本屋と教授と探偵と
円卓、円卓といえばアーサー王が率いたとされる円卓の騎士がモチーフなのだろうか。と莉奈はうろ覚えながら見上げているとウルフは目を細めていた。
「円卓と名付けられた理由も分かるとはな。」
「円卓の騎士について知ってるの?」
「いや全然。知ってるのは先代か本屋くらいだ。」
「…リーダー。」
「こいつは俺の相棒だ。今すぐ信頼しろとは言わねぇ。」
「了解した。」
「道案内してやる。お前らメンテナンス頼んだ。」
敬礼した小人たちは作業に入った。ウルフ、莉奈、スナイパーの三人は扉を開き中へ。潜水艦の中は思ってきたよりも広く感じる。
「広い…」
「叩くなよ。キレるから。」
「…まるで生きてる言い方。」
「生きてんだよ。こいつは戦争時代の後に国に捨てられ、世界に概念を与えられ命を宿した。」
「世界改変とは違うの?」
「違うな。世界と世界改変は敵対関係にある。世界が異能力を与えたのは世界改変に対抗する為だ。潜水艦はその意志を引き継ぎ、世界の意思として動いている。」
「はぇー…」
「…何も知らないのか?」
「し、知らないですよ!」
呆れたように莉奈を見つめるスナイパー、複雑な気持ちになる莉奈、ウルフは面倒くさそうに頭を掻きながらとある部屋へ向かう。
「本屋ー。ホームズは居るか?」
『うーん?居るよー。おーい、ホームズー。起きろー。』
扉が開くとそこに居たのは探偵のような服装をしている男の人だった。まるでシャーロック・ホームズのような見た目をしている。スナイパーは呆れていた。
「かのシャーロック・ホームズの概念が怠けていてどうする。」
「探偵という概念と呼んで欲しいものだ。スナイパーくん。」
「教授は?」
『モリアーティ教授?さっきホームズと推理バトルした後本を読んでるよ。』
さっきから声が聞こえる。だが何処から声がするのか分からず莉奈は見渡しているとウルフが指を指していた。本屋というよりも図書館のような場所に椅子が置いてあった。誰も座ってないのに動いた。
『やぁ、君が指揮者かな?ってコラ!ホームズとモリアーティ教授は喧嘩しない!』
「…フェレット?」
フェレットが喋っている、服装も教授みたいに白衣を着ており普通のフェレットとは異なると誰もがわかる見た目をしていた。
「あの…フェレットが。」
「最初は誰もが驚く。こいつは本屋。本とフェレットを司る異能力者だ。」
『よろしくね。こっちの若い子はモリアーティ教授。そこにいるタバコを吹かしているのがホームズ。』
「…あの、ホームズとモリアーティ教授は物語の登場人物で実在する人物じゃ。」
『いい質問だね。指揮者。』
「指揮者って…」
『ホームズは探偵を司る異能力者、モリアーティ教授は数学を司る異能力者、彼らなしでこの本たちを管理するのは困難だからね。僕が雇ったんだ。』
「本は貴重だ。疑問に思わなかったか?何故電子機器で管理していたのか。」
「管理しやすいから…あれ?本。」
「…この世界から本が消えたのもそういうことだ。物なら消える。刀も同じようにな。」
「…銃もな。」
『意識的にはそういうのがあったなぁ程度の認識まで落ちる。まるで記憶操作してるようで気持ち悪いだろう?』
莉奈は確かに気持ちのいい状態ではないと頷いていた。本屋は微笑みながらお茶を入れている。モリアーティ教授とホームズは睨み合いをしていた。
『やれやれ、戦闘も頼もしいんだけどね。』
「本屋!何故ホームズまで雇った!」
『いいじゃないか。人手は多いに越したことはないからね。あ、緑茶好き?紅茶の方が良かった?』
「緑茶で!」
『はーい。こらこら指揮者を睨まないの。全く警戒するのはいいけどちゃんと見極めてから…教授は赤ちゃんの頃から面倒見てたのにさぁ。ここまでなるとは思ってないよ。』
モリアーティ教授に睨まれて身体が縮こまる気がした莉奈、相手はかのシャーロック・ホームズの宿敵、犯罪界のナポレオンとまで言われたモリアーティ教授。犯罪界のスペシャリストだ。ビビるのも仕方がない。
『さて…今日の探してるものは?』
「厄災が現れた。」
「なに?!予想よりも早い目覚めではないか!」
『教授、落ち着いて。ホームズどう思う。』
「おそらく最初の指揮者の目覚めを察知したのだろうな。」
「…最初?」
「各地に存在してるとされる指揮者だ。日本ならば君一人だけだ。無能力者が指揮者になるとされるパターンが多い。我々はそれを想定してリーダーに向かわせたのだが…」
「指揮者じゃないパターンも想定してただろ?俺は指揮者じゃなくても連れてきた。こいつの知識は武器だからな。」
莉奈は心の中が温まるのを感じた。あの強い人から認められて、嬉しくならない人はいないのだから。スナイパーは眉を顰める。
「リーダーは充分に強い。指揮者じゃなくても十分なのでは?」
「…世界改変はそこまで甘くねぇよ。医師に診てもらったが…」
いきなりシャツを脱ぎ始めるウルフ、莉奈は目を閉じようとするが…目は閉じれなかった。傷のようでそうでない傷があった。鈍く光っている傷など傷と呼んでいいのか分からなかったからだ。
「これは世界改変に殺された証だ。」
「…え、でも生きて。」
「…一度だ。その後は何故か分からないが生きていた。生き返った代わりに師匠…先代が消えていたがな。医師曰くこれは…【呪い】だと。」
「ちなみにですがホームズって…」
『結構面倒臭いよ。』
「アッハイ。」




