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60 竜殺し

 目が覚めたとき、光溢れる部屋に私はいた。ベッドに寝かされていた。

 ここはどこだろう、と思いながらゆっくり起きあがる。

 ラウトゥーゾ遺跡のコテージに与えられた私の部屋だった。

「気がつかれましたか」

 声を掛けてきたのは、領主館のメイドであるモモノだった。ベッドサイドの椅子に腰掛けていた。

 思いがけない人物の登場に戸惑った私が何も言えないでいると、モモノは言った。

「貴女様がもう二日も目を覚まさないので、マリさんと交代で看病についていたのです。二時間ほど前まではマリさんがついていましたが、あなたが倒れてからずっと休んでいなかったので、それは負担が重いからと、交代することにしました。本当はジェニファお嬢様が付き添いをとおっしゃっていたのですが、練習場の結界の修復にお嬢様の力も借りなければならず」

 結界、ときいて、私はおそるおそる訊いてみた。

「あの……もしかして私、結界を壊したりとかした?」

「はい。一部損傷しました。今、残りの部分が瓦解しないよう、神祇庁の方々も来て作業に当たっています」

 私は天を仰いだ。うわー、まずい。

「……これ、やっぱり責任を負わないといけないのかな」

 と言っても、どう責任をとればいいのかわかんないんだけど。

 しかし、モモノは首を横に振った。

「大丈夫です、竜殺したるアリス・ゼン様の魔素術の威力を知っていながらこういう事態を防げなかった我らラウトゥーゾ子爵家の責です。王家からもそのようにお言葉が届いています」

 竜殺し?王家?

 何でそんなワードが出てくるんだ、と思い戸惑う私の心の中が表情に出ていたのだろう、モモノが言った。

「しばしお待ちいただいてよろしいですか。誰か状況を説明できる者を連れて参ります」

 モモノは足早に部屋を出ていき、あまり間をおかずにホリィが部屋に入ってきた。

「もうー!あんた、大丈夫なのー?」

「あ、うん。大丈夫、平気。何で倒れたのかわかんないんだけど」

「タロスの話じゃ、いきなり心の準備もなく魔素を高出力で出したから、体と魂に不調が起きたんだろうって」

「えー、そんな馬鹿な。小さな子どもじゃあるまいに」

 私がそう言ったのは、私が気を失った原因だとタロちゃんが推測した内容が、小さい子が慣れないのに魔素術をたくさん使ったときに起こす不調の原因と同じだったからだった。

 第一、私は小さい頃にだってそんなことで寝込んだことなかったよ?

 ホリィは私の反論をさして気にしていない様子だった。

「あんた、あれから大変だったの、わかってる?あんたがいきなり高出力の術をぶっ放したせいで遺跡の結界は大変なことになるし、あんたはあんたで意識を失って倒れるし。マリちゃんがついてきてくれてて良かったわよ。もしいなかったら、私とタロスは結界の維持にかかりきりで、あんたは放置されたまま危なかったでしょうよ」

「あー、結界……。どうなってるの?」

「とりあえず応急処置はして、今は神祇庁から来た人たちとかが修理中。神使も一人来て対応してるよ」

「神使まで?何で?」

「いいじゃん、別に。丸く収まりそうなんだし。ただ、すぐに復旧ってわけにはいかなくて、この連休はもう無理そうなんだよね。ヨハンからは、あんたが動けるようになったら王都に帰ろうかって話が出てる」

「じゃあ、練習はもうできないってことかー。なんか、ジェニファに悪いことしちゃったな」

 ジェニファはこの連休に兄に魔法をみてもらうことを楽しみにしていたのに。

 ホリィが呆れたようにため息をつく。

「あんた、人のこと言ってる場合じゃないでしょ。あんただって碌に練習できてないじゃん。魔素術だって魔法だって」

「あー、魔法かあ……。なんかさ、魔法って何だろうって思うんだよね。羽衣を使ってたらいつもと違うものがあるような感じが何となくして、それが魔力なのかなって思うんだけど、そこから何かできる感じがしないんだよね。どこまでいってもそれはないものとしか思えないっていうか」

 話しているうちに頭がくらくらしてきたので、私は背中からベッドに倒れ込んだ。

 ホリィは少し私の様子を見ていたが、私が落ち着いてきたと見計らってか、こう訊ねてきた。

「でも、あんたは魔素は使いこなせてるじゃない。私からすると、あれを使うのも魔力を使うのと大差ないけど」

「んー……、私からすると全然違うんだけどなあ。魔素はそこにあるってわかってるっていうか感じられるっていうか。小さい頃からあって当たり前で、物質化だって普通にできるし。でも魔力は違うんだよ。……感じ取ろうと頑張っても全然無なんだよ。でもって、ないものは何ともできないじゃない?」

 なるほどね、とホリィは呟いた。

「つまりあんたは、無から有は生じないっていう、古代ギリシャから続く概念が叩き込まれたまんまってわけだ」

 私はホリィの言葉をしばらく頭の中で反芻していたが、ホリィがあり得ないことを言っているのに気がつくと、大きく目を見開いてホリィを見た。

 今、古代キリシャって言った?


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