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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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悪役令嬢、体育祭に参加する10

「さすがユウト。でも私は負けません、シズカのために、そして我がクラスの勝利のために」

 コーデリアがストレッチのため軽く腕を回しながら宣言する。

 いよいよ最終種目、クラス対抗リレーである。

 はっきり言って先程の障害物走は半分お遊びのようなものだった。配点が大きいものの参加選手のほとんどがゴールできない以上、入った得点はたまたまくじ引きに当たったようなものだ。これをあてにする者はいない。一つ一つの種目で地道に得点を積み重ねてきたクラスこそが真の勝者となるのだ。

 リレーはその最後の得点のチャンスだった。

 運動場はこれまでのお祭り騒ぎが嘘のように静まりかえった。

 ピンと張り詰めた空気に、乾いたピストルの音が鳴り響く。

 2年の全クラスの走者が一斉に走り出した。

 それぞれのクラスで最も足の速い者だけが参加しているのだ。どの選手もレーンの上を滑るように走り抜けていく。

 応援もこれまでとは比べものにならない。全員が応援席から絶え間なく声援を送っている。

「がんばれ!がんばれ!」

 静花も必死で声を上げた。

 一人、また一人。駆け抜ける直線、ぎりぎりの角度で曲がるコーナー。全力疾走が次の全力疾走へとつなげられる。

 そしてバトンはついに彼女へと手渡された。



 コーデリアが2組のアンカーとしてゴールテープを切ったとき、運動場が歓声で爆発した。

 2組のクラスメイト全員が応援席から弾けるように飛び出し、コーデリアに殺到する。髪をかき回され、頬をつままれ、抱きしめられ、もみくちゃにされ……、初めこそ目を白黒させていたコーデリアだったが、何もかもめちゃくちゃで、きらきらして、わけがわからないままに笑い出した。

 静花が一生懸命人混みをかき分けて、ようやくコーデリアのもとにたどり着く。

 コーデリアは彼女を見つけると、彼女を持ち上げてくるくる回り出した。

 それを見て、皆、手を叩いて笑った。

 一法も「危ないから気をつけろよ」と苦言を呈しながらも、笑わずにはいられないようだった。

 勢いのまま入った生徒会。あらゆる方面に迷惑をかけながら奔走した体育祭準備期間。そして一日暴れ回った本番の今日。

 終わらない感情と感動の中、体育祭は幕を閉じた。



 夕暮れの運動場にとぼけた、それでいてどこかもの悲しいメロディーが流れている。

 クラスごとにつくった人の輪がゆっくりと回る。今日という日のエンドロール。体育祭後のフォークダンスだ。

 約束通り、優人は優勝した2組のダンスの輪の中にいた。

「庶民のダンスというのもなかなか難しいのですね」

 コーデリアがオクラホマミキサーのステップに四苦八苦している。リレーなどで見せた俊敏さやしなやかさが嘘のようなぎこちなさだ。

 彼女の手を取って並ぶ優人はそのギャップの大きさにこらえきれず笑う。

「君の場合はただの練習不足じゃないかな。まあ、こういうのは正確さより楽しさの方が大事だと思うよ」

「そう……、楽しかったですか?」

 コーデリアが振り返って見上げるように言う。

「うん。今までで一番楽しい体育祭だった」

「それは良かった。シズカはもっと上手く踊れますわ」

 くるりと回ってパートナーが代わる。

 コーデリアはその一つの動きすらリズムに合わずもたもたとした動きになってしまっていた。もうこの輪から脱けたいという気持ちがありありと見て取れる。

「こら、諦めるのが早いって。来年はちゃんと練習して臨むんだよ?」

「考えておきますわ」

 別れ際に優人にそう言われ、コーデリアは少々むくれた顔でそう返した。



(……きた!)

 ついに静花に優人とパートナーを組む順番が回ってきた。緊張に固まる身体をごまかして、一回転して優人と並ぶ。

「今日はいろいろとありがとう。助かったし、こうやってフォークダンスにも参加できて良かった」

 静花の手を取った優人は、まず感謝の言葉を口にした。

「こちらこそありがとうございますっ」

 優人の指先の感触に、静花は思わず声が裏返った。そんな自分の声に驚き、慌てて意識して声を落として、

「フォークダンスは……、コーデリアが提案してくれたから」

と続けた。

 そう言ったときにはもう彼女の心臓の音もだいぶ落ち着いていた。音楽に合わせて身体が自然と揺れる。静花は同じ目的のために頑張った者同士の信頼と安心に包まれ、ただただ楽しいという思いだけが彼女の心を満たしていた。

「今日うちのクラスが勝ったのも、コーデリアが頑張ってくれたからなんですよ」

「確かにすごい活躍だったからね」

「ふふ、本当にそう」

 彼女が浮かべた笑みが本当に自然で、優人は目を見張った。

 今までの静花は遠慮がちな性格のせいか、優人に対してどこか硬い表情を見せることが多かった。

 だがそのときの彼女の笑みは柔らかく、驚くほどかわいらしかった。

「君は……、本当に彼女のことが好きなんだね」

 優人は思わずそんなことを言っていた。

「はい!」

 静花が優人を見上げ、迷いなく答えた。


「コーデリアは…………私の、ヒーローなんです!」

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