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反転術師は成長とともに  作者: ルーザー
1章 反転する運命
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5話 ゴブリン?

フィルネ村を出てから三十分ほど。俺とレオンは、村の北に広がる森を歩いていた。鳥のさえずりが響く。見た目こそ穏やかだが、ここは魔物の棲む森だ。


「そういえば。」


前を歩いていたレオンが口を開いた。


「リヒトはゴブリンについてどれくらい知ってる?」

「何にも知らないな。」

「なら簡単に説明しておこう。」


レオンは歩きながら話し始めた。


「ゴブリンは群れで生活する魔物だ。一匹一匹は弱い。でも数が集まると厄介になる。」

「やっぱり集団戦が得意なんだ。」

「あぁ。木の棒や錆びた剣なんかを使う個体もいる。知恵もそこそこあるから、囲まれたら危険だ。」

「なるほど……。」


思っていたより賢いらしい。


「それと、基本的には人間を襲う。だがごく稀に、人間並みの知能を持つ個体がいるって噂はある。まぁ、俺は見たことないけどな。」


レオンの声が少し真剣になる。


「まぁ、討伐依頼は多い。村の近くに巣を作られると被害が出るからな。」

「そういうことか。」


俺は素直に頷いた。しばらく歩くと、レオンが立ち止まる。


「そうだ。」


腰の後ろから一本の剣を取り出し、俺へ放り投げた。


「ほら。」

「うわっ!」


慌てて両手で受け止める。革の鞘に収まった鉄の剣。少し使い込まれているが、しっかり手入れされていた。


「木の棒じゃ戦えないだろ。」

「貸してくれるのか?」

「今回だけな。壊したら一緒に稼いで返してもらう。」

「……。ありがとうな。」


人生で初めて握る本物の剣。ずっしりとした重みが妙に心強かった。


「そろそろゴブリンの縄張りだ。」


レオンは盾を構える。


「気を引き締めろ。」

「了解。」


俺たちは慎重に森の奥へ進んでいった。その先で、自分の価値観が変わる出来事が待っているとも知らずに。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

数分後。


「……静かだな。」

「いつもなら一、二匹くらい見かけるんだが。」


レオンが辺りを警戒する。その時だった。

ガサガサッ!

少し離れた茂みから物音が聞こえた。


「いたか!」


俺たちは気配を消しながら近付く。だが、そこにいたのはゴブリンではなかった。


「離して!」


幼い少女の声だった。木の陰から様子をうかがう。


そこには十歳くらいに見える女の子がいた。緑色の短い髪。額にはすごく小さな一本角。耳は少し尖っている。だが、それ以外は人間とほとんど変わらない。少女は三人の男に囲まれていた。

黒いマントを羽織り、不気味な笑みを浮かべている。


「やっと見つけたぞ。」

「逃げ回りやがって。」

「今回は高く売れそうだ。」


売る?俺は思わず眉をひそめた。

レオンも小さく舌打ちする。


「あいつら……。」

「知ってるのか?」

「村の近くで子供を拐っては奴隷にしているクソ野郎だ。」

「なんでこんなところに…。」

「犯罪職に就いた連中だ。まともな奴らじゃない。」


男の一人が少女の腕を掴もうとする。少女は必死に振り払った。


「いやっ!」


その姿を見た瞬間。レオンは飛び出していた。


「そこまでだ!」


三人の男が一斉に振り返る。


「冒険者か。」

「邪魔する気か?」

「当たり前だろ。」


レオンは盾を構え、剣を抜いた。


「女の子を囲んで何をしてる。」


男たちはニヤリと笑う。


「お前には関係ない。」

「その女は俺たちの商品だ。」

「商品だと?」


レオンの目付きが鋭くなる。


「リヒト!」

「分かってる!」


俺も剣を抜いた。初めての実戦。足が震える。それでも逃げるわけにはいかなかった。男の一人が斬りかかってくる。

ガキィン!

レオンが受け止める。もう一人が横から回り込む。


「させるか!」


俺は剣を振るう。

ギィン!

相手の剣とぶつかり、腕が痺れた。強い。だけど。

ゲームで敵の動きを読む癖が役に立ったのか、なんとか反応できている。


「チッ。」


三人は俺たちの様子を見て距離を取る。


「あの剣士が面倒だ。」

「今日は引くぞ。」

「覚えてろ。」


そう言い残し、三人は森の奥へ走り去っていった。


「逃げたか……。」


レオンが剣を下ろす。俺も安堵して息を吐いた。


「大丈夫?」


少女へ近付く。少女は怯えた表情のまま俺たちを見つめていた。その時だった。

シュッ!

風を切る音。一つの影が木の上から飛び降りた。


「誰だ!」


レオンが剣を構える。現れたのは若い男だった。少女と同じ緑色の髪。額には一本角。人間によく似ている。


「お兄ちゃん!」


少女が男へ駆け寄る。兄妹だったのか。青年は妹を後ろへ隠すと、俺たちへ木刀を向けた。


「待ってくれ!」


レオンは剣を下ろし、両手を見せる。


「俺たちは敵じゃない!」


しかし青年は警戒を解かない。


「ニンゲンは信用できない。」


その瞬間だった。俺には地面を蹴る音すら聞こえなかった。レオンは少し反応したようだ。


「え?」


気付いた時には目の前にいた。

コツン。

木刀が俺の頭へ軽く触れる。

痛みはほとんどない。だが。


「……あれ。」


急に視界がぼやける。足に力が入らない。


「リヒト!」


レオンの声が遠くなる。


「安心しろ。」


青年が静かに言った。


「眠ってもらうだけだ。」

「待て!!1回話を―――」


俺の意識は、レオンの言葉を聞き切る前に暗闇へ沈んでいった――。

少女はゴブリンです。

何言ってるのかわからないと思うけどゴブリンです。

青年もゴブリンです。

でも人間のような姿です。

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