↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/98

悪役令嬢、優人と語らう2

 一日の授業が終わり、放課後になってもコーデリアの様子は変わらなかった。生徒会室で机に書類を広げたまま、頬杖を突いてぼーっとしている。見かねた小蝶が彼女の目の前で手をひらひらとさせてみても、何も見えてない様子だ。

「ちょっと、あいつどうしたのよ?大人しすぎて不気味なんだけど」

「秋だし、物思いにふけりたくなったんじゃね?まあ、お前と喧嘩することもなくて、平和で良いじゃん」

「喧嘩はあいつの方から吹っかけてくるのよ!」

 小蝶と友晴がひそひそと話し合う。

 生徒会の面々は皆、普段と人の違うコーデリアを遠巻きにして様子を窺っていた。

「でもまあ、平和で良いことかしら。コーデリアが静かだからって害があるわけでもなし」

 気を取り直した小蝶がとっととコーデリアに注意を向けるのをやめて、自分の仕事にとりかかろうとする。

 そこに赤星が深刻そうな声で、

「いや、害はある。見て、これ」

と言って、文化祭開会式の要項の草案を見せてきた。

「さっき彼女から受け取った書類だけど、一行ごとに誤字脱字が発生している。最初から作成した方が速いくらいだよ」

 紙面は彼が入れた赤ペンによって真っ赤になっている。

 役員らは皆、あっけにとられた。コーデリアとて最近はかなり戦力として使えるようになってきていたのに、生徒会加入当初まで能力が退化したかのような出来だった。

「これはひどい。うーん、困ったな。静花さんはコーデリアのあの様子に何か心当たりはある?」

 さすがの優人も眉間に深い皺を寄せている。静花に尋ねるのは、彼女が一番コーデリアのことに詳しいと考えているからだろう。

「心当たりは、ある……んだけど…………」

 静花は困った顔で口を濁した。

 コーデリアの不調の理由というと、あれしかないだろう。

 静花が先週、彼女に「もう優人への恋のために静花を助けなくて良い」と言ったこと。

 あの時こそコーデリアは頷いてくれたけれど、内心、納得していなかったに違いない。だがそんなこと、当の優人に言えるはずがない。

 言いづらそうにする静花に思うところがあったのか、

「よし!」

と優人は手を叩いた。

「コーデリア、ちょっと付き合ってくれないかい?」

と彼女の座る椅子の背を軽く叩いた。。

 コーデリアは不思議そうに優人を見上げる。

「急遽必要な物品があってね。今から買いに行くんだけど、荷物持ちを手伝ってほしいんだ」

「ええ、かまいませんが」

 コーデリアが従順に席を立つ。いつもなら「それではシズカも一緒にどうでしょうか!?」などと言い出すところだが、そんな気配も無い。

「じゃあちょっと行ってくるよ」

「はい、気をつけて」

 優人がコーデリアを連れて生徒会室を出ていく。

 その後ろ姿を他の役員は心配そうに見守った。

「大丈夫かな……」

「優人ならなんかうまいことするだろ」

 微妙な顔をして二人を見送る小蝶と、おろおろしている静花。友晴が努めて明るい声を出して彼女らを元気づける。

 そこに、

「失礼します。コーデリアいるか?」

と一法が顔を出した。

「あっ、岩水君。今さっき出ていったところなんだけど……」

「入れ違いか。今朝受け取った要項に明らかに足りないページが数枚あるんだが」

 一法が手元の書類を見せながらぼやく。

「あー、ここにも被害者が……」

 赤星がそれを受け取ると、ぱらぱらめくって失笑した。

「なんかあいつ変なのよ。一日中ぼーっとしてて、集中力ゼロ。何やらせてもミスだらけよ」

「そういえば千絃もそんなメッセージを寄越してきたな」

 小蝶の言葉に一法は考え込む。

 今朝方、千絃が珍しく自分から連絡をしてきたのだ。熱に浮かされて打った文章らしく読みづらかったが、要約すると、「コーデリアの様子がおかしい。『模造生命』のことはまだよくわかっていないが、彼女を構成する魔術に何らかの欠陥が起こっているのかもしれない。注意しておいてくれ」という文面だった。

 確かに授業中は一法も「今日は随分と静かだな」と感じていたが、本当に今日のコーデリアは異常なようだ。

「それで優人が今、連れ出したとこ」

「なるほど。じゃあ今度でいいや」

 一法はとりあえずこの場はあっさり退くことにした。

「それより井本、ちょっと来てくれ」

「あ……、うん」

 静花に声をかける。

 彼女はどこかほっとしたように頷いて、二人で生徒会室を出た。



「やっぱりコーデリアの様子がおかしいのは確かなようだな。優人との買い物から帰ってきたら、すぐに家に連れて帰って千絃に診させるか」

 廊下に出ると一法は千絃からのメッセージの内容を静花に話した。

 静花は千絃と一法があさっての方向の懸念をしているらしいと気がついて、

「そのことなんだけど……」

とおずおずと切り出した。

 その内容に一法は仰天した。

 静花が優人への想いを諦めた。それはつまり一法にとって静花への想いが成就する見込みがでてきたということだ。

 唐突にチャンスが舞い降りてきて浮かれそうになる。だが今はコーデリアの問題が先だ。

 コーデリアの様子がおかしい原因は、確かに静花の言う理由が正しいという可能性が高い。一方で千絃の意見もまだ可能性がゼロではない。

 一法は全力で心を落ち着けて、静花に提案した。

「よし!コーデリアと優人を追いかけよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。