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6、コンゼツ根絶計画  作者: 黒十二色
第二章 自殺者根絶計画
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24/54

24、ゆるせるわけ、ない

 嶋縞子に、当時のことをひとしきり話し終えた頃、桂はんなの就業時間も終了した。もう夕方だった。

 一緒に外へ出た三人は、この先どうするのかを話し合い、時田まことが行き先を提案し、満場一致で可決された。

 というわけで、混野ろり雄という名の、かつてロリコン野郎だった者の家に向かい、住宅街の中にあるタワーマンションに到着した。着いた頃にはもう夜だった。

 半霊体で、空中をふらふら歩けるし、物質をすり抜けることができる時田まことのおかげで、鍵の問題は無いも同然である。

 そうして三人で、混野ろり雄の家、マンションの一室に入ると、もう入った途端にわかるくらいに酒臭かった。あまりにひどい臭いだったので、潔癖な嶋縞子は玄関の外で六階からの良い眺めを堪能しながら待機することになった。

 ロリコン部屋は放置されており、隙間から、半分くらいはがれた時田まことの巨大笑顔写真が見える。

 そのまま奥に進むと、ゴミ屋敷状態が待っていた。

 散乱するビールの缶が大量にあり、コンビニ袋に包まれたゴミが、いくつもある。季節がら、害虫が大量産卵でもしてそうな環境。そのゴミの中心で、混野ろり雄が眠っていた。

 ヒゲは生えっぱなし、赤い顔、髪はボサボサ、灰色のタンクトップの背中にはところどころ血が滲んでいる。部屋だけでなく彼自身からも悪臭が放たれている。

 はじめ、死んでいるのかと思ったが、荒く呼吸を繰り返しているのでそういうわけでもないらしい。

 やがて、二人の接近に気付いたのか、暗い部屋で目を開けた。

 開けた途端に目をむいて、

「うわあああああ。あぁぁああ、祟り、祟らないでくれぇ!」

 悲鳴を上げ、ゴミを掻き分けて二メートルほど逃げ、テーブルの下に隠れた。その後もガタガタと震えている。

 落ち着け、とは誰も言わなかった。ちょっといいざまだ、とか思った人も居るだろう。

 ともかく、こんな風に、混野は苦しんでいたのである。

 いつも何かに怯えるようになり、普段の挙動がおかしくなったと判断され、仕事もクビになった。

 酒に逃げるしかなかった。逃げても逃げ切れなかった。いつも、夢に見てしまった。自らが殺して逃げたも同然だと、考えたくもなかったが、いつもそこに行き着いた。

 苛まれ、酒に逃げ、また苛まれ、また酒に……。

 そして遂に、本物の時田まことが、混野ろり雄の前に現れたのである。

 祟りに来たのだと思った混野ろり雄は、放置されしロリコン部屋に突入し、

「うをおおおおおお!」

 などと叫びながら、時田まことを写したものたちを乱暴に剥がし、丸め、放り投げ、肩で息をしながらリビングに戻った。

 しかし、時田まことおよび桂はんなの姿は消えていなかった。

 それはそうである。時田まことはいつでも透けたり居なくなったりというのは可能であるが、この時は消えているわけではなく、桂はんなの方は当然生身の人間のままで、ただ気の毒そうに男を見つめているだけで……。

 混野は絶望し、膝をつき、汚い床にうずくまる。うわずった声で、

「もう……ゆるしてくれ。もう……」

 時田まことは、静かに答える。

「ゆるせるわけ、ないじゃないですか」

 桂はんなは、何も言えない様子だった。

「あ……ああ……うわああああああああああ!」

 追い詰められたと感じた混野ろり雄は、遂に駆け逃げた。

 リビングを出て、埃まみれの廊下を走り、玄関の戸を押し開けて、外に出た。メガネの嶋縞子の前を通り過ぎ、階段を、駆け上がった。



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