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反転術師は成長とともに  作者: ルーザー
1章 反転する運命

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23/40

16話 森の奥深く

――フィルネ村


「……ん。」


目を開ける。見慣れない天井。

……いや。昨日も見た天井だ。


「ここ……宿屋か。」


俺はゆっくりと身体を起こした。窓から朝日が差し込んでいる。どうやら、もう朝らしい。


「……昨日は、色々あったな。」


俺はベッドの上で昨日の出来事を思い出していた。

ホーンビット。

レベルアップ。

そして――巨大なホーンビット。


「……。」


思い出すだけで、背筋が少し寒くなる。あのとき。

俺は完全に油断していた。自分が強くなったと思い込んで。もっと経験値が欲しい。もっとレベルを上げたい。そんなことばかり考えていた。

結果――

レオンに助けられた。


「……情けないな、俺。」


俺は小さく呟いた。昨日、レオンに言われた言葉。


『生きて帰ることも冒険者の仕事だ。』


あの言葉が頭から離れない。ゲームなら、死んでもロードすればいい。でも、この世界にはそんなものはない。一度死んだら、それで終わりだ。


「……当たり前のことなのにな。」


俺はベッドから降りた。


「ていうか寝たら結構回復するんだな。この世界まだよくわからん。」


そして、手を前に出す。


「ステータスオープン。」


目の前に半透明の画面が現れる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:斎藤 理仁

種族:人族

年齢:22

性別:男

LV:6

経験値:0/300

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【本職】

反転術師 Lv4

職業経験値:0/5000

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【副職】

見習い剣士 Lv2

職業経験値:0/200

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

HP:150

MP:105

筋力:26

魔力:28

俊敏:20

器用:22

精神:36

幸運:8

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ユニークスキル】

《成長》

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【スキル】

《スラッシュ》Lv2

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「……強くなってる。」


昨日よりも確実に成長している。だけど。


「これでも、あの巨大なホーンビットには勝てなかった。」


レオンはあの魔物を一撃で倒した。俺とは、まだまだ差がある。


「……もっと強くならないとな。」


俺はステータス画面を閉じた。そして、昨日とは違う決意を胸に部屋を出た。宿屋の一階。


「お、起きたか。」

「……レオン。」


そこには、すでにレオンが座っていた。テーブルの上には朝食が並んでいる。


「遅いぞ。」

「いや、まだ朝だろ。」

「冒険者に朝は関係ない。」

「それ、絶対レオンだけだろ。」


俺が椅子に座ると、レオンは苦笑した。


「昨日はよく眠れたか?」

「……まあ。」

「そうか。」


レオンはそれ以上聞かなかった。

けれど、少ししてから口を開いた。


「昨日のこと、まだ気にしてるのか?」

「……。」


図星だった。


「まあ……ちょっと。」


俺は朝食を食べながら答える。


「俺、調子に乗ってたと思う。」

「自覚したなら十分だ。」

「でもさ。」


俺は箸を置く。


「俺は強くなりたい。」


レオンは黙って俺を見る。


「この世界で生きていくなら、強くならないといけない。」

「そうだな。」

「それに……」


昨日のことを思い出す。


「いつか、俺も誰かを助けたい。」


レオンが少しだけ目を細めた。


「……そうか。」

「何だよ。」

「いや。」


レオンは笑った。


「お前少しずつ冒険者らしい顔になってるな。」

「昨日の俺はそんなに酷かったのか?」

「酷かった。」

「即答!?」


レオンは笑いながら朝食を食べる。


「まあ、焦る必要はないからな。」

「……分かってる。」

「本当に分かってるか?」

「分かってるって。」


俺は胸を張る

。

「もう無茶はしない。」

「……その言葉、昨日も聞きたかったな。」

「うっ……。」


何も言い返せない。朝食を終えると、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。フィルネ村の冒険者ギルド。

昨日も来た場所だ。扉を開ける。


「おはようございます。」


受付嬢が声をかけてくる。


「おはようございます。」


俺も挨拶を返した。

昨日までは、依頼を受けることだけで精一杯だった。

でも今日は違う。俺は掲示板を見る。依頼書が何枚も貼られている。薬草採取。魔物討伐。護衛。荷物運び。村の外の調査。


「結構あるんだな。」

「当然だ。」


レオンが隣に立つ。


「冒険者ギルドには、毎日いろんな依頼が来る。」

「どれにする?」


俺が聞くと、レオンは掲示板を見る。


「昨日のこともある。今日は無理をしない依頼にする。」

「分かった。」


俺は素直に頷いた。昨日なら「強い魔物を倒そう!」とか言っていたかもしれない。でも今は違う。

自分の力を知ることも大切だ。


「……これなんかどうだ?」


レオンが一枚の依頼書を取った。


「何?」


俺も覗き込む。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【薬草採取】

フィルネ村周辺に生息する薬草を採取してください。

必要数:20本

報酬:銀貨1枚

推奨ランク:F

備考:森の浅い場所で採取可能。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「薬草採取か。」

「そうだ。」

「魔物は?」

「基本的には出ない。」

「基本的には?」


俺が聞き返すと、レオンは苦笑した。


「森に魔物がいる以上、絶対とは言えない。」

「まぁ、そっか。」


昨日の巨大ホーンビットが頭をよぎる。


「……これにするか。」

「いい判断だ。」


俺たちは受付へ向かった。


「薬草採取ですね。」


受付嬢が依頼書を確認する。


「はい。」

「それでは、こちらの袋をお使いください。薬草は傷つけないように採取してくださいね。」

「分かりました。」


袋を受け取る。


「それと――」


受付嬢が俺を見る。


「昨日のホーンビット討伐、お疲れ様でした。」

「ありがとうございます。」

「……ですが。」

「?」

「森の奥には絶対に入らないでください。」


受付嬢の表情が真剣になる。


「昨日、別の冒険者からも報告がありました。」

「何の?」

「森の奥で、通常より大型の魔物を見たという報告です。」


俺とレオンの顔が変わる。


「……大型の魔物?」

「はい。」


受付嬢は頷く。


「正体は分かっていません。ですから、現在ギルドでも調査を検討しています。」


俺は少し黙った。もしかすると――

昨日の巨大ホーンビットのことか?


「レオン。」

「ああ。」


レオンも同じことを考えているようだった。


「昨日の魔物と関係があるかもしれない。」

「でも、まだ断定はできない。」

「そうだな。」


受付嬢が続ける。


「くれぐれも森の奥には行かないようにしてください。」

「分かりました。」

俺は答えた。今度は――

絶対に勝手なことはしない。

そう決めていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

俺たちは村を出た。森へ向かう。昨日とは違う。今日は森の奥へ行かない。浅い場所だけだ。


「なあ、リヒト。」

「ん?」

「薬草採取ってやったことあるか?」

「ない。」

「だろうな。」

「なんで分かるんだよ。」

「顔に書いてある。」

「どういう顔だよ。」


レオンが笑う。森に入る。

木々の隙間から、朝の光が差し込んでいる。

昨日とは違い、今日は妙に静かだった。


「……綺麗だな。」


俺は思わず呟いた。


「そうだな。」

「こういうところで暮らすのも悪くないかもな。」

「昨日死にかけた奴が言う台詞じゃないな。」

「さぁなんのことやら。」


俺たちは笑った。そして、薬草を探し始める。


「これじゃないか?」

「違う。それはただの草だ。」

「え?」

「薬草は葉の形が違う。」

「……見分けつかない。」

「覚えろ。」

「はい。」


レオンに教えてもらいながら、一つずつ採取していく。


「職業が鑑定士だったら一瞬でわかるんだがな。」

「なんか解放されてたな。」

「ま、時間をかけても探しまくれ。」

「はーい…。」


一時間ほど経った頃。


「……15本。」

「順調だな。」

「あと5本。」


俺は周囲を見渡した。

すると―


「あ。」

「どうした?」

「あそこ。」


木の根元。緑色の葉が数枚生えている。


「あれ、薬草じゃないか?」


レオンが確認する。


「……そうだな。」

「よし!」


俺は近づく。しゃがみ込んで、薬草を採取する。


「これで16本。」


そのとき。――ガサッ。


「……?」


茂みが揺れた。俺は立ち上がる。


「レオン。」

「動くな。」


レオンが剣に手をかける。茂みの奥から何かが出てくる。


「……魔物か?」


緊張が走る。そして――


「……?」


出てきたのは。小さな動物だった。茶色い毛。長い耳。


「……ただのウサギ?」

「ただの野生動物だ。」


レオンが剣から手を離す。


「びっくりさせるなよ……。」


俺は胸を撫で下ろす。すると、そのウサギがこちらを見る。そして森の奥へ走っていった。


「……。」


なぜだろう。俺はその姿をしばらく見つめていた。

昨日の巨大なホーンビットとは、まったく違う。

同じウサギのような姿でも。生き物としては、まるで別物だった。


「……行くぞ、リヒト。」

「うん。」


俺たちは再び薬草採取を始めた。

ウサギは森の奥に消えていった。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「なんです?このウサギ。」

「殺してしまえ。目障りだ。」


――ザシュ。


「――あ゛ぁクソが、前変な金髪にやられたとこが痛てぇ。」

「結局あの女ゴブリンには逃げられたし。」

「ねぇ、あんまり無利益な殺しをするのは辞めましょうヨ。」

「うっせ、黙ってお前は俺に従っとけやぁ。」

「――ハイハイ。」

「ま、何処かにゴブリンどもの住む場所があるでしょ。」

「すぐに見つけてとっ捕まえて売ってやるよ。」


レオンにやられた3人組は森の奥深く、ゴブリンの集落を見つけに進んでいった。

やることが終わってやっと書けるようになりました。

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