14話 傲慢
大兎の腕が地面に落ちる。
「ギャァァァァッ!!」
苦しそうな叫び声が森中に響いた。
俺はゆっくりと顔を上げる。
そこには金色の髪を揺らしながら剣を構える男が立っていた。
「レ……オン。」
「悪いな。すぐに異変に気づけなくて。」
レオンは俺から目を離さず、小さく笑う。
その笑顔を見た瞬間、張りつめていた気持ちが一気にほどけた。
「立てるか?」
「……なんとか。」
「無理はするな。あとは俺がやる。」
レオンは一歩前へ出る。
大兎は怒りで目を赤く染め、大きく咆哮した。
「グギィィィィッ!!」
地面を蹴り、一瞬でレオンとの距離を詰める。
速い。
さっき俺にはまったく見えなかった動きだ。
しかし――
「甘い。」
キィン!!
剣と爪がぶつかり、鋭い金属音が響く。
「なっ……。」
思わず俺は声が漏れた。
レオンは真正面からその攻撃を受け止めていた。
「力はある。でも、それだけだ。」
レオンは体をひねり、大兎の体勢を崩す。
その隙を逃さず、一閃。
シュンッ!!
「ギャッ!!」
大兎は後ろへ飛び退く。
「へぇ……まだ立つのか。」
レオンは感心したように笑う。
「なら、もう少し付き合ってやるよ。」
大兎は再び飛びかかる。
右、左、上。
連続で攻撃を繰り出すが、そのすべてをレオンは紙一重でかわしていく。まるで相手の動きを最初から知っているようだった。
「す、すごい……。」
これが本物の冒険者。これがBランク。
俺との実力差は、想像以上だった。レオンは静かに剣を構える。
「終わりだ。」
剣が淡い光をまとった。
「《スラッシュ》」
俺とは比べものにならないほど鋭い一撃が放たれる。一瞬の静寂。次の瞬間――
ズバッ!!
大兎は動きを止め、その場に崩れ落ちた。
森は静けさを取り戻す。
レオンは剣を鞘に納めると、俺のほうへ歩いてきた。
「言っただろ。」
「……。」
「調子に乗るなって。」
その言葉に、俺は何も言い返せなかった。
悔しい。
でも、その通りだった。レベルが少し上がっただけで、自分は強くなったと勘違いしていた。
レオンはため息をつきながら手を差し伸べる。
「帰るぞ、リヒト。」
俺はその手をしっかりと握った。
「……ごめん。」
「反省してくれたなら、それでいい。」
その一言が、不思議なくらい胸に響いた。
この日、俺は初めて知った。
強くなることと、慢心することはまったく違うのだと。
魔物紹介ターイム✩
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《ホーンビット》
推定ランク:F
見た目は角の生えた小型のウサギの魔物。 体長は約40~60cmで、草原や森の浅い場所に生息している。
臆病な性格だが、一度敵と判断すると鋭い角を使った突進を仕掛けてくる。 脚力が高く、逃げ足も非常に速い。
群れで生活するため、一匹見つけても周囲に仲間が潜んでいる場合がある。
危険度:★☆☆☆☆
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《ジャイアントホーンビット》(大兎)
推定ランク:D
ホーンビットの突然変異、または上位種と考えられている大型の魔物。
体長は約2.0~3mにも達し、異様に長い手足と巨大な角を持つ。 通常のホーンビットとは比べものにならない身体能力を誇る。
俊敏性が非常に高く、攻撃を見切るのは容易ではない。 縄張り意識が強く、自分の縄張りへ侵入した者を容赦なく襲う。ホーンビットと稀に行動しているため注意
危険度:★★★☆☆
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