閑話 神界にて
「今頃理仁は何をしておるかのぉ。」
神界にいる神、ヴェルノクスは暇を持て余していた。
「儂も完全にあっちの世界に干渉できるわけではないからのぉ。暇じゃ。」
真っ白な空間に漫画を出してゴロゴロ読んでいる。
「この漫画おもろいのぉ。ふぉふぉふぉ。」
「あのーー……。」
「ふぉ!!」
振り返るとそこには、制服姿で眼鏡をかけたそばかすのある女子が立っていた。
「……、神界には滅多に人は来ないはずなんだがのぉ…。」
「な、なんですここ…。」
とりあえず儂は彼女の話を聞いてみることにした。
どうやら彼女は告白中に上から落ちてきた花瓶が頭にぶつかって死んだらしい。
「私って死んだんですか?」
「まぁ、言いにくいんじゃが……死んだのぉ…。」
「そう…ですか……。」
「………。」
「……………。」
気まずいのぉ。気まずい……。
「そうじゃ!!お主異世界でまた生きるというのはどうじゃ!?」
「異世界?」
「そうじゃ!!つい最近も1人行ったんじゃがのぉ、まぁお主も行かないかってことじゃ。」
「その言った人の性別は!!男、女!!」
「お、男じゃ。」
すんごい早口じゃった。そんなに大事かのぉ。
「っち、男かよ。」
「おぉ、腹黒じゃ。」
「そ、そんな事ないです…。」
「まぁ、よい。」
ヴェルノクスは彼女の顔をじっと見る。
眼鏡の奥の目は、どこか不満そうじゃ。
「それで、お主は異世界に行きたいのかの?」
「……行きたいです。」
「ほう。」
「だって……。」
彼女は少し俯く。
「せっかく生まれ変わるなら、今度は……もっと楽しく生きてみたいです。」
「なるほどのぉ。」
「それに……。」
「それに?」
「今度こそ、ちゃんと……。」
彼女は顔を赤くする。
「……恋愛したいです。」
「ふぉ?」
「恋愛です!!」
「さっきから男か女か気にしておったのは、それかの。」
「そ、それ以外に何があるんですか!!私男は生理的に無理なんです…。なので……その…女性しか…ちょっと……恋愛対象として見れないんですよ…。」
「儂にはよう分からんのぉ。」
ヴェルノクスは顎に手を当てる。
「しかし、お主が異世界へ行くとなると、職業を選ばねばならん。」
「職業……ですか?」
「そうじゃ。剣士、魔術師、僧侶……まぁ、いろいろある。」
ヴェルノクスが指を鳴らす。
すると、真っ白だった空間に大量の本が現れた。
「うわ……。」
彼女が目を丸くする。
「これ全部……職業ですか?」
「そうじゃ。」
無数の本が宙に浮かび、彼女の周りをぐるぐると回る。
「好きなものを選ぶとよい。」
「うーん……。」
彼女は一冊一冊を見る。
剣士。
魔術師。
僧侶。
狩人。
商人。
そして――。
「これ。」
彼女が一冊の本を手に取る。
「テイマー……。」
「ほう。テイマーか。」
「はい。」
「魔物や動物と心を通わせ、仲間にする職業じゃな。」
「なんか……楽しそうです。」
「確かにお主には合っておるかもしれんのぉ。」
「本当ですか?」
「うむ。」
ヴェルノクスが笑う。
「では、お主の職業は――」
彼女の持つ本が光り始める。
「テイマーじゃ。」
「……!」
光が彼女を包み込む。
「これで……私も異世界に?」
「ああ。」
ヴェルノクスは頷く。
「ただし、一つだけサービスしてやろう。」
「サービス?」
「儂の気分じゃ。」
「神様なのに適当……。」
「神とはそういうものじゃ。」
「絶対違うと思います。」
ヴェルノクスは聞こえなかったことにした。
「お主は少々、運が悪そうじゃからのぉ。」
「え?」
「運能力を少し上げておいてやろう。」
「本当に!?」
「うむ。異世界で死ぬほど運が悪いと困るからの。」
「それはありがたいです!」
ヴェルノクスが彼女の額に指を当てる。
「――《加護》。」
淡い光が彼女を包む。
「これで運能力は少し高くなったはずじゃ。」
「ありがとうございます!」
「礼はいらん。」
ヴェルノクスは彼女の背中を軽く押す。
「では、行ってこい。」
「えっ、ちょ――」
彼女の足元に光の魔法陣が現れる。
「そうじゃ、自己紹介を忘れとった。儂はヴェルノクス、お主の名はなんじゃ?」
「今聞くんですか!?」
「忘れておった。」
「ていうか名前ちゃんとあったんだ…。」
「ふぉふぉ、ひどいのぉ。」
光がさらに強くなる。
彼女は慌てながら叫んだ。
「私の名前は――!」
そして彼女の姿は、光の中へ消えていった。真っ白な神界に静寂が戻る。
ヴェルノクスはしばらくその場を見つめ――。
「……さて。」
「また漫画でも読むかのぉ。」
そう呟いて、漫画を取り出した。
――彼女の名は、
神代 叶恋
彼女は理仁とは違うタイミングで異世界に行った。
そして彼女は、テイマーとして異世界へ降り立つことになる。
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また彼女の転生先がヴェルノクスのミスでアストラル大陸に転生したのは別の話。
新キャラです。神代叶恋は未開の地アストラル大陸からのスタートです。かわいそうに。




