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反転術師は成長とともに  作者: ルーザー
1章 反転する運命
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3話 フィルネ村

「助かった……。」


森を抜けた先には、木の柵で囲まれた小さな村があった。煙突から立ち上る煙。子どもたちの笑い声。畑で作業をする人々。異世界へ来て初めて見る"人の暮らし"に、自然と頬が緩んだ。


「やっと人に会える……。」


村へ入ろうとしたその時だった。


「止まれ。」


村の入口で、鎧を着た門番に声を掛けられた。


「見ない顔だな。どこから来た?」

「えっと……森で目が覚めて……。」


門番は面倒くさそうな顔をすると、腰のポーチから拳ほどの大きさの透明な水晶を取り出した。


「まずはこれに触れろ。」

「水晶?」

「犯罪者かどうかを調べるための水晶だ。」

「えっ。」


俺は少し身構える。


「安心しろ。痛くも痒くもないぞ。」


言われるまま水晶へ手を置く。すると水晶が淡く白い光を放った。門番は頷く。


「レベルはプラスだ。問題は特にないな。」

「レベルまで分かるんですか?」

「あぁ。正確な数値までは見えんが、プラスかマイナスかは一目で分かる。」

「もしマイナスだったら?」


門番の表情が一気に険しくなる。


「即拘束だ。」

「……。」


思わず息を呑む。


「人を殺した者は、善悪に関係なくレベルが減る。レベルがマイナスになれば犯罪者として扱われる。それがこの世界の掟だ。」

「悪人を殺してもですか?」

「あぁ。」


門番は迷いなく答えた。


「理由は関係ない。命を奪ったという事実だけが記録される。」


この世界は、思っていた以上に厳しいらしい。悪人だから許される、なんて都合のいい話はないのか……。


「よし。」


門番は槍をどける。


「フィルネ村へようこそ。」

「ありがとうございます!」


俺は軽く頭を下げ、門をくぐった。門を越えた瞬間、賑やかな声が耳へ飛び込んでくる。

露店で野菜を売る商人。桶を抱えて歩く女性。元気よく走り回る子どもたち。そして、鍛冶屋から響く金属を打つ音。


「すげぇ……。」


ゲームの中でしか見たことのない景色が、本当に目の前へ広がっていた。


「ここが……異世界の村。」


俺は期待と少しの緊張を胸に、ゆっくりとフィルネ村の中へ歩き出した。

ぐぅぅぅぅ……

腹が盛大に鳴った。


「……腹減った。」


そういえば転生してから何も食べていない。ちょうど近くにはパン屋があった。焼きたてらしい香ばしい匂いが漂ってくる。


「うまそう……。」


店先へ近付く。


「おっ、兄ちゃん。焼きたてだよ。銅貨一枚だ。」

「……。」


俺ってお金もたされていたっけ。ないよな。


「一文無しかぁ……。」


前世でも余り金はなかったが、異世界では本当に一文無しだった。


「あの、銅貨って?」


パン屋のおばちゃんは不思議そうな顔をしたが、丁寧に教えてくれた。


「一番安いお金が銅貨さ。銅貨十枚で銀貨一枚。銀貨十枚で金貨一枚。金貨百枚で聖銀貨。さらに聖銀貨百枚で聖金貨になる。」

「聖銀貨と聖金貨ってそんなに珍しいんですか?」

「あたりまえさ。」


おばちゃんは苦笑した。


「聖銀貨なんて一生に一度見られるかどうかって代物だよ。聖金貨なんて貴族様や王族くらいしか持ってないね。」

「へぇ……。」


ゲームみたいなお金だな。まぁ、俺には銅貨一枚すらないんだけど。


「お金を稼ぐなら冒険者ギルドへ行くといいよ。」

「冒険者ギルド!」


その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴る。やっぱりあるんだ!異世界と言えばギルド!俺はお礼を言い、急いで教えられた建物へ向かった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


村で一番大きな木造建築。入口には大きな木製の看板が掲げられている。

『冒険者ギルド』


「きたぁぁぁぁ!!」


思わず声が漏れた。これだよこれ!異世界と言えば冒険者ギルド!俺は期待に胸を膨らませながら扉を開く。ガヤガヤと賑やかな声が一斉に耳へ飛び込んできた。

酒を飲みながら笑い合う冒険者。剣や槍の手入れをする者。壁一面には無数の依頼書が貼られ、その前では真剣な表情で依頼を選ぶ冒険者たちが立っている。


「完全にゲームじゃん……。」


思わず見惚れてしまう。しばらく店内を眺めたあと、俺は受付へ向かった。受付には栗色の髪をした女性が笑顔で立っている。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「冒険者になりたいです!」

「かしこまりました。」


受付嬢は慣れた手つきで一枚の書類を取り出した。


「冒険者登録には、登録料として銅貨五枚必要になります。」

「……。」


俺は固まった。


「あの。」

「はい?」

「初回無料キャンペーンとか……ありません?」


受付嬢の笑顔が一瞬だけ止まる。数秒の沈黙。


「……申し訳ありません。そのような制度はございません。」

「ですよねぇぇぇぇ!!」


俺は頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。登録すらできやしないじゃん……。依頼も受けられない。つまり、お金を稼ぐ方法すらない。


「異世界、思ったより世知辛いなぁ……。」


受付嬢は少し困ったように笑う。


「申し訳ありません。規則ですので……。」

「いえ、こちらこそ無理言ってすみません。」


俺は苦笑いしながら受付を離れた。


「まずは銅貨五枚……どうやって稼ごう。」


肩を落としてギルドを出ようとした、その時だった。


「おい、聞いたか?」

「また北の森でゴブリンが出たらしいぞ。」

「最近やけに数が増えてる。」

「討伐依頼も出るみたいだ。」


ゴブリン。

異世界では定番とも言える魔物。


「へぇ……ゴブリンか。」


その時の俺は、ただ『最初に戦う雑魚モンスター』くらいにしか思っていなかった。

まだ知らない。

そのゴブリンとの出会いが、この世界の常識と、俺自身の価値観を大きく覆すことになることを。

ブックマークが1人になってすごく嬉しいです!

ありがとうございます。

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