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68 王宮は仕事がはやい

 食事の手を止め、マリちゃんが言った。

「あのね、私の試験の件で、付き添いの人が誰か必要だって話があったでしょ。それで、ジェニファの知り合いで誰かいないかお願いしてたんだけど」

「覚えてるよ、勿論。ジェニファのお母さんに相談してみようって話だったよね?」

 私はジェニファを見た。ジェニファはため息をつきながら、

「母様とは話ができなかったの。仕事で出かけていて。それで、兄様に相談したんだけど、そしたらシホちゃんについていってもらえばいいって」

「はああああ?」

 私は思わず大きな声を上げてしまった。

食堂にいた子たちが全員こちらを見る。私は立ち上がると、突然声を上げたことについて皆に詫び、着席すると、今度は声をひそめてジェニファに訊いた。

「何それ。何でそんなことになったの」

「わからない。笏の日の夕方に学院から家に戻って、すぐに兄様に相談したの。そうしたら、少し考えさせてくれって言って、翌日の星の日に王宮に上がって、帰ってきたらそういう結論になっていて」

「んー……、王宮で可能な限りの女性の知り合いに付き添いの件を頼んでみたけど断られてそういう結論になった、とか?」

「そんなわけないでしょ、兄様は素敵なんだから!」

 いささか声を荒げはしたが、声量はしっかり落としたままジェニファが反論した。私はため息をつく。

「その結論って、変わらないかな」

「難しいと思う。兄様、シホちゃんが付き添いで行くって王宮に話してきたって言ってたし」

「何を勝手な……」

 私が忌々しげに呟くのを、シホちゃが不安そうに見て言った。

「ごめんね、シホちゃん。付き添いは、別に必須じゃないって手紙には書いてあったけど、一人で行くのは不安で」

「いいよ、わかった。行く。どうせ年明けには王宮に行かないといけないんだし、予行演習と思って」

「ああ、陛下に会いに行くのよね」

 軽い調子でジェニファが言う。まあねえ、この子は気楽な気分で国王に会いに行けるでしょうけど、こっちは紛れもない平民だっての。

「問題は、いつ呼び出されるか、よね」

 そんなことを話しながら、私はデザートを食べていた。

 そこに、寮監が白い封筒を持ってやってきた。

 寮監はマリちゃんの傍で立ち止まると、マリちゃんに封筒を手渡した。マリちゃんは立ち上がって封筒を受け取った。寮監が去ってから、マリちゃんは封筒を裏返し、封蝋を確認していた。

「王宮からだわ」

 呟くと、封筒をすに開けた。中の文書に目を通すと、私を見て言った。

「試験は、今度の笏の日の午後に行われるそうよ」

「そうなんだ。授業があるけど、どうするかなあ……」

「抜けさせてもらえばいいんじゃない?」

「マリちゃんはそうなんだろうけど、私は大丈夫かなあ」

「大丈夫、手紙の名宛人のところにシホちゃんの名前も入っているから」

 マリちゃんが王宮からの手紙を見せてくれた。確かに、名宛人はマリちゃんと私になっていた。

 ヨハンの動きがもうこんな形になっているのかと思うと、私はうんざりした。


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