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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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悪役令嬢、プールへ行く7

「へぇ、基山と青井は幼馴染みなのか」

 一法がフライドポテトをつまみながら驚きの声を漏らした。

「幼馴染みというより腐れ縁よ」

「家が近所で、幼稚園からずっと一緒だからな」

 小蝶と友晴が何でもないことのように言う。

 ビーチバレーですっかりカロリーを消費した一同は今、パラソルの下のテーブルでドリンク片手に塩味の効いたフライドポテトをぱくついている。

 いつもの生徒会メンバーに一法が加わったこともあり、普段しないような話題にまで話が及ぶ。

 静花も二人の付き合いが長いことは聞いていたが、まさかそれほどとはと驚いた。

「じゃあ生徒会も二人で入ったのか」

「ほぼ同時期だけど、友晴の方が先ね」

 一法の質問に小蝶が答える。

「俺は1年のときに優人と同じクラスだったんだよ」

と友晴。

 優人が、

「そのときから友晴は頼りになるってわかってたからね。僕の方から生徒会に入ってくれるよう頼んだんだ」

と付け加えると、友晴は照れたように優人の肩を小突いた。

 優人は昨年の秋の選挙で生徒会長に選ばれた。2年生の対立候補を破って1年生の生徒会長が誕生したのは、岩光学園の長い歴史の中でも初めてのことだった。

 優人に負けた上級生はこれを屈辱と捉え、他の2年生と一緒になって彼の生徒会活動を妨害してきた。そのせいで優人は新しい生徒会の人員をなかなか決めることができなかった。上級生らは優人が声をかけそうな相手に先んじて生徒会に入らないよう脅しをかけたり、嫌がらせを仕掛けてきたのだ。

 当時のことを思い出して、優人は眉を下げて笑う。

「あの頃は生徒会長に選ばれたのは良いものの、なかなか反発が大きくてね……本来は選挙後一週間以内に役員を全員決めて発表するんだけど、なるべく先輩方の目につかないように場とタイミングを見計らって、生徒会への加入を個別に依頼してたんだよ。友晴は人当たりが良いから、先輩方が文句を付けてくるのを何度もうまくかわしてくれていた。小蝶は友晴の仲介で生徒会に入ってもらった。僕が選んだって言うより友晴の紹介って言った方が、2年生は攻撃してこなかったからね」

「本当、ああいう陰険な連中って大っ嫌い。会長は選挙で正々堂々と戦って選ばれたのに、陰口を叩いたり、私達の活動を邪魔してきたり」

 ルールに厳しく卑怯なことが嫌いな小蝶が、どしんっとテーブルに拳を打ち付ける。当時のあれこれを思い出したらしい。

「二人は本当良くやってくれたよ」

 優人が鼻息の荒い小蝶をなだめながらも、「本当にありがとうね」と笑う。

「あの頃を思うと我が生徒会も大所帯になったもんだなー」

 友晴が同じテーブルに着く全員をぐるりと見回し、しみじみと言った。三人だけで加勢も見込めずどうにか業務を回していた頃を思うと、役員が五人に増え、こんな風にのんびり打ち上げができているなんて信じられない、と言う。

「随分と苦労されたご様子……シズカと私が加入して良かったですわね!」

 ポテトを片手に胸を張るコーデリア。先程までプールサイドでぽつんと座り込んでいた彼女だったが、再び皆の輪の中に入っていつもの調子を取り戻したようだった。

「うんうん。二人にも感謝してるよ」

「あ、ありがとうございます……っ」

 にこにこと応じる優人に、静花が頬を上気させて頭を下げる。

 小蝶が、

「ちょっと、調子に乗るんじゃないわよ、コーデリア。あんたまだ一人で会議の運営すらできないでしょうが」

といつも通りきっちりと突っ込んだ。

(…………)

 生徒会役員らが賑やかにじゃれ合う様子を、一法は無言で眺めていた。

 予想していたことだが、ちょっと疎外感である。仕方がない、自分以外の全員が生徒会なのだから。

 それにしてもこういう場で話の輪に入れず居心地悪さを感じるのは、一法だけでなく静花もそうだったはずだ。だが今はあんなに楽しそうにしている。コーデリアの助けがあったとはいえ、彼女は自分の力で自分の居場所を築き上げたのだ。

 それに比べると自分はどうだろう?

「あ、そうだ。岩水君、ソフトクリーム食べたいって言ってたよね。私買ってくるよ」

 一法の居心地悪さに気づいたわけではないだろうが、静花が彼の方を向いて言った。

「え?あ、ああ、ありがとう」

 自分の思考に沈んでいた一法は、我に返って慌てて返事する。

 一法が施設内に立てられたのぼりを見て「最近ソフトクリームとか食べてないから、食べてみても良いかもなー」などと何となく言っていたことを彼女は覚えていてくれたらしい。静花が「他にも食べたい人いる?」と聞いて回ると、全員の手が上がった。

「手伝わなくて良い?」

「大丈夫ですっ」

 優人が椅子から腰を浮かせかけたが、静花は「スタンドを借りますから」と言って一人でお店の方へと向かった。

 その後ろ姿を見送って、「そういえば」と優人が一法の方を見た。

「この間体育祭に来ていた千絃さんは親戚なんだっけ?」

「ああ。いとこだよ」

「仲が良いから姉弟みたいに見えるよな」

と友晴。


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