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88 ホリィ、少し強硬に言ってくる

  千本杖が生まれたとき、この国の王族と貴族は神々によって魔法が使えるように作り替えられた。そこで王族と貴族はそれまでと違う種族になった。

 つまり、貴族が平民を蔑んで言う、人間の種類が違う、というのは事実ではあったということになる。

 とは言え、だから何、というのが私の感想だ。それは前も今も変わらない。いろいろと腑に落ちた点はあるが、でもそれだけ。

 例えば、貴族と平民の間に子どもがほぼできないこととか。種族が違えば、それも当然か。ただ、ときたま子どもができるというのが理解できないんだけど。

 部屋に戻ってからホリィに訊いてみると、ホリィは事もなげに言った。

「そりゃあ、神々の配慮があって魔法を使える者とそうでない者との間に子どもが発生することもあるわよ」

「配慮?発生?」

「そう。このつがいに子どもができたら、その子は将来意味のある働きをしてくれそうだな、とか。そういう、天の配剤っていうか、配意ね」

 ホリィの口振りには神々の傲慢さを感じたけど、それはひとまずおいておいて、自然に思い浮かんだ疑問を口にする。

「じゃあ、クロウも?」

「あの子は違うわね。父親は今は魔法を使えないみたいだけど、そもそもは使えた側の人間だから。まあ、作り替えのときに生殖の領域にまでは影響が及ばなかったんじゃない?」

「作り替えって、何?」

「千本杖が生まれたときとは逆のことが起きたってことね。何かの原因で死にかけて、そのときに凄腕の治癒術使いに治療されたけど、同時に魔力を扱うための回路が引き剥がされたのよ」

「ルートヴィヒが魔力を使えなくなったのと同じことが起きたってこと?」

「そうね」

 ホリィはあっさり言う。

 話をきいていて、私は頭がこんがらがってきた。

「私、クロウの父親は平民だってきいてたんだよね。でも、今の話だと、貴族だったってこと?」

「そうねー。この国だと、魔法を使えなくなると平民になっちゃうらしいから、魔法を使えなくなったときに貴族じゃなくなったんじゃない?」

「……じゃあ、クロウって平民と貴族の子じゃなくて、貴族同士の両親から生まれたってこと?」

「そうなるわね。それがどうかしたの?」

 いやまあ、それはそうなんだけど、それってつまり、宴の参加者のうち、完全な平民は私一人ということなんじゃ。だからどうだっていうのはあるけど、宴の最中に何かあって一人が犠牲にならないと、とかいうようなことがあったときに、真っ先に私が生け贄にされるようになるのでは。

「ところであんた、あんたが魔法を使う話はどうなったのよ」

「それなんだけど。あのさ、宴って、神々が世界が消滅しそうなときに、人間がどれだけ助けになるかを見るために行われるって言ってたよね?で、そもそも世界が消えないようにするためには魔力が必要なんでしょ。なのに今回みたいに魔素術師にも参加しろ、っていうのがよくわからないんだけど」

 ホリィは少し黙っていた。私の肩に止まっていたシュルが、クル……と鳴き、それをきいたホリィが改まったように話し始めた。

「魔素術は、世界の安定のために必要なのよ。そして、魔法は世界を保つために必要なの」

「それって違いがあるの?」

「あるわよ。世界を保っても、安定させないと意味ないでしょ。とにかく、あんたは魔法を使えるようにならないと。じゃないと、宴の場で立ってもいられないかもしれないわよ」

「いや、魔法を使おうと努力はしてるって、あんたも知ってるでしょ?羽衣を使ったら魔力を発するところまではできてるじゃない」

 学院の練習場で、ジェニファと一緒に練習を続けているのだ。そういうときにホリィに頼んで羽衣を出してもらったりしていて、そういうときにジェニファが、私が羽衣を介して魔力を発している、と言ってくれたりしているのだ。

 ホリィはため息混じりに言う。

「ただ漫然と魔力を発しているだけじゃないの。それだけじゃ足りないわ。やっぱり完全に羽衣の力を解放しないと」

「いや、羽衣の力を解放するって、それってつまりああいう、アニメのキャラクターが着てたような格好するってことでしょう?それは嫌だってば」

「四の五の言ってる場合じゃないわよ。いいこと、あんたが魔法を使えないまま宴に出たら、世界も安定しなくてあんたの家族とか友だちとかまで生きていられなくなるかもしれないってこと、よく考えなさいよ」

「それって大袈裟でしょ。本当に世界の危機がきているわけじゃないのに」

「そうね。でも、宴に出たらあんたの命が危ないかもしれないっていうのは本当だからね?でもって、私はあんたに死んでほしくないって思ってるのよ。だからこれだけ言ってるのに、あんたはまあ……」

 私は虚を突かれたような思いがした。まさかホリィがそんな私情を持っているとは思わなかったからだ。

 ホリィは照れ隠しのように辺りをせわしなく飛び回りながら、

「まあ、前世の話題で盛り上がれる相手なんてそうそう出くわさないからね。とにかく、本気で考えてよ。このままなら私も考えがあるんだからね!」

 と言うなり、外に飛び出ていった。


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