授業を受ける青年の一日へ行く
ナドラ大森林から帰って来てから、数日が過ぎた。
「エトエンとは、トラニア王国の教育制度であり、また教育施設を意味します。」
青年を教育するために、ベリアが特別指導教師として任命された。
場所は、青年が滞在しているプラムス冒険者ギルドのとある教室だった。
プラムス冒険者ギルドでは定期的にS級冒険者を特別講師としてエトエンへ派遣しているが、今回は予定通りガードとエドの順番だった。
それによって、青年を含むみんなが、助手または準指導教師として共に行くことになった。
それゆえ、トラニアの世界に関する知識が足りない青年のために、エドの指示でベリアが青年を強制的に教育しているところだ。
「孤児院はエトエンではないですか?」
青年はまず、自分の武器と防具を寄付した孤児院を思い浮かべた。
「青年は記憶力が良いですね。ただし孤児院は、あくまで親のいない幼い子どもたちのための保護施設であり、それ自体は教育施設ではありません。」
ベリアは青年の記憶力を褒めた。
「それなら、エトエンとは何なのですか?」
「エトエンは、すべての子どもが10歳になると義務的に入学し、20歳になって卒業するまで教育施設内で共同生活をしながら教育を受ける場所です。子どもの教育に必要なすべての費用はトラニア王国が全額負担するため、親が子どもの教育を気にする時間も、お金を使う必要もまったくありません。」
「では、ベリア先生。私教育はまったくないということなのでしょうか?」
意味を理解できなかった青年が右手を挙げてベリアに尋ねた。
「青年は異世界から来たため、知らないのも当然です。ただし、このトラニア王国では私教育は違法です。」
「それでも人より先に進むために、こっそりやることはできるでしょう?」
青年は負けずと、他人より先に進むための私教育の必要性を再び強調した。
「親が子どもに私教育を受けさせることも、親がどのような意図で子どもに金品を使うことも、すべて違法です。この法律を破れば死刑に相当する罰を受けることになります。」
ベリアは青年がおかしなことを聞くと、微妙な表情で彼を見た。
「罰が重すぎると思います。たかが子どもの教育で人より少し努力しただけなのに!」
青年の固定観念は簡単には消えなかった。
「子どもは親の私有物ではありません。トラニア王国は、すべての責任を負って子どもたちを国民として正しく成長させる義務があります。王国は、子どもの未来を妨げるいかなる行為とも妥協しません。それこそが正しい教育制度であり、正しい教育施設なのです。」
ベリアは当然だというように言った。
「はい。私の負けです。」
青年はこれ以上耐えられずに、敗北を認めた。
「ですが、子どもたちが親と過ごす時間まで奪うことはないと思います。」
意地になった青年は右手を高く挙げて再び抵抗した。
「もちろん、親の訪問や、子どもたちが家に帰って共に過ごす時間まで奪いはしません。親には自分の子どもたちに会う権利があり、一緒に過ごす権利もあります。しかし、子どもの人生がエトエンの中にあるということは事実です。つまり子どもはエトエンの中で成長し、親は教育のために自らの人生を無駄にする必要がないことです。」
ベリアの答えには隙がなかった。
トラニア王国は、その長い歴史と同じくらい、教育に関しても制度と施設の完成度が実に完璧に近いからだ。
「エトエンの教育は画一的ではありません。子どもたちは毎年、自分の適性を確認し、その適性に合った分野へ調整を受けます。」
「もし子どもに適性がなければ、学ばないのですか?」
青年が尋ねた。
「はい。適性がないのに、わざわざ学ぶ理由はありません。ただし、子どもたちが望めば学ぶ機会は提供されます。しかし、冒険者が国家行政の授業を学ぶ必要はないでしょう。そしてエトエンを卒業する前には、すでに子どもたちは自分の職業を習得した状態ですから、卒業後に社会へ適応するための別の期間が必要になることもありません。」
「しかし、みんな良い職業を得たいと思うはずです。」
青年は自分の昔の記憶を思い出す。
「なるほど。失礼しました。私が見落としていた部分がありました。青年がもともと住んでいた異世界にはヒト族しかいなかったですね。そしてもちろん魔法もなかったのでしょう?」
ベリアが肯定する。
「あ。」
青年は理解せざるを得なかった。
トラニアは、多くの種族が共に暮らす世界である。
そして魔法の世界でもある。
人間のように百年ほどで死ぬ種族は、トラニアではいなかった。
さらに人間も、魔法をうまく利用すれば百年以上若さを維持できる。
ベリアの言う通り、トラニアでは魔法を使えるため、青年が属していた異世界人のように欲によって焦る必要もなく、職業の良し悪しの基準も百年という枠に縛られない。
青年の昔の基準はトラニアでは何の意味も持たなかった。
「そしてエトエンは大きく三種類があります。一千年以上生きる超長寿種族のための教育機関であるテンプル・エトエン、王族と貴族のためのプロケル・エトエン、そしてすべての国民のためのエタス・エトエンがそれです。今回訪問するのは、その中のプラムス・エタス・エトエンです。以上で授業を終わります。」
「チーン。チーン。チーン。」
ベリアは自分の前に置かれた鐘を三回鳴らした。
この小さな鐘はエドが用意したもので、授業が終わったら必ず三回鳴らせと指示していた。
ただしベリアはその意味をまったく知らず、ただエドの言いつけだから興味もなく従っているだけだった。
「本当にお疲れさまでした!」
しかし青年は大喜びした。
さらには勢いよく立ち上がり、ベリアに感謝しながら腰を九十度に曲げて、丁寧に挨拶する。
「これはこれは、異世界の挨拶ですね。」
意外にもベリアは微妙そうにその挨拶を受けた。
「バン!」
ベリアの言葉が終わるや否や、講義室の扉が勢いよく開いた。
そこにはエドとガードの愕然とした表情があった。
レアは何も言わず、自らの名剣エクスカリバーを抜き、ベリアへ渡した。
聖剣をゲストモードに設定すれば、レアでなくても、果ては魔王ですら制限された機能でエクスカリバーを使用できる。
「ハニー。また何かやらかしたの? でもハニーのレベルじゃベリアに襲いかかるのは無理なんだけど。まあ、そっちの趣味があるとは思わなかったな。私がもっと頑張らないとね。」
ボンヌは呆れた目で青年を見た。
「私はただ個人授業への感謝の気持ちで挨拶しただけです。」
場の空気が冷たくなり、青年も何かがおかしいと悟ったらしく、言い訳の中にも遠慮が見えた。
「ほほほ。青年、その挨拶というのはね、相手に決闘を申し込むときの挨拶なのよ。」
エドはもう我慢できないというように笑いながら説明した。
状況から見れば、青年がどんな過ちをしたのかは大体わかる。
「昔、剣で相手の首を斬る前に首を拭いてやったことから始まった決闘儀式だと聞いている。」
ガードは呆れながら記憶をたどった。
「今みたいにレベル差が歴然としている場合は、罪を認めて相手に首を差し出す作法だ。今日エクスカリバーに首を預けることになったとは、運の良い奴だ。」
そのうえレアは、青年の命よりエクスカリバーの価値の方を高く評価していた。
「そういうことです。授業量をもう少し増やす方がいいかもしれませんね。」
ベリアは右手を上げ、情けない青年に指弾を食らわせた。
「パチン!」
「いたっ!」
青年の悲鳴が教室に響いた。
そして青年の補習は即座に始まり、彼は一行の全員から特別指導を受けることとなった。
青年はエドからトラニア剣術理論の基礎を学ぶ。
青年はガードからトラニア神聖教団についての基礎を学ぶ。
青年はベリアからトラニア魔神教団についての基礎を学ぶ。
青年はレアからトラニア王国テンプル騎士団についての基礎を学ぶ。
青年はローレルからトラニアに住んでいる種族についての基礎を学ぶ。
青年はボンヌからトラニアに住んでいるアンデッドについての基礎を学ぶ。
特別講義だけで実に六つにもなり、青年は、これほど熱心に勉強したことは一度もなかった。
しかし青年は授業中に眠ることもできない。
ボンヌが青年に繊細な呪い魔法をかけ、青年が眠気を感じるたびに針で太ももを刺されるような痛みを与えるよう配慮したためである。
幸いにも、高強度の補習授業はひとまず効果を見せた。
授業の成果として、青年は口さえ開かなければトラニアの原住民のように見えた。
しかし青年は、自分が天才ではないことを自分自身が知っている。
授業で学んだことをすべて覚えていられるのも今日だけであり、時間とともにその記憶もまた普通に消えていく運命なのだ。
青年はただのレベル10の普通の冒険者だった。
「とんちんかんな発言が出ないように、いっそ口を塞いでおきましょうか? 消してしまうのが最善ですが、そうすると呼吸困難で死ぬかもしれませんから。」
青年の状態が心配なのか、ベリアが意見を出した。
「そんな物騒なことを目一つ変えずにおっしゃるんですか!」
すると青年は激しく首を横に振り、全身で拒絶した。
「私は魔王です。」
しかし、ベリアはむしろ自分が魔王であることを強調している。
「それもそうね。だが、それはあまりにも可哀想。」
エドは口ではそう言ったが、表情はベリアの意見を振り切れずに残念そうにしていた。
「エド様もひどくないですか。今の言葉と表情が全然合っていません。」
青年がエドに抗議する。
「ガードはどう思う?」
エドは青年に睨まれると、素早くその視線を避け、青年に背を向けながらガードに尋ねた。
「口さえ開かなければトラニア人に見える。」
ガードは少なくとも青年の悪口は言わなかった。
「意味はほとんど変わらないんですけど。」
しかしやはり青年をごまかすことはできず、今度はガードへ不満げな視線を向けた。
「私ももうトラニアで暮らしてかなりになります。つまり、もう私はトラニア人です。」
青年は皆を安心させる必要を感じたのか、虚勢を張った。
「虚勢はいいが、演技力が足りない。」
しかし皆から高い評価を得ることには失敗した。
「仕方ない。まず私たちに聞いてから失敗するんだ。」
エドは青年の肩に自分の腕を回し、子どもをあやすように青年をなだめた。
「はい。ですが、失敗する前にどうやってそれが失敗だと分かるのですか?」
青年は首をかしげる。
「青年なら分かるはずです。」
ベリアは褒めているのか嫌味なのか分からないことを言った。
「まあ、大したことは起きないだろう。」
ガードの言葉だった。
だがガードの表情は、その言葉とは裏腹に、自信がなさそうに見える。




