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続・片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww〜辺境伯編〜  作者: 康成


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閑話「補佐官ジャスウェルはガチ勢」

「ジャスウェル、頼みがある」

 リシアン様がこんな夜更けに息を切らしてやって来た時点で只事ではない。そのお顔にいつもの余裕はなく、見た事がないまでに真剣で……心の中で拝む。

 これはきっと滅多に見られるものではない、ありがとうございます。

 この思っている事をそのまま伝えると、ひどく嫌そうな顔をされるので最近は黙っている。顔は真剣、内心ではお祭り騒ぎが最近の標準装備だ。

「何でしょうか?御用命が何であろうと拝命します」

「そこは聞いてから答えろよ」

 と言うリシアン様は、やっと表情を少し緩めた。……こちらは真剣だというのに。


  

 リシアン様のお話をまとめるとこうだった。

 先程、辺境大森林にて正体不明に魔獣に冒険者が襲われたこと。彼らのパーティーランクはBランクであり、かなり危険度が高く新種か変異種の可能性が高い。更にこれは……人為的に行われたかもしれない、との最後の一言で一気に緊張感が高まる。

 そのため第三騎士団に緊急派遣要請をするので、書簡を王城に届けてほしいとのことだった。

 事態を聞くほどに、この判断の速さは流石です。今すぐにでも!という私をリシアン様が止める。

 夜明けまでに書簡をトピリア侯爵と連名で作成するし、準備もあるだろうから待てと言われて立ち止まる。


「あともう一つ頼みがある。こちらは出来る限りでいい。周辺領や王都までの道程で、他にも似たような事例はないかの調査の依頼もしたい」

 そのお言葉にぞくっとした。リシアン様には補佐官として派遣されたとしか言っていない。

 クレメンテ様ですら、そう思っている。辺境に来る直前の所属は王城広報官。その前は新聞記者だが、その頃からずっと……私の本来の所属は第四騎士団である。

 辺境大森林を挟んだ先にはモンテディオス王国がある。哨戒もまた私が請け負う任務の一つだが、この事にお気付きなのだろうか?

 

「書簡は……別の方法でも送る予定だから、ジャスウェルにはなるべく情報を集めてほしい。情報収集が得意だもんな?」

 あと騎士に知り合いがいるって言ってたし、と続くお言葉はあまり耳に入ってこない。

 別の方法は緊急徴用便制度だろう。それがあるなら、少し情報収集に時間をかけても問題はないだろうと思う。

 何よりも、リシアン様が!私の能力を買ってくれて依頼をしている事実に心のお祭り騒ぎが止まらなかった。



 ◇──◇──◇──◇──◇


 王都へ急ぎながら、ここまでの情報を改めて見直す。……誤差の範囲といえばそれまでだが、バラクロフ伯爵領で通年よりも隣国から商人や冒険者の流入。

 気にし過ぎで流せないのは、ここが西側……モンテディオス王国から辺境大森林を越えずに辿り着く唯一のルートだから。

 最近、モンテディオス王国からやって来た冒険者パーティーもこのルートから来ている。


 同じく隣国から移動して来た冒険者のルカさんもいるが、彼だけは森を越えて来たので随分と到着は早かった。

 そんなルカさんのことはしばらく警戒していたが、特に怪しいところはない。それでも気になって、今も警戒と観察は続けている。

……断じてリシアン様と仲が良いからという理由ではない。羨ましいけど!激しく羨ましいけど、それだけが理由では……ないと自分に言い訳をする。


 さて、王都に着いたらどうやってこの書簡を届けるのが最速だろうかと考えを巡らせる。

 ああでもないこうでもないと必死に考えていたのは結局、無駄となった。

 道中で騎士団と鉢合わせた。まさか、辺境に向かっているとかではないよな?何処かで魔獣被害でもあったのだろうか。

 ただ、第二と第三騎士団の混成はそれだけだと納得出来ない。……人為的な可能性がある魔獣の襲撃、これにモンテディオス王国が絡んでいるとしたら?


 隊列に貴族学院時代の同期の姿を見つけたので、呼び止める。

「ジャスウェル?こんなところで何を……辺境領に行ったんじゃなかったのか?」

「辺境伯のリシアン様から王都へ向かうよう、指示されている。……なぁ、この隊列は?」

 まさかなと思いながらも尋ねる。

「あぁ、辺境に向かってるよ!緊急派遣要請があったから」

 なぜもうその情報が届いている。緊急徴用便制度でもあり得ないくらい早い。いや、これを使えばかなり早く届くが……何をどうしたらもう王都へ情報が?

 リシアン様、貴方はまた何か私の想像もつかない事を成し遂げたのですねと感動した。


 同期の騎士にもっと詳しくと食い下がっていたら「辺境伯が寄越したんだし……とりあえず、アグニスもいるから聞いてみるか」と半ば無視されながらそちらへと向かう。

「アグニス、ちょっといいか?」

 ある馬車の前を並走しながら、声を掛けている。多少は遅れてもいいのだろう。程なく馬車は止まった。

 何事かと出て来たアグニス様に説明をしている。

「ジャスウェルも書簡を持たされたのか……ちょっと待て、今この馬車には同じく書簡を受け取ったレオナリス様がいるので」


 レオナリス様といったらリシアン様の尊敬してやまないあのお兄様じゃないですか!これは挨拶をせねば!

 そしてあわよくばリシアン様のお話を色々と伺いたい。

「……あっ、ちょっと待て!」

 突然に動き出した私を止めるのにそれは少し遅く

「リシアン様のお兄様ですか?!リシアン様には大変お世話になっております。広報官のジャスウェル・ラルストンです!」

 取り乱すこともなく、出迎えてくれた。流石はあのリシアン様のお兄様だ。


 私が持たされたのと同じ内容の書簡は本当に王城にいたレオナリス様へと届いていた。

 半信半疑ではあったが、リシアン様がお兄様へとなさった事だから間違いなく本物である。一体何を?まさか新たな魔法の術式を生み出されたのだろうか。とんでもなく高度な……!

 一人で盛り上がっていたら、アグニス様からレオナリス様が困っているからと止められた。

 そして、バラクロフ伯爵領の違和感を伝えると、顔色が変わって騎士団長へ報告に向かうと言う。さらには着いてこいと……。


 待ってくれ、それは流石に困る。騎士団長は私が第四騎士団に所属だと知っているんだよ!この事はアグニス様には隠しているし、そんな二人に囲まれるなんて非常に面倒くさいではないか。

 嫌だ嫌だと言っていたが、レオナリス様が私の働きをリシアン様に伝えてくれると言う。

「はい、すぐに行って参ります。必ず戻ってきますので何卒よろしくお願い致します」

 深々と頭を下げる私に、レオナリス様はずっと穏やかに微笑んでおられた。

 

 面倒な上司……もとい騎士団長への報告さえ終われば夢のような時間だった。レオナリス様から聞くリシアン様のお話は、どれも初めて聞くことばかりでとても有意義だった。

 途中、誰かが私に会いに来ていると言っていたが見向きもせずに断った。私は今、レオナリス様からリシアン様のお話を聞くのに忙しい。


 そして到着した辺境の地。つかつかと近寄って来た侍女の制服を着た人を見て固まる。

「……ちょっと。なぜかあなたがいると聞いたから、何度か会いに行ったんだけど?」

 妻も同じく第四騎士団所属で……主に貴人警護のため、侍女に扮することが多い。

「……ごめん」

 ともに隣国からやって来たという侍女に、現在の警護対象である第二王女殿下に一番近いポジションを取られたと機嫌が悪い。しばらく怒涛の勢いで愚痴を吐き捨ててから、妻は立ち去っていった。

 さて、どうやって機嫌をとろうか……難題だなぁとその後ろ姿を見送った。

ジャスウェルは前作の後日談「新年祭」にてモブ貴族だった人(あの話の冒頭を含む一部はジャスウェル視点です)


【各騎士団について】


第一騎士団……エリート中のエリート。王族の身辺警護を担い、護衛騎士などが所属する。


第二騎士団……有事の際に最前線へ出動する実働部隊。魔法・剣技ともに高水準で、対応力に優れる。


第三騎士団……対魔獣戦に特化した部隊。冒険者もCランク以上であれば試験を経て加入可能。


第四騎士団……国境の哨戒および情報収集を担っている。その中でも名簿に記載されない特殊部隊の構成員は、運輸部・財務部・民間の新聞社などに身分を置き、表向きは各職務に従事している。

※王家の影は王族の管轄。第四騎士団と兼任している者もいる。

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