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続・片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww〜辺境伯編〜  作者: 康成


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春編25話「会合」

「柵はこのくらいあれば?」

「いや、もうちょっと広くしといて!」

 冒険者と猟師とで、館の周辺の整備を突貫で始めている。森への立ち入り制限が決まって、持て余したやつらに仕事を割り振ってる。体力のあるやつらが多いし……多少雑なとこがあっても今はスピードがほしい。


 やっと火乃が帰ってきたかと思えば、辺境への派遣人員リストを持参していた。これがあると受け入れ体制を整えるのにめっちゃ助かる。

 まずはざっと人馬の数を把握したいが、気になる名前がチラホラと目について気が逸れる。

「あ、レオ兄さんも来るんだ」

 医官部からの派遣人員の一番最初に「レオナリス・ヴァルディリア」とあるのを見つけた。

『うん!火乃が王様にお願いしたから、兄上来るよ!うれしい?』

……今、何て言った?王様にお願いって国王陛下にとか言い出さないよな。ギンさんであれ。あの人は王弟だけど……火乃の言い間違いであってほしい。


「レオ兄さんが来てくれるとうれしいし助かるけど、王様にお願いって何?」

『リシアン、王様にすぐ伝えなきゃって言ってたから火乃がちゃーんと伝えてきたよ!』

 言ってた気はする。早く国王陛下に伝えて第三騎士団の派遣要請をとか師匠たちと話していたな。

「まさかとは思うけど、直接じゃないよな?レオ兄さんに頼んだよな?」

 すげぇ嫌な予感しかしないんだけど。


『火乃、人間の言葉もお話できるから!王様のお菓子、とってもおいしかった!いつでも遊びにおいでって言ってたよ。……またお使いある?』

 

――終わった……。


 さすがの俺も王城大混乱になったであろう事は想像がつく。

 気を取り直して……というか、聞かなかったことにしてリストに目を通していく。派遣人員の先頭にあるのはルイシン様の御名前。その真下のカナロア・ローダウェルが気になって仕方がない。騎士団長じゃん!何で?!

 人員リストの下にはまだ数枚の手紙が続いていた。


 モンテディオス王国による魔獣改造と人為的集団魔獣暴走(スタンピード)から始まる文章を読みながら、師匠とクレメンテを今すぐ呼ばなければと思った。

 最後まで目を通すと「取り急ぎ重大事案のみ。詳細についてはまた火乃くんを派遣してください」と書いてあった。さらにはその部分だけやたらと大きく、達筆な宰相の署名とともに強調されている。

 なぜ隣国からの侵攻よりもこの部分を主張したのか意味が分からないが、何か……きっと王城では重要なんだろう。俺にはそのへんよく分かんないけど。偉い人がそう言ってんならこれはきっと大事なんだろうなと思う。

 

「……火乃、もっかいお使いにいける?注意事項は」

『分かった!行ってくる!』

 聞けよ、注意事項も。今度からは先に言い含めてからじゃないといけないことを学んだ。

 あぁ、火乃はトゥーリにこっちの言葉を教えろと言ったときもこんな感じだったな……と何もないところを見つめることしばし。

「師匠、クレメンテ……あとギルド長と街の代表者も呼ぶか」

 のろのろと立ち上がる。ここからまたやることは多い。



 ◇──◇──◇──◇──◇


 冒険者ギルドの会議室に各業態の代表者が集った。それと高ランク冒険者パーティーのリーダーも数人。

「資料をお配りします」

 着席した参加者にそれぞれクレメンテが一部ずつ配布していく。行き渡ったところで

「森で集団魔獣暴走の予兆が確認された。すでに第三騎士団の派遣も国へ要請している」

 何で俺が進行しないといけねぇんだよ、この面子でさぁ。


「森で変異種の魔獣一体、こちらは討伐済。差し迫った脅威はないが備えは必要だ。隣接の領にも受入要請は出しているので、事態が落ち着くまで避難しても構わない」

 特に託児院の子どもたちの受入先を探すのが難しい。他領へ交渉中だけど中々色よい返事が来ない。託児院の代表も険しい顔をしている。

「街への被害は出すつもりはない。騎士団が間に合わなくても、冒険者で食い止める」

 

「当たり前だろうが!おい、ついに準備していた武器が火を吹く時が来たぞ!!」

 何で冒険者より先に武具関連の代表たちが先に盛り上がってんだよ!

「ついに来たか!積年の恨み、今こそ晴らしてやらぁ……」

「改造を……まだ威力は上がるはずだ。お前、絶っっっ対に使えよ」

 そして気軽に数少ないAランク冒険者に絡み始めるな、やめてやれ。このへんはなぁ……まぁ前回の集団魔物暴走を体験している世代だし、思うところもあるんだろう。


「騎士様が来るの?!やだ、うちからいっぱい差し入れ持って行く」

「料理人なんていないでしょ?私たちで持ち回りで食事の準備はするからね!」

……騎士団は女性陣から相変わらず熱狂的な人気だな。いつもの第三騎士団以外に、今回は第二騎士団も来ることは黙っとこう。あと今回は料理担当もフツーにいると思う。

 魔法と剣技に優れた第二騎士団は……何というか貴族らしい貴族が多いというか、たぶん辺境の民にはいっそ目の毒だ。知らないほうがいいことはきっとあるはず。


「馬の世話なら任せてほしい」

「薬師は……バルドレム師とリシアンがいるなら、大丈夫か。街の方は任せとけ」

 口々にそれぞれが出来ること、そして誰も逃げるつもりはないことは理解したが薬師代表。何で同業なのに俺と師匠の二人で何とかなると思ってんの?お前らは交代要員を寄越せ。


 一通りまとまったところで、詳細は各業態それぞれで話を詰めたらまた報告してもらう。一先ずはここまでかな。

 また次の会合が決まれば伝えるとして、本日はここまで。人がはけて静かになった部屋の鍵を閉める。


 

「さて、ここからは本命の会議ってことで」

 残っているのは師匠、クレメンテ、冒険者ギルド長夫妻だけになる。最初にクレメンテが自ら、一人ずつ資料を渡したのはこの三人だけを残したかったから。


「私もなの?」

 先程まではまるで存在感がなかったが、さすがは「館」の(あるじ)。今は雰囲気たっぷりだし、絶対これ分かってて聞いてるよね。ギルド長が頭が上がんないのも分かる。

「もちろん、(あね)さんにはどうしてもお願いしたいことがありまして」

 もちろん、俺もこの人には逆らえる気がしないので気を引き締めた。


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