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反転術師は成長とともに  作者: ルーザー
1章 反転する運命

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15話 人を知る

レオンに手を引かれ、俺はゆっくりと立ち上がった。


「……痛っ。」


全身に力を入れた瞬間、体中から痛みが走る。


「無理に動くな。」

「大丈夫。ちょっと痛いだけだ。」

「ちょっと、ねぇ……。」


レオンは呆れたように俺を見る。


「さっき木に叩きつけられてたんだぞ?」

「……そうだった。」


言われてみれば、かなり危ない状況だった。俺は改めて、倒れている大兎を見る。

さっきまであれほど恐ろしかった魔物が、今ではもう動かない。


「レオン……こいつ、何なんだ?」

「俺も初めて見るタイプだな。」


レオンは大兎の死体へ近づき、慎重に確認する。


「ホーンビットの亜種……いや、普通の亜種よりかなり強い。」

「そんなに?」

「ああ。少なくとも、お前が一人で戦っていい相手じゃない。」


その言葉に、俺は黙り込んだ。俺はただ、ホーンビットをもう少し倒したかっただけだった。

レベルが上がるのが楽しくて。自分が強くなっているのが嬉しくて。

それだけだった。でも、その結果がこれだ。


「……俺、死ぬところだったんだな。」

「そうだ。」


レオンは即答した。


「俺が間に合わなかったら、かなり危なかった。」

「……。」


何も言えない。


「リヒト。」

「ん?」

「強くなるのはいいことだ。」


レオンは大兎から視線を外し、俺を見る。


「お前はまだこの世界に来たばかりだ。それなのに、たった一日で冒険者になって、副職まで手に入れた。」

「……。」

「しかも、戦うこと自体を楽しめるようになってきてる。」


レオンは少し笑う。


「それは悪いことじゃない。」

「じゃあ別に……。」

「でもな。」


レオンの表情が真剣になる。


「自分より強い相手がいるってことを忘れるな。」


胸に刺さる言葉だった。


「この世界には、お前が一度も見たことのない魔物がいる。俺ですら知らない魔物だっている。」

「……そうだよな。」

「レベルが上がったからって、自分が無敵になったわけじゃない。」


俺は自分の拳を握った。


「……分かった。」

「本当に?」

「本当に。」

「じゃあ次からは?」

「……レオンから離れない。」

「お前それ本気でいってんのか?」


レオンは苦笑した。


「まず、無茶だと思ったら逃げろ。」

「逃げる?」

「ああ。」


意外だった。


「冒険者って、強い魔物を倒市依頼をこなす仕事じゃないのか?」

「それは違う。」


レオンは即答した。


「生きて帰ることも冒険者の仕事だ。」


その言葉を聞いた瞬間、俺は昨日ヴェルノクス様に言われたことを思い出した。


――剣を学び、戦いを知り、人を知れ。


あの時は意味が分からなかった。でも、少しだけ分かった気がする。

強さだけを求めるんじゃない。

自分の弱さを知ることも、強くなるために必要なんだ。


「……レオン。」

「なんだ?」

「ありがとう。」

「さっきも聞いたぞ。」

「何回でも言わせてくれ。」

「はいはい。」


レオンは照れくさそうに頭をかいた。


「じゃあ、帰るぞ。」

「ああ。」


俺たちは森を抜けるため、歩き始めた。数歩進んだところで、俺はふと後ろを振り返った。

そこには、大兎が倒れている。


「……。」


俺はその姿をしばらく見つめた。もしレオンが来なかったら。もし俺があと少しだけ戦っていたら。

そう考えると、背筋が冷たくなる。


「リヒト、どうした?」

「いや……なんでもない。」


俺は前を向いた。そして、レオンの隣を歩く。今度は、絶対に離れないように。


◇◇◇◇◇


しばらく歩くと、森の出口が見えてきた。夕方の光が木々の隙間から差し込んでいる。


「やっと戻ってきたな。」


レオンが伸びをする。


「……長かった。」


俺も大きく息を吐く。依頼自体はとっくに終わっていた。それなのに、俺が欲を出したせいで、とんでもないことになってしまった。


「そういえば。」


レオンが何かを思い出したように言う。


「ホーンビットの角、ちゃんと持ってるか?」

「あ。」


俺は腰に付けた袋を見る。中には討伐したホーンビットの角が入っている。


「……あった。」

「よかった。」


レオンが笑う。


「じゃあ依頼達成の報告をして帰るか。」

「ああ。」


俺も笑った。今日の依頼で、俺はたくさんのことを学んだ。

レベルが上がった。

スラッシュのスキルも打ちまくって強くなった。

でも、それ以上に大切なことを知った気がする。


「……明日はもっと強くなろう。」

「お前、また無茶する気じゃないだろうな!?」

「しないって!」

「ならいいが…」


レオンは笑った。俺も笑い返す。

異世界に来て、まだ二日目。

知らないことだらけで、強い魔物に襲われて、何度も怖い思いをした。それでも――。


俺はこの世界で生きていく。


そして、いつかレオンに助けてもらわなくても、自分の力で誰かを守れるくらい強くなる。

それが、俺の最初の目標になった。

更新遅れてごめんなさい。

色々やることがあってなかなか書く時間がありませんでした…。

また不定期にはなりますが、見てくれるとありがたいです。

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