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反転術師は成長とともに  作者: ルーザー
1章 反転する運命
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11/17

6話 魔物は本当に悪なのか

「……ん。」


重い瞼をゆっくりと開く。柔らかな草の感触。頭が少しぼんやりする。


「ここは……。」


体を起こすと、隣で誰かが腕を組んで座っていた。


「おっ、起きたか。」

「レオン!」


思わず声が大きくなる。


「無事だったんだな!」

「ああ。お前が眠らされたあと、俺も武器を預けて話し合いになった。」

「話し合い?」


俺は辺りを見回した。そこは村というより、小さな集落だった。木を組んで作られた簡単な柵。枝や葉で作られたテントが六つほど並び、中央では焚き火が燃えている。集まっているのは十匹ほどのゴブリン。子どものゴブリンが二匹。年老いたゴブリンが一匹。他は大人らしいゴブリンたちだった。

みんな警戒しながらも、俺たちをじっと見つめている。


「本当に……ゴブリンの集落なのか。」


俺が起き上がると、小さな足音が近付いてきた。


「あっ!」


昨日助けた少女だった。髪は緑色で、肌は薄い緑色。耳はとんがっており、おでこに小さな角が生えている。


「起きた!」

「君は……。」

「お兄ちゃん!」


少女が振り返る。そこへ昨日の青年が歩いてきた。彼女とは違って少し角が大きい。


「目が覚めたようだな。」

「昨日はいきなり眠らせて悪かった。」

「いや……まぁ、生きてるからいいけど。」


青年は小さく頭を下げた。


「俺の名前はゼノ。こっちは妹のリアだ。」

「リアです。」


少女は少し恥ずかしそうに頭を下げる。


「俺は理仁。まぁ、よろしくな。」


軽く自己紹介を済ませる。しかし、どうしても気になることがあった。


「聞いてもいいか?」

「何だ?」

「二人だけ……見た目が人間にそっくりなのは何でなんだ?」

「お前最初にそれ聞くのか?!」


レオンは呆れたように言った。


「だって気になるじゃん…。」

「やっぱ気になるか…。」


ゼノは少し顔を曇らせながら言う。


「普通のゴブリンは、君が見ている通り、あんな姿をしている。」


ゼノは周囲で暮らす仲間たちへ視線を向ける。緑色の肌。大きな鼻。鋭い牙。人間とはまったく違う姿。


「俺とリアだけが、生まれつきこの姿だった。」

「生まれつき?」

「あぁ。」


ゼノは自分の小さな角へ触れる。


「角と耳、肌の色以外は、人間に近い。理由は誰にも分からない。長老も知らない。」

「昔から、たまにこういう子が生まれるらしいの。でも本当に珍しい。」

「そうなのか……。」


リアが少し寂しそうに笑う。


「昔はみんなと違うから嫌だった。でも、お兄ちゃんが『リアはリアのままでいい』って言ってくれた。」


ゼノは少し照れくさそうに頭をかいた。


「ふん、兄として当然だ。」


思わず笑ってしまう。見た目は違っても、この兄妹は普通の兄妹だった。その時、小さなゴブリンの子どもが転んだ。リアはすぐ駆け寄り、その子の手を引いて立たせる。


「大丈夫?」

「ギィ!」


子どもは嬉しそうに笑って走っていく。その光景を見て、俺は気付いた。魔物だから怖い。そう決めつけていた。でも、ここで暮らしているゴブリンたちは、笑って、助け合って、生きている。人間と何も変わらない。


「……俺、勘違いしてたのかもしれない。」

「ああ、俺もさ。リヒト。ちゃんと理性を保てるゴブリンもいるんだな。」


ゼノは静かに頷いた。


「俺たち魔物にも家族がいる。守りたい仲間がいる。それだけは、人間と同じだ。」


なんだろう、どうしてもゼノ達を魔物として見ることができない。いや、本当は魔物なんだろうけどどうしてもそう見ることができない。


「いま、俺達ゴブリンを殺せないと思ったな。」


ゼノが俺の心を見透かしたかのように言う。


「まぁ、全員が俺達みたいに理性とかがあるわけじゃない。もしも襲われたら倒してやってくれ。」

「だ、だが…。」


レオンが少し戸惑っているように声を出す。


「俺たちは、人間と争いたいわけじゃない。 だから、もし他のゴブリンに襲われたら遠慮なく戦ってくれ。 ただ……俺たちのような者まで、最初から敵だと決めつけないでくれると嬉しい。」


ゼノは不器用に笑った。


「俺の妹を助けてくれてありがとうな。レオン、リヒト。」


正義と悪ってなんなんだろう。

こいつらを襲った『人間』。

俺達を見逃してくれた『魔物』。

俺の価値観が大幅に変わった。人間も全員が正義とは限らない。いい魔物だっている。そんなことをゼノやリアは教えてくれた。

そんなことを考えていたその時だった。 

ピコッ。

【レベルが上がりました】

「え?」

俺は急に目の前に出てきたステータス画面を咄嗟に見た。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

レベルアップ

斎藤 理仁 

Lv2 → Lv4

経験値

0/100

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

能力上昇


HP:110 → 130


MP:85 → 95


筋力:15 → 20


魔力:15 → 22


俊敏:12 → 16


器用:14 → 18


精神:22 → 30


幸運:5 → 6

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【本職】

反転術師

Lv2 → Lv3

職業経験値

0/1000

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ユニークスキル】

《成長》

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【称号】

《ゴブリンの恩人》を獲得。

・ゴブリン族から一定の信頼を得た者。

・ゴブリン族に対する敵意を向けられにくくなる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

そっか、善行でもしてもレベルは上がるのか。思わぬ収穫だった。ていうか全然反転術師レベル上がるじゃん。けど次は必要経験値1000か…。成長に頼るしかないな。


「レオンはレベル上がったか?」

「ああ、上がったぜ。」


レオンもレベルが上がっていたようだ。


「まぁ、少し長居しすぎたからな。1回帰るぞ、リヒト。」

「あの…。もう帰っちゃうんですか?」


リアが少し残念そうに言った。


「なぁにまたいつか会いに来るさ。」


レオン。こいつ本当にイケメンじゃん。くそったれ。


「うん。楽しみにしてるね!!」


リアが笑った。この子の笑顔は可愛いな。

俺達は集落の出口へと移動する。


「世話になった、ゼノ、リア。」

「あぁ、またいつか会おう。リヒト、レオン。」

「また会おうね〜!!」


俺とレオンは集落を出た。


「……。あいつらいいやつだったな、レオン。」

「あぁ、少し魔物を倒すのをためらってしまいそうだ。」


少しずつ森の出口へ近づいた時、レオンが震えるような声を出した。


「な…なぁリヒト……。」

「ん?どうしたレオン。なんか集落に忘れ物したか?」

「いや、そうじゃなくて……。」


俺達は一番だいじなことを忘れていた。


「依頼って、どうすればいいと思う?」

「あ゛……。」


二人とも同時に頭を抱えた。ゴブリン討伐依頼。ゴブリンを一匹も倒していない。……完全に依頼失敗である。俺にとって初めての依頼は予想外すぎる結末で終わった。

次回は少し閑話を挟みたいと思います。

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