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66 厄介ごとが増えていく

 翌日、月曜日の昼休み、職員室に呼び出されて行くと、魔法科のダリルム先生が待ちかまえていた。

 私がラヴィの世話係に決まったので、放課後にはテッサ山脈向こうのラヴィの縄張りに行くように、ということだった。

 ラヴィの縄張りというのは魔法科のオリエンテーリングが行われていたあそこのことらしい。

 ラヴィはどうやって人形師組合の建物からテッサ山脈の向こう側へ移動したのだろうと思う一方で、何で学校から私にそんな話が来たのだろうと不思議に思った。ラヴィの世話は魔法科の学生の特権みたいな感じで話していたのに。

 訊くと、ダリルム先生は、

「神使様からのお達しだ」

 とだけ言った。それって、ホリィが何か学校に言ったのか。

 ラヴィの世話係の件は、私に拒否権はなかった。決定事項として言い渡されて、それで終わり。会いにいくには魔法部の助けを借りろ、と言い、こちらの都合など訊かれもしなかった。

 んー、私も勉強時間ほしいんですけど。魔素術で負ける気はしないけど、その他の座学はそうはいかない。私は、授業で一回きいただけで身につけられるような天才ではない。ラヴィのことは気にはなるけれども。

 ダリルム先生は最後に、おまけのように言った。

「それから、陛下との謁見が年明けに決まった」

「は?」

「宴の参加者は、毎回、陛下に謁見することになっている。その日程が決まったというだけのことだ。何を驚いている」

 いやいや、そんなこと言われても、平民からすれば王宮に行くっていうだけで大問題だってば。

「魔素術科には王宮での礼儀を教えられる者はいないだろう。礼儀作法の講師が王宮から来て課外で授業を行うことになっているので、それに参加するように」

 言いながら、新しい課外授業について書かれた紙を一枚渡してきた。それを見ると、月曜日に課外授業が行われることになっていた。それが、謁見が行われるまで毎週ある。

 とにかく厄介なことになった、というのが感想だった。職員室を辞した後は中庭に行く。そこでマリちゃんと待ち合わせていた。

 マリちゃんは、中庭の奥にあるベンチで待っていた。そこで合流して、食堂に食べに行く。ある程度の数の生徒は食事を終えた後のようで、空席は問題なく見つけることができた。

 お互い食べたい料理を取ってきてテーブルに着いたところで、マリちゃんは訊いてきた。

「それで、呼び出しって、何だったの?」

「放課後に魔法科の生徒と一緒にマツカサリュウの世話をしなさいって。それと、王様への謁見が年明けに決まったって」

「えーっ、王様に謁見?」

 言いながら、マリちゃんは興奮して立ち上がっていた。

「うん。えっと、座らない?」

「う、うん、ごめん」

 マリちゃんは縮こまるようにして座った。

「本当にごめん。ちょっと、びっくりしちゃって」

「そうだよねー。王様に会うとか、平民じゃ考えられないもんね」

「そうだけど、そうじゃなくて。あの、いろいろ大丈夫なの?マナーとか服装とか」

「マナーは、礼儀の先生が王宮から来て課外授業で教えてくれるって。あと、服装は制服でいいんじゃないかな」

「制服って、まさか冗談でしょ!だって宮廷よ?王様の御前よ?」

「そうだよ。だから、正装で行くんじゃない。学院生の正装って言えば制服でしょ?」

 マリちゃんは眉間に皺を寄せながら、首を振る。

「それは、間違ってはないけど。でも」

「じゃあ訊くけど、制服以外で正装って、何着たらいいの?」

 高原氏族にも正装はある。けど、あそこを出てきた身でそれを着ることはできない。

 マリちゃんは淀みなく言った。

「王宮に行くのならドレスでしょ。謁見の時間帯がいつかわからないけど、胸元はあまり開いてなくて、ドレスの丈は踝辺りまで必要かしら。今の流行だったら袖はほどよくふくらませて」

 流石、貴族相手にも商売をしている商会の娘だ。よく知っている。でも。

「そんなの準備できるわけないし、下手に変なの着て行くよりは制服の方が潔くていいじゃない?」

「うちで何か準備するよ?おじいちゃまに言ったら、きっと何とかしてくれると思う」」

「いいよ、マリちゃん。気持ちだけ受け取っておく。それよりも、早く食べよう。昼休みの時間、なくなっちゃう」

 マリちゃんはまだ何か言いたそうだったが、私が食べ始めるのを見ると、何も言わずに食べ始めた。




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