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71 従者になりたい理由

「それじゃ、どうしてフロリゼルが従者になって宴に行きたいのか、その話をしようか」

 ファラーグ先輩の言葉に、マリちゃんがおずおずと手を挙げた。

「あの、私もきいていい話なんですか?私、先輩のお家の事情とか知らないし……平民だから知りようもないというか」

「それを言ったら、私だって関係ないよ?侯爵家とか伯爵家とかの事情なんて、うちみたいな名ばかり貴族には縁遠い話だし」

 ジェニファがマリちゃんに言う。

 ガリエス先輩は声を潜めて言った。

「リーヌ・フォロ、君は無関係じゃない。先日、連休中に君の実家で大きな破壊行為があったが、それをやったのは俺の家をめちゃくちゃにした犯人だ。俺はそいつをずっと以前から調べていたんだが、ここ最近のそいつの動きからすると神々の宴に絡んでくると予想されるから、従者として宴に行きたい。できれば、アリス・ゼンの従者がいい」

 先輩が言っているのは、あのユゲリアと呼ばれる人形のことだろう。それが宴に絡んでくる、というのはあり得そうなことだとは思う。ただ、

「何で私の従者として行きたいんですか?」

 私が訊ねると、ガリエス先輩は少し躊躇いを見せながら、

「君は従者を連れていく気はないと言った。恐らく自分自身で何とかできると思っているからだろう。俺もそう思う。君は宴に参加する六人の中で一番自立している。だから、君の従者として行けば、あいつが現れたときに俺はその対応に専念できると思った」

 何とまあ。

 私はため息をつきながら言った。

「そういうことなら最初から言ってくださいよ。それならまだ先輩を連れていくことを考えられる」

「シホちゃん?」

 マリちゃんが、信じられないという風に声を上げる。私はマリちゃんを見た。

「だって、強い動機を持って宴の場に自分から行きたいって言っているんだよ?事情も事情だし、連れていってもいいかなって。ただ、レイドール公爵令嬢とかその他の魔法科の女子たちの嫉妬が怖いんだけどなあ……」

「それなら、表向きには従者は誰も連れていかないことにしておけばいいんじゃないかな」

 ファラーグ先輩が言う。なるほど、と私はその案を採用することにした。が。

「そんなことでシホちゃんが従者を選ぶのは、私は反対です」

 まさかのジェニファが異を唱えた。

「シホちゃんは自分で何とかできると思ってるけど、宴の課題は何かわからないんだよ?誰かの助けが必要かもしれないのに、シホちゃんを助けることを一番の目的としない人が従者でついていくなんて」

「勿論、アリス・ゼンを助けないわけじゃない。手は貸す」

「でも、第一の目的はあのときの人形なんですよね?」

 ジェニファがガリエス先輩を睨む。ガリエス先輩は何も答えない。

 ファラーグ先輩が言った。

「まあまあ。こいつはこんなだけど、その場面になったら、シホちゃんを助けるのに全力を尽くすよ。後輩が困っているのに見捨てられるような性格してないから。それよりも、ジェニファは自分の従者をどうするか考えた方がいいんじゃないかな」

「それは、タロスに頼むつもりで」

「でも、周りに反対されてるんでしょ」

「……なんか、みんなおかしいんです。タロスは昔からうちにいて、兄みたいな立ち位置の人なのに、異性を宴の場に従者として連れていくなんて何かあったらどうするんだ、とか。そんなことないのに。一番ショックだったのは、兄にまで反対されて」

 ジェニファは小さな声で言う。

 私は首を傾げた。

「ヨハンの反対の理由も、異性だからとかそういうこと?」

「ううん、違うよ。タロスは目立つ場に出ることはできないから、って。でもそれって良くないことだと私は思うの。タロスはあれだけ魔法も魔素術も使えるのに、いっつも影みたいな役目しか持たされなくて」

 だから、こういう機会に目立っていいと思うの、とジェニファは力強く言った。

 先輩たちは何も言わず、私も何も言えず。ただ、これは訊いておきたかった。

「タロちゃん自身は従者としてついていくことに承知しているの?」

「えっと……、断られてはいないよ」

「そうなんだ?じゃあ、タロちゃんは従者になることを嫌がってはいないんだね」

「多分……。わかんない。もしかしたら、うちの両親とか兄様に気を遣って、断れないだけなのかも。タロスはずっとうちの世話になってるから」 するとマリちゃんが言った。

「じゃあ、あの、タロスさんに断られたらだけど。私をジェニファの従者として連れていってもらえないかしら」

「マリちゃん?」

 私は驚いてマリちゃんを見た。マリちゃんは強い意思の力を目に漲らせていた。


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