23話 もう一人の自分
「使って見たらなんか分かるか。『性反転!!』」
体から光が出る。俺の魂が――反転した。
「……っ。」
その瞬間。身体の奥から、何かが大きく動いた。
魔力とは違う。もっと深い場所。
まるで、自分自身の存在そのものが書き換えられているような感覚だった。
「な、なんだ……これ……。」
視界が白く染まっていく。身体が軽い。いや。
軽いというより――違う。
今まで感じていた身体とは、明らかに感覚が違っていた。
「……。」
しばらくして、視界が元に戻る。
「終わった……のか?」
俺は自分の身体を見る。そして――固まった。
「…………。」
俺の身体ではない。いや。正確には――俺の身体なのだろう。でも、今までの俺とは完全に違う。
服装も変わっている。身体つきも変わっている。
そして何より――。
「……声。」
俺は自分の声を聞いて、思わず口を押さえた。
「……女の声になってる。」
間違いない。性反転。名前通りの能力だった。
「本当に性別が変わった……。」
俺は部屋にあった鏡を覗き込む。そこに映っていたのは――。
茶色い髪。見慣れない顔。黒の少し派手めな服装。
そして、完全に女性の姿をした自分。
「……まじで誰だ、これ。」
俺は思わず後ずさる。
鏡の中の人物も、同じように動く。当然だ。
鏡に映っているのは俺なのだから。
「……。」
やっぱり。
「俺……なのか?」
俺はしばらく自分の姿を見つめた。すると――。
ふと、あることを思い出した。
「そうだ。」
俺はステータスを開く。
「ステータスオープン。」
いつものように光が集まる。
そして――。
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【名前】エレナ・スカーレット
【種族】人族
【性別】女性
【LV】-1
【EXP】0/-300
【本職】テイカー Lv-1
【副職】暗殺者 Lv-1
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「…………。」
俺は何も言えなかった。
「……え?」
目をこする。もう一度見る。
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【名前】エレナ・スカーレット
【種族】人族
【性別】女性
【LV】-1
【本職】テイカー Lv-1
【副職】暗殺者 Lv-1
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「…………なんで?」
レベルがマイナス。本職もマイナス。副職もマイナス。全部がマイナスになっている。
「いやいやいや……。」
俺は慌ててステータスを確認する。
「俺のレベルは7だっただろ?」
昨日、大兎との戦いでレベルが上がった。本職の反転術師も。副職の見習い剣士も。全部、ちゃんと成長していた。それなのに――。
「こっちは全部マイナスって……。」
俺は頭を抱える。
「どういう仕組みなんだよ……。」
しかも。名前まで違う。俺は――斎藤理仁。なのに、このステータスには。
エレナ・スカーレット、そう表示されている。
「エレナ・スカーレット……。」
口に出してみる。不思議な感じがする。知らない名前のはずなのに。
なぜか、この姿にはこの名前が合っているような気がした。
「……まさか。」
俺は気づく。
「性反転って、ただ性別を変えるだけじゃないのか?」
魂を反転させると書いてあった。その結果として、肉体も変化する。そして――。ステータスまで変わる。
「つまり……。」
俺とエレナは。同じ身体を共有しているようで、別々の存在として扱われている。
「……ややこしすぎる。」
俺はため息をつく。だが。まだ終わりではなかった。
「スキル……。」
俺はスキル欄を開く。
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【スキル】
・スラッシュ Lv6
・反転
・性反転
・スキルテイク
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「……あれ?」
俺は目を見開いた。
「スキルテイク?」
知らないスキルが一つある。俺が覚えた記憶はない。
それなのに、ちゃんと表示されている。
「これもエレナのスキルなのか?」
俺は詳細を確認する。
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【スキルテイク】
対象からスキルを奪い、自身のスキルとして保存する。奪ったスキルが珍しければ珍しいほど次に使えるまで時間がかかる。
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「…………。スキルを……奪う?」
とんでもない能力だった。相手が持っているスキルを奪う。そして、自分のものとして使える。
「テイカーって……これのことか?」
本職を見る。
【本職】テイカー Lvー1。なるほど。
この職業だからこそ、このスキルを持っているのかもしれない。
「でも……。」
俺はもう一度、ステータスを見る。
【LV】-1
【本職】テイカー Lv-1
【副職】暗殺者 Lv-1
「なんで犯罪職なんだ?」
暗殺者。明らかに普通の職業ではない。
俺は冒険者ギルドで聞いた話を思い出す。
犯罪職。
それは、犯罪者として扱われる者が就くことのできる職業。そして――。
犯罪職に関わるレベルは、通常とは違いマイナスになる。
「……だから全部マイナスなのか。」
つまり。エレナは、この世界のシステム上では――。
犯罪職に就いている存在として扱われている。
「おいおいおい俺は犯罪者じゃないぞ……。」
俺は思わずツッコむ。もちろん、俺自身が犯罪をしたわけではない。それなのに、性反転しただけで。
もう一つのステータスでは、犯罪職になっている。
「……。」
俺はしばらくステータスを眺める。
理仁、そしてエレナ。
同じ魂から生まれた、二つのステータス。スキルは共有している。けれど、レベルや職業は別。
「……なんだか、もう一人の自分ができたみたいだな。」
俺は自分の手を見る。今の俺は――エレナだ。
「でも……。」
一番重要な問題が残っている。
「どうやって戻るんだ?」
俺はステータスを確認する。
性反転はある。
だが。
「これをもう一回使えば戻るのか?」
それとも。
「エレナの状態で、何か別の条件が必要なのか?」
分からない。
『スキルテイク』もある。『反転』もある。『性反転』もある。
でも、どのスキルをどう使えばいいのかまったく分からない。まぁなんとなく分かるか…。
「……。」
俺は腕を組む。
「魂を反転させる……か。」
俺は自分の胸に手を当てる。
「やっぱり、戻すときも魂を反転させればいい……のか?」
まぁそれが正しいのかどうかすら分からない。
「……。」
俺は鏡を見た。
「とりあえず、この能力についてもっと調べないとな。」
そして。
俺は新しいステータスをもう一度確認する。
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【名前】エレナ・スカーレット。
【LV】-1
【本職】テイカー Lv-1
【副職】暗殺者 Lv-1
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「……犯罪職の俺、か。」
俺は苦笑する。
「一体、この姿をどうやって使えばいいんだ?」
答えは――まだ出なかった。




