来ているのだ。」
モラン・ガが事情を説明する。
「見たところ、製作にかなり時間がかかったみたいですね。」
いつの間にか青年は一行から離れ、魔団のそばに立って魔団を見物している。
「ああ、思えば君も人族だったな。私がプラムスに来てからもう百年になる。一番弟子の年齢はたしか四百歳くらいだった。」
モラン・ガは軽く考え込みながら記憶をたどった。




