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41 色々な情報開示(ヨハン視点)

 ジェニファの兄視点です。

 魔との戦いが終わった時点でかなり遅い時間だったので、私たちは解散することにした。

 守備隊にはその場で警戒を続けてもらい、私とタロスとシホと神使様は自分たちが泊まるコテージのある方の中庭に戻る。

 途中、神使様が言っていた宝物庫に寄ってみた。

 そこは、長らく一族の誰もが入れなかった場所だった。最後に入ったのは、うちの一族にこの遺跡の管理という重責をもたらした一族の者、当時の当主の弟であるレオナルド・テウル・ラウトゥーゾだ。彼はこの部屋の扉にもたれかかるようにして亡くなっているのが見つかった。彼がこの扉を閉めて以降、今日まで誰もこの部屋に入ることはできなかった。

 扉は開いていたが、探索は翌日にすることにして、シホに頼んで扉を閉めてもらった。閉めるのは簡単ですよ、と言いながらシホは扉のそばにあった丸い石の突起をさわった。すると、確かに石の扉はするすると閉まった。

 タロスに視線をやると、ぼそっと、魔素術だ、と言った。なるほど、それでは私にはわからない。というか、タロスに試させてみればよかったのか。この部屋のことは代々きかされてきたものだけれど、中に入れないからといって困ることもなかったので、そんなことを考えもしなかった。

 家に戻る途中もずっとシホはタロスに話をききたそうにしていたが、必ず明日話をさせるからと私が伝えると、シホは納得して自分の部屋に戻っていった。

 それを見送ると、私とタロスは書斎として使っている部屋に入った。私は書き物机の前の椅子に座り、タロスは書き物机の正面に置かれた応接セットの椅子に座った。

 しばらくは私もタロスも無言だったが、じきに私がおかしさにこらえきれず、笑い出してしまった。

 タロスが横目で私を睨んでくる。

「何だ」

「いや、タロちゃん、ってさ。なかなか新鮮な響きだった」

「そう言うだろうから、嫌だったんだ」

 タロスは不機嫌そうに言った。シホが魔法の習得に本腰になり始めたが苦戦しているときいたとき、魔素術も魔法も使えるタロスを引き会わせようと考えたのだが、タロスが拒否したので実現はならなかった。その理由がそんなことだったとは。

 そう言えば、八年前に知り合っていたこともタロスは言わなかった。タロスは八年前の両親の旅行に同行していたのだから、そのときに当然シホに会っていたはずなのだが、それも誤魔化されていたような感じがする。

 暫くして神使様が戻ってきた。

「お待たせー。シホはすぐに眠ったわよー。かなり疲れてたんでしょうね」

 確かに、今日一日、いろいろあった。寧ろ、今の時間帯まで精力的に動けていたのが不思議なくらいだ。

「過覚醒ってやつなのかしらね、興奮しすぎというか。あ、あんた、絶対に明日逃げないでよ。シホは寝付く寸前まであんたのこと気にしてたんだからね」

 神使様がタロスに向かって言う。タロスは小さくため息をついた。

 私は早速、神使様に訊ねた。

「それで、神使様はどう見られましたか、その」

「間違いなく魔が何かしてるわね。あの子に夢という形でいろいろ情報を渡してる」

 私は唇を噛んだ。

 魔、というのは、世界を壊そうとするモノたちの総称で、その中でもいろいろなモノがいるのだが、共通しているのは、その行動目的と、出現の法則。

 レオナルドが王家の血を利用していろいろな仕掛けを残し、王家の者が五人以上揃わないと魔がこの世界に出現しにくいようになっている筈なのだが。

「おかしいな……。今の状況だったら問題はないはずだ」

 私の言葉に、神使様が反応する。

「王家の血を引く者が王都以外の場所に集まると、昔の魔法使いがこの国に仕掛けた守護の力が弱まるっていうやつ?」

 私は固まった。神使様は鼻歌でも歌い出しそうな様子で言う。

「知ってるわよー。で、あんたとあんたの妹とそこの男が王家の血を引いてるってこともねー」

「……そこまで」

「見ればわかるわよー。この国の独特な空気、多分これって昔の天才魔法使いとやらがこの国に与えた守護の結果なのかなって思うけど、それとあんたたちの気配が微妙に影響しあってるから。あ、あのガリエスっていう隊長とかその弟とかもそういう感じがちょっとあるんだけど」

「ガリエス家も王族の降嫁とか婿入りを受け入れてきた家なので」

「あー、そっか。で、王家の血を引いている人間が何人集まったらやばいわけ?あと、守護の力に影響する王族って、どこまでが含まれるの?」

「千本杖の長たる国王の孫、曾孫までが対象と考えられています」

「それが何人集まったらまずいの?」

「五人と言われています」

「そっかー。でも、それもあてにならないよねー。あの隊長さんはそこまで血が近くないだろうにこんなことになってるし、人数だって足りないのに」

 言われて、私は顔をしかめた。昔から言い伝えられてきたことで、我々は注意して王都以外の場所に集まらないようにしてきた。それでこれまで問題なくやれていたのだが。

 抗弁するように私は言った。

「先月も、私たちきょうだいとタロスとでここに来たんですけど、問題はありませんでした。隊長とも会ったんですが」

「そうなんだ?あんたたちが異変に気づかなかっただけとかそういうことはない?」

「それは……」

 可能性はある。魔は狡猾に動くから、私たちが察知できなかっただけとか。

 神使様はタロスにも訊ねた。

「あんたも何か気づいたことはなかった?」

「特に何も。ただ、前回と今回と、この周辺の空気の感じが違う感じはします」

「ああ、あんたって結構敏感なのねえ。魔がどこにいるかまでわかる?」

「いえ、そこまでは」

「そっか」

「神使様、もし魔に出会ったらどうすればいいんでしょうか。ここには魔を退けるための宝物があるにはありますが、それを使うための許可ももらっていませんし、何よりそれを使うのに資格を持つ者の人数が足らないんです」

「資格?」

「王の血を引く者、ってことです」

「わかったわ。そこを踏まえて、魔と遭遇したときにどうしたらいいかちょっと考えてみる」

 そう言うなり、神使様は姿を消した。

 それを見送ってから、私はあることに気がついた。

「しまった。私たちが王家の血を引いていることをシホたちに言わないよう、神使様にお願いするのを忘れてた」

「それ、意味ないと思うぞ。少なくともお前とジェニファについてはシホは知っている」

 タロスが言う。

「それって」

「八年前に俺たちは知り合ったって言ったろう。それは、俺が高原から出てきたときの話だ」

 話にはきいている。その旅の途中、母は死にかけた。

「そのときに、お前の両親や俺を助けたのがシホとその両親で、お前の親の素性は彼らには割れているんだよ。それでも、お前たち一家について市井で噂が流れたことはなかったのは、シホやその家族が口を噤んできたってことだが」

 それよりも、とタロスは言った。

「警戒しないといけないのは、魔がシホを通じてこの世界に干渉しようとしていることだ」

「ああ……。窓口にするには一番向かない相手だと思うんだが」

 高原出身者だし、常に神使様がそばにいるし、性格も柔ではなさそうだし。

「敵が何を考えているかはわからん。シホの性格を利用して、今までと違うことをしようとしているのかもしれん。とりあえず、ガリエス伯爵には話しておいた方がいいだろう」

 タロスが言い、俺は頷いた。

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