表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/54

悪役令嬢、体育祭に参加する5

「さあ、来たからにはてきぱきと用意してくださいな」

「仕方ないわね……」

 手を叩いてせかすコーデリアに舌打ちして、千絃は一法の影から出た。

 座席にクッションを置き、ブランケットを広げた上で、人数分のカトラリー、ナプキンを揃える。バスケットの中にはサンドイッチ、アップルパイ、チーズにベーコンと盛りだくさん。

 さらに千絃はポットを出して紅茶を淹れ始めた。

「皆さんも召し上がってください。全員に行き渡るのに十分な量があるはずですから」

「用意したのはあたしだけどね!」

 板についた女主人っぷりで席を勧めるコーデリアに、千絃が鋭くツッコむ。

 あっという間に優雅なピクニック空間が構築されていく様をついついぼーっと見守ってしまっていた生徒会役員達は、はっと我に返りそれぞれ好きな場所に座った。

 準備が終わると千絃は再び一法の後ろに隠れた。

「今更隠れてどうするんだ」

「だって高校生恐い……ましてや生徒会役員なんて学園のヒエラルキー上位みたいな連中じゃん。だから来たくなかったのに。今だって人避けの護符を持って、半径3メートルは他人が寄ってこないようにしてるんだから」

「安心しろ、そんなもん使わなくてもお前のその格好じゃ誰も近寄ってこねーよ」

 何やら見慣れぬ文字で怪しい呪文を書き込まれた羊皮紙を見せてくる、実にこじらせた駄目大学生の千絃と、完全に呆れた様子の一法。

 ぼそぼそとやっている二人に、優人が慎重に話しかけた。

「あの、岩水君?」

「お、おう」

 弾かれたように一法が応じる。

 この二人はお互い学園の有名人なので顔と名前は認識していたものの、これまでほとんど接点がなかったのだ。

「せっかくここまで来てくれたんだし、一緒にお昼ご飯食べてくれるよね?そこの方……お姉さん?も」

「そうだよ、岩水君も千絃さんも一緒に食べよう」

 静花も優人の誘いに喜んで賛成する。

「あ、ああ。ありがとう。あとこっちは姉じゃなくていとこだ」

 一法の声が思わず上ずる。学園のイベントで友人と一緒に弁当を食べるのは初めてだ。

 了承しつつ、ついでに千絃を紹介する。

 ますますぴったりと彼の背中にくっつく不審者メイドに対し、

「そうなんだ。はじめまして、日多木優人です。こんなにいろいろつくってきてくれてありがとうございます」

優人が生徒会を代表する格好で千絃に礼をする。安心させるように微笑み、手を差し出した。

「ど、どうも……」

 千絃もさすがに年下にここまで丁寧に応対させて、いとこの背中に隠れたままではあまりにも情けないと感じたらしい。おそるおそる一法の影から出て優人の手を握り返した。

(……あれ?人避けのまじないの効果があるはずなのに、こいつ、普通に私の半径3メートル以内に入ってきたな?しかも私に触れたら弾かれるはずなのに握手もできた?)

 千絃が首を捻ったところで、

「まったく、挨拶くらいちゃんとしなさい……失礼しました、ユウト。彼女はあまり人慣れしていないもので」

と、コーデリアから苦言が飛んできた。

 千絃は相変わらずの偉そうな態度に苛立ち、浮かんだ疑念はすっかり頭から飛んだ。

「へえ、千絃さん。ところで千絃さんとコーデリアはどういう関係なのかな?」

 優人が疑問に思うのも当然だろう。一法のいとこだというのに、コーデリアが自分の管理下にあると言わんばかりの扱いをしているのだから。

「モルモッ……、同居人よ」

「なんか今、すごく不穏な単語が聞こえたような」

 千絃が初めてまともに対話したと思ったら、まともではないことを言おうとしていて優人は少したじろいだ。

「使用人……、いえ、下僕です」

「言い直したけど意味は変わってないと思うよ?むしろ悪くなってない?」

 コーデリアがまともではないのはいつものことなので、優人は冷静に指摘しておいた。



「このサンドイッチうまいっすね、千絃さん。キュウリだけ挟んでこんなにうまくなるもんです?」

 サンドイッチにかぶりついた友晴が目を輝かせた。

 初めこそ少々ごたついたが、ようやく生徒会の面々は千絃のバスケットの中身にありついていた。

 もちろん弁当を持ってきている者もいるので、おかずを交換したり、お腹の余裕を見てサンドイッチをつまんだりしている。コーデリアは静花の弁当からもらった唐揚げを興味深そうに味わっていた。

「私の研究と練習の成果よ。誰かさんがやたらうるさいせいでね」

 千絃が照れくさそうに目をそらす。

 小蝶はうんうんと頷いた。

「あー、コーデリアはうるさそうですよね。ちょっと紅茶が冷めているだけでも文句付けてきそう」

「その通り。今朝はこれを用意するために5時起きよ」

「まじっすか。頑張り屋のお母さんみたいじゃないですか!」

 千絃は初めこそ怯えて一法の隣にぴったりとくっついていた(静花と話したい一法は迷惑そうだった)が、徐々に慣れてきたらしくそれなりに喋るようになった。人避けのまじないも一旦は解除したようだ。

 小蝶、友晴の方も千絃の奇天烈な格好と言動に引いていたが、すぐに打ち解けた。

 というのも千絃がコーデリアの被害者の一人とわかったからだ。人間、誰かと仲良くなるには、同じ敵を持つことほど手っ取り早いことはない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ